魂遡行催眠と魂状態の自覚
SAM前世療法においては、運動催眠、知覚催眠の催眠深度の確認を経て、さらにぎりぎりまで催眠深度を深めていきます。
深い海底(魂状態)に向かってヒラヒラ舞いながら沈んでいく一枚の金貨(意識)に例えながら、海底(魂状態)間近まで催眠深度を深めます。
最後の詰めは、潜在意識に魂状態まで誘導するように指示します。
なぜなら、潜在意識は、魂表層の前世のものたちが作り出しており、つまり、潜在意識は、その発信源である魂とともに在るわけであり、魂状態を知っているはずだからです。
こうして、潜在意識に指示して魂遡行を試みる実験を繰り返しました。
果たして、良好な催眠状態に入りさえすれば、例外なく、魂遡行催眠を始めて約5分後には「魂状態の自覚」に至ることが明らかになりました。
催眠誘導を開始してからの時間では、25~30分かけて魂状態の自覚に至ることになります。
医師4名、大学教授3名も魂遡行に成功し、前世人格の顕現化が図られています。
最高齢は82歳の女性、最若年者は小学校5年生男子児童です。いずれも魂遡行に成功しています。
こうした実績から、「魂状態の自覚」という意識現象は、普遍的な意識現象だと思われます。
魂状態の自覚について被験者の多くは、体重の感覚がなくなり、「私という意識だけ」としかいいようのない状態になる、肉体から意識が離脱しているといった感覚になる、と報告しています。
そして、「魂状態の自覚」にさえ至れば、呼び出しに応じて魂の表層に存在している前世のもの(人格)が顕現化するという現象が確認できていったのです。
この前世の人格が現れて自分の人生を語るという意識現象の事実は、ワイス式でおこなった次のような「タエの事例」の印象を裏付けるものでした。
それは、前世の記憶をイメージとして見ているのではなく、完全に前世の人格と一体化し、今、再体験しているのだという実感と臨場感があり、その迫力に驚愕し圧倒されました。さらに言えば、前世の記憶を現世の里沙さんが想起して語っているというよりは、「前世の人格そのもの」が現れ、自分の人生での溺死の場面を再現しているという強烈な印象を与えるものでした。
つまり、里沙さんが、タエであった「前世記憶の想起」をしたのではなく、彼女の魂の表層に存在するタエという「前世の人格」が顕現化し、その人生の場面を語ったという解釈こそ、妥当なものではないだろうか、ということです。
里沙さんのような特異な催眠感受性の持ち主は、「魂遡行催眠」を経ずして、一気に魂状態への遡行ができ、タエの人格が顕現化したのだと思われるのです。
また、イアン・スティーヴンソンも、『前世の言葉を話す人々』春秋社、の中で、催眠中に応答型真性異言を話す当事者を「トランス人格」(同書9頁)と呼び、深い催眠状態において被験者とは別の前世人格が顕現化しているととらえているようです。
この被験者の女性も、里沙さんのような特異な催眠感受性の持ち主であり、「魂遡行催眠」を経ずして、一気に魂状態への遡行ができ、グレートヒェンを名乗るドイツ人少女が顕現化したのであろうと思われます。
こうして、一連の霊的作業仮説に基づいて、魂の自覚状態に遡行させ、魂の表層に存在する前世の人格を呼び出す、という全く新しい考え方による前世療法は成り立つ可能性があるはずだ、と試みることへの期待を深めました。
そして私は、この霊的作業仮説による前世療法を、広くおこなわれているワイス式前世療法と明確に区別するために、「SAM(サム)前世療法」と名付けることにしました。
SAMのSはソウル(Soul)、Aはアプローチ(Approarch)、Mはメソッド(Method)の頭文字を意味します。つまり、「魂に接近する方法」という意味を指しています。したがって、「SAM前世療法」とは、「魂に接近する方法による前世療法」ということを意味しています。
SAM前世療法では、魂遡行ができない場合、憑依している未浄化霊による妨害があるという霊信が告げた仮説によって浄霊作業をおこないます。
また、顕現化した前世の人格を癒すために、必要に応じて魂の表層の前世人格へのヒーリングをおこないます。これらのことも、SAM前世療法独特の霊的な特徴と言えるでしょう。
里沙さんのような特異な催眠感受性を持つ被験者が、魂遡行催眠の過程を経ずして、自動的に魂状態に戻ることを示す貴重な手記が残されています。
以下にそれを紹介します。
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(前略)
1回目のセッション(注:2005.3.30)では、稲垣先生の誘導により、暗闇のトンネルを進み、前世の世界の扉を開けることから始まりました。
次は、そのときの状態を、記憶に残っているままに書き留めたものです。
扉を開けると、まぶしい光の世界が見え、そこにもう一人の私がおりました。前世の私と思われるそれは、姿も形もなく、無論男か女かも分からない、音も声もない、小さな光の塊(かたまり)ではありましたが、まちがいなく私でした。そして、一瞬にして、すべてのものが、私の中に流れ込んできました。私は、自分が何者なのかを知り、状況も把握できました。
私の前世は、タエという名前の女性で、天明三年に起きた火山の噴火を鎮めるために人柱となって、16歳で溺死するというものでした。目の前に迫る茶色い水の色や、「ドーン」という音もはっきり分かりました。水を飲む感覚、息が詰まり呼吸できない苦しさ、そして死ぬことへの恐怖、それは言葉では言い表すことのできない凄まじいものでした。私は、タエそのものとして死の恐怖を体験しました。
(中略)
次は、2回目(注:2005.6.4)のセッションの記憶を書き留めたものです。
前回と同じように、扉を開けると、あっと言う間に、私は13歳のタエで、桑畑で桑の実を摘んで食べていました。私がそのタエを見ているのではなく、私自身の中にタエが入り込んでくるという感覚でした。
稲垣先生から、いろいろ質問がされましたが、現世を生きている私が知るはずもない遠い昔の出来事を、勝手に口が動いて、話が出てしまうという状態でした。それは本当に不思議なことでした。
私は、今まで、群馬県に行ったこともありませんし、渋川村があったことも、吾妻川という川の名前も、それが利根川の支流にあたることも知りませんでした。浅間山が噴火することは知っていましたが、天明三年旧暦七月七日ということは知りませんでした。
また、浅間山が龍神信仰の山であることも、火山雷のことも知りませんでした。タエは名主クロダキチエモンと言っていますが、私はそのような人物を知りませんし、天明時代の名主の名前を調べたこともありませんでした。
さらに言えば、私は、今まで透視や憑依などの超常現象を経験したこともなく、その能力も全くありません。インターネットを使うことができないので、タエの生きた時代や、ネパールについても、前もって調べることは不可能です。また、本やテレビ、映画などでその時代の知識があったかというと、それもありえないのです。なぜなら、私は天明時代やネパールについて全然興味がないからです。それでは、なぜ答えることがで
きたのかと言えば、やはり前世に出会ったとしか言い表せないのです。
やがてタエの息が絶え、私は、死後の世界を体験することになりました。そこは明るい光の世界で、私の身体はなく、ただ意識だけの存在になりました。そして、偉大な存在者の姿を見ることができました。逆光の中に立つその方は、大きく、身体の周りが光で覆われ、色の黒い異国の人のようでした。
稲垣先生から、その偉大な方に質問し、やりとりしているときは、私は、まるで電話機の役割をしているようでした。双方の声が、私を通してやりとりしている、そんな感じでした。だんだんに二人の声が聞こえなくなり、その後のやりとりは、セッションが終わった直後も、今も、全く記憶にありません。
(後略)
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上記に紹介した里沙さんの手記のなかで、彼女が「魂状態」に遡行したことが了解できる部分を3点抜き出してみました。
①扉を開けると、まぶしい光の世界が見え、そこにもう一人の私がおりました。前世の私と思われるそれは、姿も形もなく、無論男か女かも分からない、音も声もない、小さな光の塊(かたまり)ではありましたが、まちがいなく私でした。そして、一瞬にして、すべてのものが、私の中に流れ込んできました。私は、自分が何者なのかを知り、状況も把握できました。
②扉を開けると、あっと言う間に、私は13歳のタエで、桑畑で桑の実を摘んで食べていました。私がそのタエを見ているのではなく、私自身の中にタエが入り込んでくるという感覚でした。
③私は、死後の世界を体験することになりました。そこは明るい光の世界で、私の身体はなく、ただ意識だけの存在になりました。そして、偉大な存在者の姿を見ることができました。
①で、「もう一人の私がおり」、それは「小さな光の塊」であったと述べています。この小さな光の塊であるもう一つの私こそ、魂状態の自覚であろうと思われます。そうした、魂であるもう一つの私を観察しているのは、モニターしている現世の意識です。
そして、「一瞬にしてすべてのものが、私の中に流れ込んできた」 とき、魂表層のタエの人格が顕現化し、その結果モニターしている意識は、「私は、自分が何者なのかを知り、状況を把握できた」、つまり、タエという前世人格が、モニターしている現世の意識と併存し、顕現化していることを知ったということであろうと思います。
②で、「私がそのタエを見ているのではなく、私自身の中にタエが入り込んでくるという感覚でした」という記述も、モニターしている現世の意識(私)の中に、魂表層のタエの人格が顕現化し、併存状態になっていることを指していると思われます。
③は、セッションの流れからすると、タエの死後、「意識だけの存在」、つまり、魂(霊)そのものに帰った状態を指しています。この状態に至れば、守護霊と呼ばれる霊的存在とのコンタクトが可能になるようです。
このように、里沙さんの手記を分析してみると、里沙さんが、タエであった「前世記憶の想起」をしたのではなく、彼女の魂の表層に存在するタエという「前世の人格」が顕現化し、その人生の場面を語ったという解釈こそ、妥当なものではないだろうか、という印象は正当性が高いと思われたのです。
そして、7年後の2012年8月、里沙さんの許しを得て、SAM前世療法によりタエの再セッションをおこなうことができました。
このセッションの証拠映像は、映画『催眠・魂・生まれ変わりの真実』に収録されいます。
顕現化したタエの人格に、「2005年のセッションにおいても、あなたは、この者(里沙さん)の記憶としてではなく、魂表層から顕現化したのではないか」、と尋ねたところ、「はい」、という回答を得ることができました。
こうして、2006年アンビリで放映された「タエの事例」のタエの語りは、被験者里沙さんの前世記憶ではなく、前世人格タエの語りであったと結論づけてよいと思われます。
(その15へつづく)
4 件のコメント:
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はじめまして
私は最愛の人を亡くし生きる希望まで失っているものです。
それから様々な本を読み、稲垣先生のブログを知りました。
最初から何度も繰り返して理解できるように読ませて頂いています。
そして先生の研究結果に勇気づけられています。
その内、精神状態が安定したらセッションを受けさせて頂きたく思います。
その時は宜しくお願い致します。
私的な事を書いてすみません。
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momoさん
私の記事は嘘や誇張はありません。ただし、霊信の解釈については思い込み部分が在るかも知れません。いずれにせよ、「ラタラジューの事例」の検証によって、里沙さんには生まれ変わりは事実としてある、と断言できると思います。そして、SAM前世療法の同じ手続きを踏めば、魂状態の自覚と前世人格の顕現化は、誰にでも起こる意識現象の事実です。一人に起きている生まれ変わりが、他の人にも起きている蓋然性は高いと思っています。したがって、あなたの失った人には、いずれ必ず再会できるはずです。それまで、この現世を生き抜いてください。
再会は信仰や気休めではなく、セッションの累積から明らかになってきた事実です。
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稲垣先生へ
実証されている先生の言葉だからこそ希望が湧いてきます。
本当にありがとうございました。
先生の研究は私の希望であり、私のように深い悲しみいるものの希望です。
くれぐれもお身体を大切になさってください。
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>momoさん
momoさん
私は29歳のときに二つ年下の妹を亡くしています。理不尽というしかない妹の死に直面して、生きる意味への問いを重く深く私の意識の下層に沈殿させたまま生きてきました。この生きる意味への問いの答えを求めて宗教者に頼ることも霊能者と呼ばれる人に頼ることも私は拒否しました。観念より事実、理屈より実証を求める性向が強すぎて、実証のないどのような言説にも耳を傾けることができなかったのです。
今は違います。たった一人の女性にだけですが自らの手で生まれ変わりの事実を確証できたからです。そうした生まれ変わりの事実を伝えることがこのブログの目的の一つです。
あなたのコメントは、私にとって勲章です。
ありがとうございました。
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