2019年1月16日水曜日

わたしがモデルの実話小説『渡し守』


          ーわたしの少年時代の自己紹介にかえてー

 ここに掲載する短編小説『渡し守』の作者、渡邊マサ先生は、わたしの小学校5・6年生の学級担任でした。わたしが恩師と認める中のお一人です。今はすでに故人となっておいでです。
 1993年初夏、32年ぶりでお会いしました。その再会の印象がこの小説の執筆動機だとうかがっています。その年の可児市文芸祭短編小説部門市長賞を受賞され、作品の収録されている冊子を送っていただきました。
 一読してまず驚いたのは、執筆当時72才であったマサ先生の記憶力の確かさでした。叙述されている細部の事実関係に間違いが一切なく 、わたしがマサ先生に再会して語った対話内容が、録音でも取っておいでだったのかと思うほど一言一句がほぼ正確に再現されていたことでした。おそらく再会から日を置くことなく、鮮明な記憶をたどって執筆されたと思われます。今から25年前のマサ先生との再会は、よき思い出となって生きています。そして、小説『渡し守』は、 まさしくわたしがモデルの実話小説そのものです。

 読者の中には、ブログ管理人のわたしが、どのような少年時代を過ごしていたのか興味を抱いている方もおいででしょうから、2019年年頭でもあり、ここに小学校学級担任マサ先生の目に映ったわたしの少年時代の姿を、文学的香り高い実話小説の形で自己紹介することにしました。読まれると、教師となったわたしの人間性の一部も垣間見ることができると思います。
 そして、この小説に登場する「N君」が、わたしです。

:文章を読みやすくするため小説の1行空きの段落構成はわたしがおこないました。



      渡邊マサ 作 短編小説 『渡し守』

 アトリエには今おとなが男女あわせて、十二、三人いるのだけれど一人も居ないかと思われる位静かである。
 この市民講座水彩画教室ではそれはいつもの事で、みんなが対象物を囲んで好みの角度で席を占めイーゼルを立てて描き始めると、大体正味一時間半ほどは殆ど誰も喋らない。先生がおられてもおられなくてもそれは同じでみんなとても熱心である。成人ばかりの、というよりは平均年齢五十余才くらいの同人であるが一人ひとりが絵が好きで集まっているということもあるし、無心になれる三時間が持てる、集中を楽しむことが嬉しくて通って居るのだ。私も勿論その一人である。

 でも、今日の私は何か集中できない。今日描くのは静物で、壺が二つとワイングラスに液体の入ったのや果物が並べてある。壺は緑黒色の艶消しガラスの瓶で質感を出すのに手応えがありそうな洋酒瓶である。馬蹄形のワイングラスの入った液体は澄んだピンク色でどうせ当番の誰かが水に絵の具を一滴たらしただけのものだろうけれど、妙にさまになった色でそれが全体のひきしめ役を果たして調和のとれた構図になっている。描くつもりでとりかかってはいるが私はまだ気がのってこなかった。

 その訳は、今日この教室が終わってから人と会うことになっているからであった。電話は昼少し前にかかって来た。その電話は思いがけぬN君からであった。私は
「まあー。」
と言ったきり暫くおしだまっていたが
「僕は今日、暇ができたから一度会いに行きます。えっ? さくらホールのアトリエ? ああそうですか。そこで水彩画を、へえー。じゃあ四時に終わるならそのままそこで待っていてください。僕行きます。じゃあまた。」
 話は速いが、多分に押し付けられ気味で私の都合も十分にたずねられる事もなく決まって、彼はここに来ることになったのだ。

 N君-三十二年前の教え子である。三十年余り会っていない。市内の小学校に私が勤めていた時、五年、六年と続けて担任したクラスに居た男の子であった。体格もクラスで一、二を争うほどよいので体力もあり、何をやっても積極的なので結構なガキ大将であった。

 その頃は今と違って下校後は家業(多くは農家)を手伝うか、戸外遊びをするかであったので非農家の彼は夏は川遊び、冬は山や森へ遠征する遊びのリーダーであった。彼が友だちを誘っての遊びを作文にするとそれはとても面白く、生き生きと活写されているので私は教師である事も忘れてドキドキしたり血が湧く思いをしたくらいであった。
 
 田圃のザリガニをうんと獲って、木曽川の磧で流れついた車のホイールキャップを拾ってきて焚き火をし、それを鍋がわりにザリガニの塩ゆでを遊び仲間と食べた話など出色で
「そんなことをしてはいかんよ。ジストマに罹ったらどうするの。」
ということも忘れて
「そんなにうまいかね。よかったねー。」
と話にのってしまうくらいに作文を書く力がある子だった。勿論頭もよかった。
 
 私は教師であったから、当然子どもと暮らすことは好きであった。でも根は淡泊なというか、いわゆる水臭いところがある人間で、教え子と居るうちは目の前のことに一所懸命になったが、そこから向こうは深入りしない主義であった。ほんの子どもの時、年齢が違った長兄が、「君子の交わりは流水のごとく淡泊なるがよし」とか何とか読むのを聞いて「ふーん。」と思った事があるが、そのせいかどうか、何でもあまり詮索は好きではない人間に育ってしまった。
 教え子も卒業させるまでが勝負で、全員中学へ送ってしまえば、高校への進路をどう決めようとも、それだけのものだと思っていた。決して無責任とか、誠意を尽くさぬとかいうことではなく、担任するうちはベストを尽くしてきたつもりだ。

 ようするに私は「渡し守」だと思いさだめていたのだ。それが芯そこの本音であった。船は転覆させぬよう、どんな流れにも、力の限り棹さした。でも、対岸に着けば、子どもが岸へ足をおろしたのを境に、私はうしろ姿を見送るだけしかない。「元気でいなさいね。身体に気をつけて頑張るのよ!」と心の底からのエールを小さい背中に送る。涙をこらえて。でもそこまでだ。私はもとの岸に戻るだけだ。そしてまた新しいクラスを受け持ってクラスづくりに精を傾けるのだった。そうやって何十年も教師を勤めてきた。

 Nに対してもそれだけだった。どんな青年になっていくのかな、というような事は 勿論おりにふれて思い出すのだけれど、それさえ一クラス四十一人のどの子に対しても思うことで特にNに対してどうしたとか、たずねてやったことはひとつもなかった。

 数年経って教え子たちの大学進学の事が耳に入ってくる事があって、その時Nが大学の教育学部に入ったという消息を聞いた。それを聞いて、知能もすぐれた子であり、(こういう子が活気のある教師になってくれたらいい)とは思ったが、反面ウーンと絶句して考え込んでしまった。(あの子が、あの覇気でもって教育界という海へ入って行けるのかな、入ったにしても泳げるのかな、泳いだにしてもいやいや泳ぎしかできないのじゃないかな、おそらく力泳する気にはならないのじゃないかな)と思った。教育界に棲んでいる私には危惧が大きかったのだ。


 時代は昭和四十年代当初。思想も多様化を極め、大学紛争も花盛り、決して学究の府ではなく、むしろ嵐の吹きすさむ庭だった。どういう葦になっていくのかしらと思ったものであった。同一市内に住んでいるのに訊ねる事は一度もせず、勿論Nからの音信もなかった。
 
 いつしか三十年余年の月日が経過し、今年の四月、一枚の挨拶状が私を驚かした。Nからであった。ここから十五Kmほど離れた、といっても勿論通勤可能な中都市の中学校、かなり大きなベッドタウン化した町の歴史の新しい学校へ教頭になって赴任するというあいさつであった。四十五才。今の教育行政事情の人事としてはかなり早い任用で、やっぱりなと思った次第であった。

 「N君おめでとう、よかったね。」私は幻の彼に呼びかけお祝いを言った。ところがどんなにも現在の彼が浮かんでこない。私の目の前に立つのは丸刈りのくりくり坊やで、私の目を盗んでやったいたずらを見つけられて、照れながらあやまりに来る時の顔、そしてキラキラした眼で笑いかけてくる叱るに叱れない表情であった。どう考えても浮かんでこない壮年教師Nー想像しようとすればするほど、彼の父親の顔がダブって見えてくるのであった。

 その父親も割に早く、六十才を少し出た頃逝去されて、それも聞いたばかりでお悔やみさえしてしていないけれど、PTAでよく学校に来られた時の姿は鮮明に印象がある。PTAも試行錯誤の時代で親たちも金は出さぬが口は出すというわけで役員さんたちはよく会議に出て来られ彼の父親も熱心に発言されていた。夏の海浜学校にも参加して元気に旗振りをしておられた。長男であるNかわいさ故の献身であったろうが所属している労働組合では勿論リーダーで組織づくりにはなくてはならぬ熱と力を持った人だいうことは聞いていた。
 晩年は糖尿病を患い、床についておられたとも聞いた。Nが教師になったことを喜んでおられたか、又Nが親を安心させるような教師になっていたのか、それも三十二年の中のことで一切が分からなかった。

 そういうNがあと二時間近くで私の目の前に出現するというのだ。私は絵筆を持ってはいたが集中はちっともできなかった。描けた作品への指導、批評もうわの空で道具をしまい、教室の友達にも別れて玄関ホールに出て行った。
 
 ホールは市の少年少女合唱団のコーラス練習が終わったところでハーモニーの余韻がまだ残っていたし、子どもたちを車で迎えに来た親たちで温かいひとときが醸され、生活や家庭があるということのしあわせ部分を演奏していた。陽は西にまわってステンドグラスではないけれど、高窓からは美しい光が振り込んでいた。
 このさくらホールはまだ新しいのに、土地柄まわりの木々はよく育って、窓から見るそれらの木は土曜日の楽しさをうたうかのように葉裏を見せ、特別めだちたがりやの葉々は特に輝いて生き生きしていて、初夏のさわやかな風に甘えていた。
 私も妙な甘さを感じ、四時のこの光の中にこの風景をいつまでも見ていたいと思っていた。そして背もたれの無いクッションの良い腰掛けにすわって、すこしうっとりとしていた。ふと気が付くとほんの暫くのうちにホールはすっかり静かになっていて人影はなく、動くものとしては管理人室に細身の男が一人いるのが見えるだけであった。
 
 彼は来るのかすこし不安になった。四時二十分である。玄関近くに二人の人影が見えた。私は立って出て行ったが、年格好はそうでもいずれもNとは違うと思えた。いくら三十年余り見ぬといっても見れば分かるという自信があった。
 私は又ホールへ戻って文庫本を取り出して頭に入らぬ活字を追っていた。知らないうちにどこから入ってきたのかピアノを弾き出した女の人があり、それが合唱団の夕方からの伴奏者らしかったので安心して喫茶店のBGMのようないい感じ・・・と思ってなおも本に目を落としていた。

  「お待たせしました。」
と声がした。さわやかな男らしい声であった。
  私はとてもうれしかった。こんな男性から(今日会いたい)と言ってもらえて本当にしあわせと思える男であった。
「すぐわかった?」
愚問である。一人しかいないのだからわからぬ筈はない。
「ああ、分かりました。やっぱり僕の思っていた通りの先生でした。」
と言ってひとりでうなづいた。

 昔もそういう癖があった。背筋がよく伸びて剣道と水泳が達者だそうだが、この上背で道場着を着、防具を付けたら相手はそれだけで威圧を感ずるだろうし、プールで抜き手をきればどんないかれた男子生徒でも尊敬の気持ちを起こすだろうなと思われるような颯爽とした雰囲気をもっていた。若さっていいなあー久しぶりにそれを感じた。
 木曽川の太田橋下を遊び場にし、まんなかのピーヤで一服し、向こう岸まで泳いで行き戻りした往年の横着坊主は、こういう男になったのかと感無量であった。

 十二才の少年が四十五才の年盛りの男になって出現するーなんと凄いことであろうか。どうしても描けなかった風貌、雰囲気、すべて今、解決した。しかも殆ど理想的な男性として、男性教師として。
 こういう変化がまさしく味わえるということは何とすばらしい事であろうか。羽化といおうか、変態といおうか、人間の成人化はとにかくすばらしい。平凡だけどやはり教師冥利に尽きるという感じであった。
 
 三十二年会わなかったという事がまたすばらしい事だったに違いない。しかし反対に彼の方からいえばどうだったのだろうか。(会いに行きます)と言ってくれた時には、僕の先生、という気持ちがよくも悪くもあったであろう。しかし三十九才の女教師が七十二才の老婆になっているという現実をなんと受け取ってくれたであろうか。
 人間の老いるという実態を何と見たであろうか、皺の意味とそこに内蔵された年月の重み、どんな現実も俗世間の生態として受け止め得る人間としての私を認めてくれたのであろうか。

  金華山のゴンドラは二台が山の中ですれ違ってほんの一瞬の出会いをし、一台はどんどん眺望の展開する山頂へ行き広い下界を見下ろす。一台は驚くような早さで下降し、地上駅に着く。ちょうどその通りの出会いと再開を今私たちは体験した訳なのだ。

 再会の感動でうわの空のことばでしか対応し得ない自分だったが、その中でこんな事を感じていた。会ってとても嬉しかったとは裏腹に、会わない方がよかったと思ったかも知れなかった。
 喫茶店などに行くよりはこのさわやかなホールで二人だけで話す方がこの得がたい今にはふさわしいと思って隅の安楽椅子に腰掛けたが彼の脚は長さが私の倍もあった。
 吹き抜けの高窓から降り降りていた緑色の光はいつしか柔らかな無色になって私たちの足下近くまで射し込んでいた。軽やかに弾かれていたピアノは気がつかぬうちに止んで居て、代わって二階のどこかに設置されたステレオから静かな低いしらべがかすかに流れていた。

 「親父ですか。親父の気持ちがすこし分かるようになった時は親父はもう床にいました。子どもの時の印象としては勤めと組合運動にばかり熱心で全然家におらなんだです。どこかへ連れてって貰ったと言う事は六年生の海浜学校の時と岐阜へ行った時くらいです。アッ! 岐阜駅前の果物屋で皿に盛ってある傷みバナナを買ってもらったんです。初めて食べたそのバナナがとてつもなくうまかったことを覚えています。
 労働組合運動が盛んな時でしたから自分たちの職場から職域代表の代議士を出そうとしてがんばっていたんですね。それで家族の事なんか眼中になかったのです。病床でかなりボケてからもその話をする時だけはことばも眼光もシャキッとして輝いていました。それ以外は若いのに本当に生ける屍と思えました。まだまだ、年齢は若かったですのにね。
 僕が結婚して金の工面もして二人の住む家を建て増しし、そこに住んで親とつかず離れずの生活をしようと思った時、親父は動けなくなったのです。そんで自分らが建てた部分を車椅子で動けるつくりにして親に譲りました。

 親父はしかし間もなく急逝しました。ええ、心不全という事でした。いつものように往診の先生が来られ、注射をうって帰られたのですが家へ着かれたか、着かれないくらいの時に様子が変わりました。ちょうど土曜の午後で僕はうちに居ました。医者を呼び戻す手配をして一所懸命蘇生をやりました。ええ、日赤の人命救助員の資格を持っていますから救命術は馴れています。
 でも、一所懸命やりながら脳の組織がいかれちまって長生きするよりも、このまま往生させてやった方が幸福かもしれないという気持ちがしきりにかすめ、人工呼吸をやり乍ら何とか助けたいという気持ちと、否このまま・・・という気持ちのせめぎ合いをすごく感じていました。医者が戻ってきて慌てて手当をしてくれましが結局だめで、あっけなく父は逝きました。
 死のために残された方法の中で母も僕も弟も居た日に、もっとも短い苦痛の裡に死ねたということは父のために一番よい道だったかも知れないけれど、僕は今話した気持ちで最期の父に対応していた事だけが後悔です。その時の僕を今も憎んでいます。」
 沈黙がすこし流れ、彼は煙草を一本吸った。

 「僕、妹も亡くしたのです。先生もご存じでしょう、S子です。しあわせ一杯の若妻でしたのに生後八ヶ月の乳飲み子を残してです。これも心不全でした。医者は何でも心不全で片付けるのですね。もっとも最期は誰でも心停止でしょうけど。
 この時ばかりは僕も大きなショックで、こんな事があっていいものか、神も仏もあるものかと思って自分を見失いました。初めて般若心経を読誦し、読経に没入することでやっと落ち着きを取り戻しました。お経は自己暗示、一種の催眠療法ですね。それから般若心経の研究もしました。でも分かったことは一切は空という事でした。先生、そうですね。どう思われますか?」

 彼はかすかに笑った。陰影の深い顔は鬱屈した思いを吐きだしたせいか柔らかだったし、しゃべってからはほんのすこし顔を右に傾ける癖は少年の時のままだと思え、いとしいと思う気持ちが高まってきた。そして曖昧な相づちを打って心では自分が愛した肉親たちの死を反芻していた。
 宗教という麻薬に浸からなくてはとても耐えていけなかった時代、そして諦観ということばの中で、生きる事への執念さえ捨てて逝った者たちの暗かった時代を思った。

  ふと気づくと玄関で小さい女の子が二人遊んでいるらしく黄色いワンピースが見え隠れしていて蝶蝶のように思えた。それに触発されたかのように彼は自分の研究の歩みを話し出した。
 五、六年生の時に作文を書き乍ら少年の眼を研ぎ澄ましていった影響で国語教師となり、作文教育を研究したこと、教育現場で行き詰まって又大学院へ戻り心理学と催眠学の勉強に没頭したこと、文部省の道徳指導書に見る矛盾点と自己の対応について論文を書いた事など次から次へと堰が切れたように彼は話した。
 最終的には大学院研究室ですばらしいM教授との出会いを得て自分を見つめ直した事で心の安定を得て、今の教育現場へ戻った事などを聞いた。

 いつしか二時間近く経っていた、私はまだ聞きたいことがあったが、もういいと思った。そよぎ乍らも揉み苦茶になってしまわずに、傷つき乍らちゃんと葦は立っている。そして教師をしている。これ以上何を聞くことがあろうか・・・。

 彼は
「帰りましょうか? 送ります。」
と言ってくれた。助手席に座った私に
「僕、煙草はのむけど酒はやりませんでね、車については安心してください。でも酒をやらないことで自分を保ってきました。一緒に飲んでしまったら、きっと行き着くところへ行ったでしょうね。男仲間ですから。」
これはおもにNの処世について思想的な不安を持っている私への安心をさせる一言であったろう。大胆に前を自転車で横切る少女のスカートが風で巻き上がった。

 彼は
「中学校でねえ、先生、(彼はとても素直な声で先生と言った)僕、娘たちに、大きくなっておしゃれするのもいいけど品のええ女性になれよ、と言っとるんです。子どもたちが、品がええ女性ってどうするとなれる? って聞きます。僕は、あんなあ公民館へ行って立ってくる時に椅子をちょっと直したり、トイレへ行って済んだらスリッパを次の人のために揃えてくる、そういう事やっとると段々品のいい顔になるんじゃ、と言ってやります。子どもたちは、分からーん、と言って変な顔をしています。」
と言って明るく笑った。
 この事一つだけでもNに会えた事が本当に嬉しかった。

 いつか家の前の団地の入り口に着いていた。私の家は国道を隔てて向こう側に見える庭の奥である。車を止めた彼は先に降りてドアを開けてくれた。そして
「先生、もう一つ忘れとったけど、五年六年の時、県の作文コンクールで貰った優秀賞のトロフィー二つはまだ大事にしています。賞品のシャープペンシルは妹に貸してやって結局とられてしまいましたけれど。今この事を思い出しました。」
と言った。
私は
「そう。」
とだけ言った。

国道を横切らせようと車の往来を見澄まし乍ら彼は
「これ、持っていってください。」
とカラジュームの大鉢を持たせてくれた。淡いピンクのレース模様の紙と同色のリボンでラッピングがしてあった。

「どうもありがとう。ほんとうにいい日でした。」
「僕もです。先生、元気でね。」
 私は軽く肩を叩かれて彼に背を向け国道を横切って庭の奥へ歩き乍ら背中にいつまでも彼の視線を感じていた。
 それはまさに渡し守の視線であった。

(完)

2018年12月20日木曜日

SAM催眠学序説 その120


霊夢の予告が現実化し魂の存在が示された二つの事例

 

1 植物状態の老婦人が死の直前に自分の死亡予告に訪れたという夢の事例

2 母の霊が存在を示すために夢で告知しそれが同時に実行されたという事例 


今回は、厳密な科学的検証はできませんが、夢で告げられた予告内容が現実に起こったことが検証され、魂(霊)の存在やその死後存続が示された正夢であったと言うべき、稀で不思議な霊夢現象2事例を紹介します。

ただし、2事例ともに事例提供者の見た霊夢という「意識現象の事実」の、記憶の細部に曖昧さが残るとしても、嘘や作為はないという前提と、意識現象である霊夢そのものの事実の客観的な真偽は、科学的な検証ができない、という限界を認めたうえでの事例です。
わたしは、霊夢の些細な点に正確であるより、重要な事象について確実なことのほうが意味があるという立場をとっています。

お二人の事例報告者の、重要な事象については嘘がないとする誠実な人間性に信頼を寄せるという前提です。

こうした前提と限界を認めたうえで、つまり事例報告内容に、嘘や作為がない事実だとすれば、ここに紹介する霊夢2事例が、現行唯物論科学では説明不可能だろうというのが、反唯物論の立場から「SAM催眠学」の諸仮説を提唱し探究している、わたしの問題意識です。

そして、お二人の事例報告者は、わたしが霊的存在を、SAM前世療法であらわれる「意識現象の事実」として認めていることを承知のうえで、お話してくださったと思っています。
もちろん、お二人とも語った内容を、わたしが公開するという前提でお話しになったわけではありません。
 
1事例目は、「心・脳一元論」を否定し、「心・脳二元論」を認めざるをえない、という霊夢です。

2事例目は、死によってすべてが無に帰する(帰無仮説)を否定し、「霊(魂)の死後存続仮説」を認めざるをえない、という霊夢です。

両事例の共通点は、霊夢を見た当人と、霊夢に現れた当事者との間に、深い信頼関係および愛情関係がある、ということがいえると思います。

1事例目は、本ブログの読者で、特別養護老人ホームの介護職の女性(仮名「鈴木知子」さん)からのメールです。
わたしとは面識は一切ない方からいただいたメールの紹介です。
「心・脳二元論」を認めざるをえない、という霊夢の事例です。
この事例を「鈴木知子さんの霊夢事例」としておきます。
鈴木知子さんの人柄については、文面からその誠実さが読み取れると思います。
仮名という条件でメール全文の掲載許可をいただきました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(掲載はじめ)
はじめまして、鈴木知子と申します。
ダイレクト・メールをお許し下さいませ。(注:以下ゴチック部分は稲垣の加工)

私は2006年の放送でアンビリバボーを観て稲垣さんの事を知りました。
またビデオデッキに放送を録画して思い出しては、チョコチョコ観ておりました。
しかし今はその録画したテープもどこにいったか分からなくなり、久しぶりに思い出して観てみたいなと感じ、You tubeを検索したら見つかりました。
また稲垣さんが登録をしているのを見つけ、セッション1から7(終了)まで全部観ました。

私は第1回目の放送(注:2006年放送)しか、知りませんでした。
またその後も2回目の放送(注:2010年放送)があったとは知りませんでした。
しかし稲垣さんがYou tubeに登録されていたので、全部観させて頂きました。またブログも、つい最近までのを拝見させて頂きました。

私の頭の中では納得のいく内容でした。
また私自身、確信できました。
また確信ができたというのは、ある体験があったからです。

私の仕事は、老人介護の仕事をしており特別養護老人ホームで働いていました。
現在は部署が違いますが、当時は特別養護老人ホームでこんな体験があったのです。

その体験は、2010年の11月に入った頃です。

私が担当している利用者(老人の女性)の方に、食事の世話をしておりました。
また、その利用者は、認知症が酷く、常に日ごろから食事中は喋りっぱなしだったり、口をつむったままの状態だったり、頭を掻いたり、背中を掻いたりなど、食事が全然進まない方でした。

ところが、その利用者の方が、食事を喉に詰まらせ、表情も身体も硬直し、声をかけても身体を揺すっても応答がないのです。
慌てて看護師を呼んで、直ぐに診てもらいました。

命は助かったものの植物人間のようになってしまったのです。

また丁度その日は、その利用者の親族関係者を施設にお呼びし、胃ろう経管栄養にするかどうかを施設長と看護長が集まって会議をされておられました。
会議の結果は、胃ろう経管栄養にはしない、ということになりました。
私にとっては悲劇が二つ重なった状態であり、悔しさと後悔がどっと押し寄せ、涙が止まりませんでした。

その後五日経ち、寝ているときにこんな夢をみたのです。

ちょっと鈴木さん、私がわかりますか? 山内です(利用者の苗字です)」

夢の中で山内さんが現れたのです。
そして山内さんが言うのです

鈴木さん、いっぱいご迷惑をかけ、悪いことしましたね。
そんなに悲しまないで下さい。
いままでありがとうございました。 

腹が立つ事がいっぱいあったでしょうが、一生懸命面倒をみていただいてありがとうございます。鈴木さんが、私がいうことを聞かなくて怒ったり、無理やり口をこじ開けて食べさしたりと、一生懸命みていただいたこと感謝しております。

でもね、私の身体と精神は全くいうことがききません。

しかし、魂は別のものです。

魂の私は、とても理解しております。


あなたが必死で私をみていた事も解っていますし、感謝してます。
だから、悲しまないでください。

じゃあ、私は逝きます。

そういって消えて行きました。

その後、目が覚め、窓をみると朝になっていました。
そして山内さんの事を思い出しながら出勤すると亡くなられておられました

こんな体験が私にはあり、介護の仕事に対して、認知症だからといってご利用者の方を馬鹿にしたり怒ったりすることはなくなりました。

稲垣さんがおこなっているSAM前世療法は、どても素晴らしいものと私は思っております。
世の中には、信じることの出来ない方がおられますが、私は、稲垣さんがおこなっている治療法は信じられるものと思っています。

これからも頑張って探究し続けて下さい。
それでは、失礼いたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(掲載おわり) 
ところで、上記鈴木知子さんのメール内容の霊夢現象については、「SAM催眠学序説その85」のコメントで、ハンドルネーム「あ」さんから、次のような、唯物論医学によるまことにもっともで常識的反論があります。(注:ゴチック部分は稲垣の加工)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハンドルネーム「あ」 さんのコメント

病気や怪我などの様々な原因で脳が損傷する事により、時には高次脳機能障害と呼ばれる、精神活動(記憶、知覚、認識、思考、性格、etc.)における機能的障害が発生する場合がある事が知られています。
【参考URL】
 高次脳機能障害若者の会「ハイリハ東京」>「ハイリハ東京」入口>2.高次脳機能障害の実態(症状の説明)
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Ayame/7001/dainou/koujino-shoujo.html
又、アルツハイマー型認知症は脳組織の一部の異状によって起きる疾患ですが、その症状として記憶障害や言語障害が現れる事からも明らかなように、脳の機能が失わればものを覚えたり、思い出したりする事は出来ませんから、脳髄がなければ新たにものを覚える事も無いという事になります。
脳髄の一部が損傷しただけで、精神活動を行うために必要となる機能に障害が発生して、精神活動の一部が機能しなくなるのであれば、脳髄がなければ精神や人格は存在しないとするのが自然です。
又、脳の損傷によって植物状態になる場合がある事が知られており、植物状態の人間の大半には意識がありませんから、脳が無ければ意識を保つ事は出来ないと考えられます。何も感じず、何かを認識する事も無く、何も思い出せず、新たに何かを憶える事も無く、何も考えない、その様な状態を精神や意識が存在していると呼べるとは思えません。

もし、意識は脳にないという説が正しいと仮定しますと、人は(肉体の一部である)脳が無くとも精神活動が継続出来るという事になりますから、脳の一部が損傷しても精神活動に影響が及ぶ事は無いで、現実に高次脳機能障害という現象が存在している事の説明が付かなくなります。

意識は脳にないという説が正しいと仮定してしまうと説明が付かない現象が現実に存在している事が確認されている以上、意識は脳にないという説は誤りだと考えられます
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おそらく、メールをくださった鈴木知子さんも、かつては上記「あ」さんと同様な唯物論医学による常識的思い込みによって、認知症の老人介護のお仕事をしておいでになっただろうと思われます。
そうした思い込みを完全に覆した強烈な体験が、霊夢体験だったと推測できます。

さて、上記「あ」さんの、「心は脳の付随現象である(心・脳の一元論)」とするコメントが正しいとすると、鈴木知子さんのメール内容である霊夢の死亡予告は、錯覚ないし幻覚の類いの産物である以外のなにものでもないことになります。
あるいは、よくできた創作か。
介護してる老婦人の、植物状態に陥ったことへの悔しさと後悔が、死亡予告の霊夢現象を見させ、それがたまたま現実化した、という偶然の一致という唯物論的解釈もできるでしょう。


しかし、霊夢から目覚めた朝には、リアルな霊夢の死亡予告が、現実化していた事実に間違いがあるとは思われません。

こうして、脳の機能障害によって認知症がひどく、そのうえに植物状態に陥り、意識や精神活動をまったく喪失しているはずの人が、起こし得ることが絶対できないはずの「霊夢による死亡予告現象」と、「意識は脳の付随現象」であるから「脳の損傷が生じれば、その付随現象である意識も喪失するはずだ」とする立場とは、真っ向から対立することになります。


しかし、意識と脳は密接な「対応関係」にあるが、それがそのまま脳が意識を生み出しているという「因果関係」を証明していることにはならない。したがって、意識の受信機能(受け皿機能)を担う脳の、加齢による劣化、病変、薬物などの影響などによって、意識を正常に受信できない機能障害(異常事態)が生じる。そうした意識と脳の「対応関係」の異常が、認知症、アルツハイマー病、植物様状態として、見かけ上「因果関係」のごとく観察される、しかし、意識と脳は本来別物であるので、脳の損傷が、そのまま意識そのものの損傷になっているわけではない、という「心・脳二元論仮説」による説明もまた、成り立つと思われます。
こうした「心・脳二元論仮説」によらなければ、鈴木さんの見た霊夢現象は説明できないからです。


「心・脳 一元論」、すなわち、心(意識)は脳の付随現象であり、肝心の脳が正常機能を停止すれば、脳の付随現象である意識や精神活動も、すべて錯乱・停止・喪失されてしまう、という言説は、科学的手続きによってけっして実証されているわけではなく、言動や脳の映像などに現れている異常状態の観察によって、見かけ上そう考えられる、そのように見做すことができる、という憶説にすぎません。
つまり、脳以外のところに意識があるはずがないという主張は、現行の科学的知識をもとに、論理を展開するという哲学的論証による以外に、証明することはできないのです。


つまり、「心・脳 一元論」、「心は脳の付随現象仮説」は、唯物論科学の立場から、その立場上構成されている「信念」や「主張」をそのまま表現したものであって、その言説自体は、科学的に確定された手続きによって検証・証明されているわけではないのです。
いったい、どのような手続きをすれば科学的検証や証明ができるのでしょうか。
したがって、これまでの世界中の多くの大脳生理学者の研究によっても、脳が心(意識)を生み出している、という科学的実証は、いまだにできていないのです。

意識は脳にないという説は誤りだとする「あ」さんの論理展開は、心と脳の「対応関係」を「因果関係」だと思い込み、その結果、脳が心(意識)を生み出している、といういまだ科学的実証のない憶説である「心・脳 一元論」に基づいて、一方的に断定的に論じる、という恣意的推論による認知の誤りです。

したがって、「あ」さんの論証は、そのまま、「意識現象のすべては脳が生み出しているという説が正しいと仮定してしまうと説明が付かない現象(霊夢現象)が現実に存在している事が確認されている以上、意識はすべて脳の活動によるものでしかない、という断言は誤りだと考えられます」と言い換えることになります。

そうでないとすれば、「あ」さんは、「心・脳一元論」に対する強力な反証である鈴木知子さんの霊夢を、「心・脳 一元論」でいったいどのように説明できるのでしょうか? 
脳の未発見の領域の機能によるものだ、というような説明にならない逃げの言い訳で自己満足するしかないでしょう。
これでは到底説明とはいえず、「実は分からない」と言っているに過ぎません。
あるいは創作だ、偶然の一致だとして霊夢を無視するか。


臨死体験によって、魂と思われる意識体が体外離脱し、意識体が見聞した体験が報告される、という事例が数多くありますが、「あ」さんの論によれば、肉体(脳)を持たない意識体(魂)に、感覚器官があるはずがないわけで、見聞した報告はすべて錯覚・妄想ということになります。
しかし、臨死体験中(医学的に脳機能の停止中と判断できる事態) に見聞したという報告内容を検証した結果、見聞内容が事実と一致したという無視できない以下のような事例があるのです。

6 146RT 26コメント 【衝撃真実】死後の世界は存在した!脳神経外科の世界的権威エベン・アレクサンダー医師や東大救命医らが死後の世界を認める!

こうした脳機能停止中の現象を「心・脳 一元論」で説明できるでしょうか?
ただし、体外離脱現象がほんとうに起きていたのか、脳内現象であるのかについては、いまだ臨死体験研究学会においても、科学的決着がついているわけではありません。


ちなみに、大脳生理学の実績でノーベル賞受賞の研究者数名(エックルズ、ペンフィード、スペリーなど)が、脳の実験研究の結果、「心・脳 一元論」の立場から「心・脳 二元論」へと立場を変更するに至っています。

また、わたしの敬愛する九州大名誉教授であり世界的催眠学者の成瀬悟策医博も、晩年の教育催眠学会の講演で、「脳の病変によって動かないとされていた脳性麻痺の動作訓練を催眠暗示でやってみると、動かないとされていた腕が動くようになりました。しかし脳の病変はそのままです。こうしたことから、身体を動かすのは、脳ではなく『おれ』であることにやっと気づきました。脳は心の家来です。私のこの考え方を正統医学は賛成しないでしょうが、21世紀の終わりには、私の言っていることが明らかになるでしょう」と、催眠臨床の立場から「心・脳二元論」に至ったことを表明されています。

催眠暗示を受け入れた潜在意識(心)の脳への働きかけによって、痛覚麻痺などの脳の認知の変性状態を引き起こすと考えられる知覚催眠現象を、「脳は心の家来です」という考え方(心・脳二元論)で説明できることは、催眠臨床における体験的、実証的事実として、わたしは実感として受け入れることができます。


脳と心の関係についてのこれまでの研究史や、詳細な科学的考察については、超心理学者笠原敏雄氏のHP「心の研究室」脳と心の関係をお読みください。 

また、意識(魂)の死後存続の科学的諸見解ついては、以下の記事をお読みください。

【ガチ科学】「死後の世界」が存在することが量子論で判明! 米有名科学者「脳は意識の受け皿にすぎない」

死後の世界、超能力、スピを科学する定義「ポスト物質主義科学18条」とは? 大学教授が提示!

 わたしの提唱している「SAM催眠学」では、「心・脳二元論仮説」の立場を明確にしていますから、鈴木知子さんの霊夢は「意識現象の事実」として認めますし、何よりも霊夢の翌朝に、霊夢に現れた山内さんの「じゃあ、私は逝きます」という死亡予告が、翌朝に現実に起こっていたことで、鈴木知子さんの見た霊夢が正夢であった証明になっていると思われます。

霊夢で「私の身体と精神は全くいうことがききません。しかし、魂は別のものです。魂の私は、とても理解しております」と山内さんは霊夢の中で述べていますから、おそらく山内さんの死亡直前の魂は、体外離脱によって、あるいはテレパシーによって、お世話になった鈴木知子さんの霊体に働きかけ、霊夢現象を起こしたのではないか、というのが「SAM催眠学」の「霊体仮説(霊体に意識・潜在意識が宿っている)」による解釈です。

こうして、鈴木さんは、霊夢の結果、こんな体験が私にはあり、介護の仕事に対して、認知症だからといってご利用者の方を馬鹿にしたり怒ったりすることはなくなりました」と述べています。

わたしも88歳であった母を老衰で3年前の夏の終わりに亡くしています。
意識が朦朧となり、血管からの栄養点滴もできなくなった時点で、胃ろう手術で延命を図るかどうかを担当医師と協議した結果、意識の回復見込みの期待はできないだろうという診断を受け入れ、胃ろう手術による延命を断念し、老衰による自然死を選択しました。
死亡までの70日間、わたしは毎日病院に通い、意識のほんどない母親に5分間の語りかけを欠かさず続けました。
母の死亡は深夜でしたが、連絡を受けて駆けつけたわたしの目に映った母の死に顔は、眠っているように安らかで、苦しんだ様子はありませんでした。
ゼンマイ仕掛けの心臓のゼンマイが巻き戻り、コトンと動かなくなったような死に方であったと思われました。
ただし、母が霊夢に現れたことは一切ありませんでした。


さて、2事例目は、わたしのクライアントである田口美智子(仮名)さん49歳が語ってくれた、霊の死後存続を示すさらに強力な事例で、この事例は、霊夢の予告と予告どおりの現象の顕現化を偶然の一致では説明できないでしょう。

田口美智子さんの、素直で正直な人柄については、面接結果から保障できると思います。
以下は、田口美智子さんからの聴き取りメモをもとに、公開の許可を得て、再度メモ内容の正誤確認をし、語られた事実を再現したものです。

田口美智子さんの母親は急性白血病を発症し、医師から余命20日と告知され、苦痛を緩和するために鎮痛薬を注射するが、そのあと昏睡状態のままで死亡するだろうから、意識が鮮明な今のうちに話をしておくようにと言われたそうです。
 母親にはそうした余命告知は伏せて、彼女は母親と次のような約束をしたそうです。

美智子さんは死後の世界があることは信じているが、確信したいのでお母さんが亡くなったあと、死後も霊として生き続けていることを、何とか早く娘の私に知らせてほしい、という約束です。

お母さんも、迫り来る死期を覚悟していたらしく、このことを確約してくれたそうです。
果たして、この約束後数日して、昏睡状態のままお母さんは亡くなりました。

美智子さんは、お母さんがきっと約束を果たしてくれるだろうと思い、身の回りに注意して、お母さんの霊からの知らせ現象を待っていましたが、夢や霊的現象は、何も起きないままに49日間が経過しました。
その49日目(50日目に入った深夜)の夜午前2時ころに、お母さんが夢に現れて、次のようなことを告げました。

私が、あんたに死後も霊として生きていることを知らせようと、この部屋のカーテンを何度も揺らしたり、蛍光灯の点灯用の紐を揺らしたりしているが、ちっとも気づいてくれない。

あんたの肩を持って揺らして知らせたいけども、体のない私にはそんな力はないのよ。

それで、今、力をふり絞って、台所の棚に伏せてある鍋を鳴らして知らせているからね。

さあ、これで、私はもういくからね。

 このお母さんの霊夢を見た直後に美智子さんは、はっと目が覚めたそうで、時計を見ると午前2時少し過ぎでした。
霊夢の鍋を鳴らしているという夢の告知を確認をするために、すぐに階下の台所へ降りてみました。
なんと台所には、ご主人と祖父の二人が、暗いなかで耳をすませてじっとたたずんでいました。

台所のあたりで、何かがカタカタ揺れて鳴っている金属音で二人ともに目を覚まし、ネズミでもいるのかと思って階下の台所へ様子を見にきたということでした。

台所の金属製パイプの棚に、逆さに伏せてある直径25㎝ほどの鍋は、逆さに伏せてあったので、取っ手の部分が少し浮いており不安定な状態ですが、人が歩く程度の振動ではカタカタ鳴ったことはこれまで一度もなかったそうです。

台所の窓は閉め切ってあり、風で鍋が動くはずはなく、鍋の鳴る音はてっきりネズミのいたずらだろうと、親子二人で耳を澄ませ、揺れる鍋の音を聞いていたということです。

ご主人と祖父の二人は、美智子さんが階下に降りていく直前までは、鍋が揺れており、カタカタ鳴っている音を確かに見聞したそうですが、美智子さんが台所に来た直後に音は止み、その後は鍋の音が一切しなくなったということです。
したがって、美智子さん自身は、鍋の鳴っている音を聞くことはできなかったそうです。
ご主人と祖父に、霊夢のことを話すと、「そういうことが本当にあるんやなあ」と呆然として驚くばかりでした。

ちなみに、ご主人も祖父も、こうした霊の存在などに興味・関心はまったくなく、唯物論者といってよい考え方の強い人だと美智子さんは語っています。
だからこそ、母親の霊は、自分の死後存続を示すために、二人の唯物論的人間を証人に立て、「ラップ音現象(ポルターガイスト現象)」を起こしたことの客観性を担保しようとしたのではないか、と美智子さんは思ったそうです。

その後、お母さんが夢に出てくることも、鍋の音も一切なくなったということです。
この体験によって美智子さんが、霊(魂)の死後存続を確信したことは言うまでもありません。

この「田口美智子さんの霊夢事例」は、死ねばすべては無に帰する、という「帰無仮説」を真っ向から否定し、「魂(霊)の死後存続仮説」を強力に支持しています。

しかも、霊夢を見させたお母さんの霊は、霊夢を見させることと同時進行で、鍋を揺らして鳴らすという「ラップ音現象(ポルターガイスト現象)」も起こしてみせるという離れ技をやってのけ、生前の約束どおり、自分の霊(魂)が死後存続していることを、二人の証人とともに娘美智子さんに確かに証明してみせたということになります。
 
この霊夢と霊夢の予告どおりのラップ音現象(ポルターガイスト現象)の一致を、硬直した唯物論者は、おそらく偶然の一致として片付けるでしょうが、それではあまりにもご都合主義に過ぎるでしょう。
あるいは、唯物論に反する不都合な現象として、創作に違いないだろうと断定し無視するかでしょう。


わたしは寡聞にして霊が夢で告知し、それと同時に告知したとおりのラップ音現象(ポルターガイスト現象)を示し起こしたという事例を、ほかには知りません。

単なる霊夢ではなく、霊夢での告知内容が、翌朝あるいは直後に現実として起きたという証明のある霊夢事例、すなわち「心・脳の二元論仮説」および「魂(霊)の死後存続仮説」を強力に支持するような証明のともなう霊夢現象は、そう多くはないだろうと推測しています。

ちなみに海外では、霊姿やテレパシーによる類似的4事例の伝聞による詳細な紹介が、イアン・スティーヴンソンによって報告されています。(『前世を記憶する子どもたち』日本教文社、PP.27-44)
スティーヴンソンも、こうした事例の共通項は、親密な愛情関係にあった者どうしの間に起きていることを指摘しています。

ここにわたしの紹介した霊夢2事例、スティーヴンソンの紹介している4事例など、魂と呼ばれる意識体が、死後存続をしていることを示す類似の諸事例は、世界各地で、古来より、少なからず起こっていると思われます。
だからこそ、唯物論科学全盛の今日でも、唯物論に反する「魂の死後存続」を、「宗教的観念としての信仰」とは関係なく、「体験としての実証的事実」として認め、語り継ぐ人々が、連綿として後を絶たないのだと思われます。


わたしがここに紹介した霊夢2事例の公開目的の第一義は、「魂(霊)の死後存続」を示唆するできる限りの客観的情報を示すことにあり、わたしが紹介した2事例の霊的存在を示す情報の解釈について、考えられる限りの可能性のすべてを厳密に検討され、霊的存在の真偽について、死後存続の真偽について、得心のいく自分なりの妥当な結論に到達していただくことにあります。

読者のみなさんのなかで、ご自身の体験、あるいは伝聞の体験で、ここに紹介したような類似の事例をご存じの方は、どうぞコメントをお寄せください。

また、紹介事例への疑問や反論、感想もどうぞ遠慮なくお寄せください。

ただし、紹介した事例のお二人の人間性を、誹謗・中傷するような悪意が疑われるコメントはお断りします。

最後に報告です。
「その118」で紹介した先天性皮膚疾患の治癒事例ですが、今年4月1日のセッション後9ヶ月の経過した12月22日現在、皮膚疾患は完全に消失していることを、ご本人と面会して目認 しました。
ただし、11月下旬にぶり返しの兆候があったそうですが、まもなく治まって12月22日現在では完全に消失していることが確認できました。

また、2019年1月3日現在の本ブログへの総アクセス数は、154,185に達しました。
けっして読みやすくなかっただろうわたしの長文の記事を、これまで辛抱強くお読みくださったことにあつく感謝いたします。

今年2019年は、経済至上主義一辺倒の資本主義体制の弊害である不公正や歪みが、さらに露わになり、動揺と混乱と不公平感や閉塞観が広がり、それにともなって、これまで支配的であった唯物論信仰による、価値観・世界観・人生観などに、懐疑と変革の兆しが、少なからずあらわれるてくるような始まりの年になる予感がします。
そうした混迷を深めていく状況の中で、よりよく生き抜く人生の精神的指針として、生まれ変わりと魂の存在を、科学的に実証しようとする本ブログが、ささやかな一助となれるように願っています。

わたしは今年も、簡素で、スリムで、自給的で、喜びを中心にした生活を送ることを心がけたいと思います。

読者のみなさんも、2019年が、まずは健康で、安全で、平和でありますように、心よりお祈りいたします。

2018年11月14日水曜日

SAM催眠学序説 その119

 顕現化した「インナーチャイルド人格」との対話                                   見做し人格インナーチャイルドとのセッション逐語録                                       

 ここに紹介するのは、「インナーチャイルド」と呼ばれている、「クライアントの大人の人格に内在していながら、成長から取り残された別人格である子どもの人格」との対話の逐語録です。

インターネットで インナーチャイルドを検索しても、明確な定義をしているサイトはないようです。
「自分の中にいる傷ついた小さな頃の自分」「子どもの頃の記憶や感情」というおおざっぱで曖昧な言い方でまとめるしかないようです。
ちなみに、『心理臨床大事典』培風館,1999、『精神分析事典』新曜社,1995を検索しても、「インナーチャイルド」の項は出てきません。明確な定義がないということです。
したがって、「インナーチャイルド」は、アカデミズムで認められている心理学用語ではないようです。

インナーチャイルド療法遂行のうえで肝心なことは、小さな頃に傷ついた「記憶感情などの総体であるのか、傷ついて苦しんでいる小さな頃の「人格そのものであるのかが、はっきり定義されていることです。

療法の対象であるものの定義に基づいて作業仮説が構築され、その仮説によって採用する適切な技法が選択されてこそ、みのりある改善効果を見込むことができると考えるのがSAM前世療法の常道です。

SAM催眠学では、これまでの催眠臨床で確認されてきた「意識現象の事実」の累積にもとづき、SAM前世療法において、療法の対象とする「インナーチャイルド」を次のように明確な定義をしています。                         

インナーチャイルドとは、「耐えがたい悲哀の体験をしたために傷つき、その苦痛から逃れるため、大人の人格へと成長していく本来の人格から分離(解離)され、 取り残された子どものままの残留思念の集合体であり、意志を持つ別人格としての属性を備えたもの」である。

こうした悲哀を抱えているインナーチャイルドの存在は、成長し大人になっている人格がそれを直視して生きることの苦痛のために、大人の人格の潜在意識下に抑圧され、内在していると考えられます。
したがって、顕在意識下ではインナーチャイルドの存在が、はっきり自覚されることはなく、深い催眠状態に至って、つまり潜在意識の蓋を開けないと顕現化しないということになります。

また、悲哀を抱えている幼子が、成長することを拒否し、成長していく人格から分離し、自らの意志でインナーチャイルドになることを選択したとは考えられません。
そのような悲哀の苦痛を抱えたままの状態で、自ら成長することを拒否し、インナーチャイルドとなって留まることに合理的理由がないからです。


こうして、SAM前世療法においては、療法の対象とするインナーチャイルドを、成長し「大人となった人格」に内在しているが、別人格として振る舞っている、傷ついた「子どもの人格」だと見做して対処しようとします。

したがって、インナーチャイルド人格は、どこまでもセッションをおこなうための仮定としての「見做し人格」であり、「作業仮説」上の仮定の存在です。

そして、仮定としての「傷ついたまま取り残されているインナーチャイルド」を癒やし、本来一つであるべき「成長している大人の人格」に統合することをセッションの目的とします。
その結果、インナーチャイルドによって引き起こされている不都合な心理的諸症状が改善される、というのがSAM催眠学による「インナーチャイルド療法」の治癒仮説です。

こうした作業仮説によっておこなった「インナーチャイルド療法」は、まだ6事例でしかありませんが、症状の改善にすべて成功しています。

そしてまた、先に提示したような、インナーチャイルドを、明確に「人格」(正しくは人格の属性を帯びた意識体)として定義し、こうした作業仮説に基づくインナーチャイルド療法を、私は他に知りません。

インナーチャイルドは、解離性同一性障害(多重人格)における副人格的存在とも言えますが、インナーチャイルド人格を、主人格が創出した架空の人格であるとは考えません。

さて、私あて第8霊信(2007年1月20日1:01受信)は次のように告げています。

あなたは、すべては『意識』であると理解していた。ことばとしての『意識』をあなたは理解している。だが、その本質はまだ理解には及んではいない。あなたが覚醒するにしたがって、それは思い出されるものとなる

この霊信から10年を経て、私は「意識の本質」の一つとして、「強力な思念(意識)の集合体は、一個の人格としての属性を帯びた意識体になる」と考えるようになっています。

この仮説をSAM催眠学では、「残留思念仮説」と名付けています。

「未浄化霊」然り、「生き霊」然り、「インナーチャイルド」然りというわけです。
また、解離性同一性障害(多重人格)における「副人格」の存在も、「残留思念仮説」で説明可能であろうと考えています。
ただし、 解離性同一性障害における副人格と、主人格との間には意志の疎通(つながり)はない、とされています。
私の唯一の解離性同一性障害改善のセッションでもこのことは確認できました。
しかし、インナーチャイルドと現世人格との間には意志の疎通(つながり)があることが、ここに紹介するセッション逐語録では明らかになっています。
だからこそ、インナーチャイルドの悲哀と苦痛が現世人格に悪影響を生じさせることになると考えられます。

ここに紹介するクライアントA子さんはリピーターであり、最初のセッションで前世が存在しない、つまり、生まれ変わりをしていないことが分かっています。
これまでにA子さんのように、生まれ変わりをしていない魂の持ち主は、20人を越えています。
そのことがなぜ分かったのか。

私あて第17霊信(2007年1月28日23:50受信)によれば、

あなた(注:現世の稲垣)という存在も魂の側面(表層)の者であり、すべての側面(表層)の者は友であると理解しなさい」

と告げているので、これによれば、A子さんの魂表層には「現世の者」が必ず存在しており、現世の者には、魂表層に同居している友である、他の前世の者の存在が分かるはずだ、ということになります。

ところが、A子さんを魂の自覚状態まで誘導して、魂表層の前世の人格を呼び出そうとしても誰も顕現化せず、そこで魂表層に必ず存在している「現世の人格」を呼び出して尋ねたところ、「魂表層には前世の者はいない」と回答したというわけです。

さて、30代後半のA子さんの主訴は、原因がよくわからない自信の欠如と生きづらさ、そして、死にたくなるような深い抑鬱状態の改善でした。
抑鬱状態の直接のきっかけは、職場の人間関係のトラブルだろうが、もっと深いところに何か原因が潜んでいるような気がする、ということでした。

生まれ変わりをしていないので、A子さんの抑鬱状態に深いところで関わっている存在に「前世の者」は除外できます。
したがって、考えられる存在は、インナーチャイルド、あるいは生き霊、ご先祖の未浄化霊などです。

SAM催眠学では、インナーチャイルドは魂表層の「現世の者」に内在しているという仮説を立てています。
したがって、手続きとして、まずは魂の自覚状態まで誘導し、魂表層に存在している「現世の者」を呼び出します。
次に「現世の者」の「人格内部に存在(内在)しているインナーチャイルド」が、呼び出しに応じて顕現化しなければ、そうした存在はいないと判断します。

この、見学者1名同席のセッションは、音声記録が録音されていましたので、SAM催眠学研究の資料としてA子さんに公開許可をいただき、ここに逐語録を公開することができました。
A子さんにはあつくお礼申しあげます。

以下のセッション逐語録は、催眠誘導(魂遡行催眠)により「魂状態の自覚」まで到達確認後の対話です。

・・・・・・・・・・・・・・・・(セッション開始)
稲垣:じゃあ、いいですか。魂表層にはね、生まれ変わりをしていれば前世の者たちがいますが、あなたが、生まれ変わりをしてないということが分かっていますからね。でも、「現世の者」は必ずいるはずです。三つ数えたら現世の者出ておいでなさい。現世の者に尋ねたいことがありますからね。じゃあ三つ数えます。一つ、二つ、三つですよ。あなたは現世の者ですか?                       

A子:うん。うん。                              

稲垣:違うかな? どなたか憑依していらっしゃるの? 現世の者ですか?                                                       
A子:うん。                             
                            
稲垣:じゃあね、現世のあなたの中に、インナーチャイルドと言ってね、幼い頃のなにか深い悲しみがあって、その悲しみにとりつかれて、大人のあなたが分離してね、幼いままで今も生きていて、その苦しみを訴えているものがいるかもしれない。インナーチャイルドと呼んでいます。もしインナーチャイルドがいて、そして、そのインナーチャイルドが持っている苦しみを、大人になったあなたにね、訴えているとしたら、あなたの、何をやっても自信が持てないという状態を作り出している可能性があるので、ちょっとそれを調べます。三つ数えますよ。現世のあなたの中にね、インナーチャイルドが、もし、いるなら、出ておいでなさい。そして、自分の苦しみを語ってください。 三つ数えますからね。一つ、二つ、三つです。あなたは、インナーチャイルドと呼ばれている、幼い頃のA子さんですか? どうでしょう。                                                

A子:うん? ちがーう。                                   

稲垣:違います?                                   

A子:うーん。                                   

稲垣:違うの?                                   

A子:ちがーーーう。                                   

稲垣:なんか、おもしろくないね。                                   

A子:違うー。                                   

稲垣:違うの? あなたインナーチャイルドじゃないですか?                                   

A子:分からないーー。                                   

稲垣:分からない?                                   

A子:(幼い子供のような口調で)分かんない。                                   

稲垣:でもねあなたのね、今の口調はね、幼い頃のあなたのはずですよ。                                   
A子:分かんない。                                   

稲垣:あなたは、幼い時に、お母さんにどうしても認めてもらえないようなことで、苦しんでいるんじゃないですか?                             
                                  
A子:知らなーい。                                   

稲垣:えっ? 知らない。                                   

A子:はい。                                   

稲垣:でも悲しい思いをしているはずですよ。                                   

A子:よく分からない。                                   

稲垣:よく分からないの? でも、あなたがこうやって出てこられたということはね、本来なら成長してね、この大人のあなたと一つになっていないとかんのに、あなたは、成長していく、そういう現世の人格から切り離されてね、分離しちゃってるんですよ。で、一人ぼっちになっちゃってる。で、苦しいから訴え出る…。                                              

A子:うーうん、分かんない。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:分かんない。                                   

稲垣:分かんないでしょ。分からないということは、本当は自分のことが、そうやって苦しんでいることを、よく分かってないそういうことです。                            
                                     
A子:うーん。                                   

稲垣:でもあなたは、幼い頃のあなたですから、はっきり分かるでしょ。                                   
A子:お母さんのことも知らなーい。                                   

稲垣:お母さんのことも知らない?                                   

A子:なんにも知らなーい。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:なんにも知らない。                                   

稲垣:嘘でしょう。知らないふりをしているだけです。                                   

A子:知らなーい。                                   

稲垣:そんなことはありませんよ。あなたは多分、お母さんからね…  。                                   
A子:お母さん、知らない。                                   

稲垣:知らないはずがない。だって、あなたはお母さんから産まれているんだもん。あなたを産んだお母さんを知らないって、あなたはそうやって拒んでるだけです。お母さんをね認めることが嫌なんでしょ。                                   
                                     
A子:知らない。                                   

稲垣:でなかったら、知らないなんてどういうことですか。                                   

A子:うーん、なんにも知らない。                                   

稲垣:そういうことにして、お母さんから、認めてもらえないことをあなたはね、それを認めたくないということでしょう、きっと。違いますか? よーく考えてごらんなさい。

A子:分からない。                                     
                                   
稲垣:悲しいことですからね、お母さんから認めてもらえないってことは。                                   
A子:分からない。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:悲しいのも分からない。                                   

稲垣:分からないの? そうやってあなたは自分の心をね、麻痺させてね、そして、多分、悲しみに耐えてきたんだろうと思うよ。よーく考えてごらんなさい。                                
A子:なんにもない。   
                                 
稲垣:なんにも思わないの?                                   

A子:なんにもない。                                   

稲垣:なんにもない? なんにもなかったら、あなたが大人のあなたと分離してしまうはずがないでしょう。あなたはインナ-チャイルドになっちゃったんだから。                   
                                     
A子:知らなーい。                                   

稲垣:(笑いながら)自分がだれなのか、知らないことなんてないよ。                   
    
A子:分かんない。                                   

稲垣:分かんない? うん。でもあなたは大人になっていく、本体と言ったらいいのかな、大人になっていくあなたとは、別個になっちゃってるってことが分かりませんか? だからこうやって、私が呼びかけたから出て来たんですよ。                                                                       
A子:なんにも分かんない。                                   

稲垣:じゃあ分かるようにしましょうか。きっと分かるようになるよ。                                   
A子:(小さな声で何か話しているが聞き取れない)                                   

稲垣:じゃあ、いいですか。私があなたの額に手を当てます。ここは前頭葉と言われますよ。そこにはね、あなたの記憶がしっかりと幼い頃も含めて、蓄えられています。海馬という部分に蓄えられていると言われてますからね。これからゆっくり10勘定して、海馬  の記憶を… 。                                                                                                                                           
A子:やだ、やだ、やだ、やだ。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:やだ、やだ。                                   

稲垣:嫌じゃない。                                   

A子:やだ。                                   

稲垣:そうしないと、あなたは救われない。                                   

A子:(ぐずり始める)思い出したくなーい。やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ。(ずっとやだを言い続ける)                                
                                      
稲垣:嫌じゃないよ。やっぱりそれくらい思い出したくない、悲しみがあるんでしょ。

A子:やだ、やだ、やだ、やだ、あ-ーー。(苦しそう)                                   

稲垣:でもね、苦しいけどね。                                   

A子:(苦しいが声を出そうとしている)やだ、絶対やだー! やだ、やだ!                                   
稲垣:直面化と言いますよ。                                   

A子:(苦しそう)はあ、はあ、うーーーー。                                   

稲垣:じゃあ、そんなにね、体がね、じっとしていられないほど嫌なことなんでしょう。じゃあ、これだけ認めなさい。あなたは本当はお母さんに認めて欲しかったんでしょう。                                                                       
                                   
A子:(泣き出してきっぱりと)お母さん嫌だ! お母さん嫌だぁーーー。                                   
稲垣:嫌でしょ。その悲しみをあなたはね、あまりにも強かったんでね、成長していく自分からね、切り離されて苦しんでいるんですよ。(苦しそうな声がする)だからあなたは…。

A子:(叫ぶ)思い出したくないのに、もう! うーーー。はあ、はあ、はあ、はあ。           
稲垣:じゃあ、もう今日は、そういうことするのはやめよう。あなたが余りにも苦しいから。でも、あなたは癒される必要絶対ありますよね。                                   
                                     
A子:分かんない。                                   

稲垣:分かんないことない。だって、このままでいつまでもね、分離した状態でね…  。                                 
A子:やだ、やだ、なんにもやだー。                                   

稲垣:その苦しみを、大人のあなたに訴え出るから、大人のあなたはね、苦しんでいるんですよ。自信が持てなくて。その一番の原因は、あなたがね多分作っていると思うよ。     


A子:(弱々しく)知らない。                      
                                
稲垣:本当ならね娘だから、お母さんはあなたを可愛がってね、認めてくれないかんわけです。                      
                                   
稲垣:本当ならね娘だから、お母さんはあなたを可愛がってね、認めてくれないといかんわけですよ。それが多分なかったんだろうと思う。それを思い出したくないくらい辛い思いだからね、そんなこと無かったことにして、今まであなたは、誤魔化してきたんです。でも、誤魔化しきれないから、苦しみはね、大人になっているあなたに伝え続けたはずですよ。 一人で寂しいから。本来あなたは、大人の自分と一つにならないといかんのです。                                  

A子:(悲しそうな小さな声)分かんない。                                   

稲垣:分かんないことはない。そうに決まっていると私は思っているよ。大人の自分と一つになるためには、あなたが癒されないといかんの。ね、癒して欲しいでしょう。           


A子:(悲しそうな小さな声)分かんない。             

稲垣:分かんない? ま、すべて分かんないで誤魔化しちゃ駄目よ。                                   
A子:(悲しそうな小さな声)でも分からない。                                   

稲垣:私には分かってます。誤魔化せませんよ。だからあなたを癒そうと思う。ね。そして、あなたが癒しを得たら楽になるはずです。そしたらね、もうこんなふうに一人ぼっちでね、切り離されて苦しむことはやめて、大人のあなたと一つになれるはずですからね。ヒーリングっていう手を使いましょう。これからあなたをヒーリングしますよ。あなたを管理しているのは心です。心は心臓を中心として広がっているって言いますからね。これから心臓の前にある心からね、エネルギーをあなたに直接繋ぎますよ。そして、癒しが    起こることを待ちますからね。待ってくださいね。じゃあこれから、あなたに直接癒しのエネルギーを繋ぎます。いいですね。                                                                                                                                    
A子:うーん。                                   

稲垣:楽になってくるのきっと分かりますよ。やっぱりね、私の手から出る癒しのエネルギーがね、相当強いものが出てることが分かりますから、やっぱり傷ついているわ。傷つかなきゃ、こんなふうに分離するはずないからね。それはね、あなたには分からないかもしれないけど、精神医学ではね、解離性同一性人格障害とか、多重人格ってのがあるんですよ。多重人格は、苦しんでいる、そういうね、人格がその苦しみをね、自分じゃない別の人間が苦しんでいるっていうふうに、強く思ったために、別の人格が出来上がっちゃった、そういう現象です。インナーチャイルドのあなたも、それと同じような原理ですよ。あなたの場合は、架空の人格でなくって、成長していく大人になっていくそういう人格が、あなたを切り離したんです。そうしないと生きていけないから。辛いままではね。だからあなたは辛い子どものままでね、成長して大人になっている人格から切り離されてね、分離しちゃってる、そういう存在です。悲しいですね。でも、一人ぼっちでは耐えられないから、苦しみを大人になってるあなたに伝えているんですよ。本来の大人のあなたに、一つになってもらわないと困るわけ。統合と言います。そのためには、あなたが癒されないとね、大人の自分と一つになれないというわけです。そのために今癒していますよ。分かりますでしょ、楽になっていくこと。これ拒否することは出来ませんよ。だってこのエネルギーは、私のエネルギーじゃないもの。神様からのものだと言われていますからね。拒否すると、神様に叱られますよ。今、相当強いエネルギーが出ているので、あなたがどれくらい今まで苦しんでいたか、よーく伝わってきますよ。いくらあなたが隠しても、このエネルギーの出方でね、ばれちゃっていますよ。                                 

A子:分かんない。

稲垣:あなたは、そう言って誤魔化し続けて生きてきたんだよね。分かんない、と言わないと生きていけないからな。親から、特に母親からね、認めてもらえないことは、幼い、ちっちゃい子にとってはとても辛いことですよ。あなたは、その辛さを誤魔化して生きてきたということです。あなたというより、大人になっているあなたが、誤魔化してきたんだよな。そのために、あなたを切り離しちゃったんですよ。でも、切り離されたあなたこそ大変だよね。苦しみを持ったままでねずーっと、大人になっているあなたの中でね、生き続けていくしかなかったわけ。それも今日でお仕舞いにしたいと思っている。あなたが、癒しを得たら、大人の自分と一つになってくださいね。楽になってきません?          

A子:分からない。

稲垣:分からない、ばっかりだ。結構あなたは、わがままだな。分からない、で誤魔化されませんよ。こちらは私の手の平はちゃんと伝えてるんだもん。                                  
                                      
A子:でも分からない。                                   

稲垣:分からないでもいいです。ちゃんとあなたを癒していますから。癒していることはきっと分かるはずだよ。これ分からなかったら神様に対する冒涜ということだよ。        

A子:そうなの。                                   

稲垣:うん。                                   

A子:でも分かんない。                                   

稲垣:分からない、ということにしとこう。こっちは、分かっていますからね。誤魔化しは効きません。                                   
                                      
A子:ふーん。                                   

稲垣:ひょっとしてあなたは、案外お母さんに対して、素直でなかったかもしれんな。分からない、分からないと言って、お母さんに逆らったから、お母さんもあなたのことを認めようとしなかったかもしれない。余計悲しくなってね、またお母さんに何聞かれても、分からない、分からないって逆らったかもしれんと思ってる。                

A子:分かんない。                                   

稲垣:それも分からない。もういい加減にしとかないと、いかんね。もういいよ。どちらにしてもね、あなたを癒し終えたらね、大人になっているあなたに一つになれるはずですよ。そしたら、もうあなたの苦しみは消えます。一人ぼっちは辛いからね。                                                         
A子:分かんない。                                   

稲垣:特に自分が認めてもらえない、お母さんから認めてもらえない、というのは辛いことですからね。もう少し、うん、大体時間がきたみたいだよ。どう? さっきより楽になったんじゃないですか?                                   
                            
A子:(甘えたような声)分かんない。                                   

稲垣:(笑いながら)また分かんない。にこっとしながら分かんないって言ったって、ばれますよ。本当はあなたは癒されたはずだよ。                                     
                                      
A子:分かんない。                                   

稲垣:またそう言っている。相当頑固だし、どうもあなたはちっちゃい頃からちょっと頑固でね、母親から見ると可愛くない子だったかもしれんね。だから、それをあなたは、ちゃんと敏感に、もともとあなたは感性が非常に優れているから、お母さんのそういう自分に向けられた気持ちが、よーく分かっちゃうから、余計悲しくなっちゃたんだね。でも、悲しいことを認めるのは嫌だから、分かんないと誤魔化してきたんだよ。どうですか、もう 大人になっているあなたと一つになってくれますか。そうするとね、大人になったあなたあなたは、あなたがね… 。                                  

                                     
A子:(甘えたようなゆっくりとした話し方で)分からない。なんで苦しんだのかも分からない。                                   
                                     
稲垣:それはお母さんに認めて欲しくても認めてもらえなかったから。                                   
A子:そうなんかなー。                                   

稲垣:それより他に思い当たること分かりません?                                   

A子:なんか一杯あった気がする。                                   

稲垣:あったでしょ。一杯あったはずです。                                   

A子:だから、どれが原因か分からない。                                   

稲垣:あー、それが分からないってことやね。それは全体としてでしょう。全体として自分がね、お母さんが認めてくれなくて、どちらかというと嫌われているかもしれんていう悲しみを味わったはずですよ、一つ一つのことについて。そういう悲しみがあった。

A子:うーん。思い出せない。                                             

稲垣:まあ、特に思い出す必要ないでしょう。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:今あなたが、癒されればそれで済むことですからね。                                   

A子:でも癒されたとか、分かんない。                                   

稲垣:分かんない? でも癒されたはずだよ。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:これで癒されなかった人は誰もいないよ、今まで。                                   

A子:そうなの。                                   

稲垣:前世の者だって癒されたって言うんだもん。                                      

A子:知らない。                                   

稲垣:(笑いながら)知らないでしょうね。あなたに、前世ないんだもん。でも、癒されたことは間違いないと思うよ。だって、もう大分表情がね穏やかになっているからね。

                               
A子:ふーん。                                   

稲垣:楽になったはずだよ。                                   

A子:そうなの?                                   

稲垣:うん。癒されたっていう言葉を使わないなら、気持ちがとてもね楽になった。                                   
A子:ちょっと分かんない。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:ちょっと分かんない。                                   

稲垣:(笑いながら)口癖だなそれ。                                   

A子:分かんない。                                   

稲垣:小さい時からそう言い続けてきてね、それで自分をね、慰めてきたんだと思うよ。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:うん。素直に認めたりしたら、それこそ辛いからね。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:だから、分かんないって言っては、誤魔化してきたんだと思う。                                   
A子:ふーん。                                   

稲垣:もうあなたは癒されたはずですから、大人のあなたと一つになれるはずですよ。                                   
A子:ふーん。分かんないなぁ。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:分かんないなぁ。                                   

稲垣:今のままじゃあ変わらないの。                                   

A子:なにか変わりたいって思ってない。                                   

稲垣:そうか、あなたが変わりたいって思うことによってね、大人のあなたと一つになるっていうことですよ。                                   
                                      
A子:ふーん。なにそれ。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:なにそれ。                                   

稲垣:なにそれって、今あなたは、幼い子どものままのはずですよ。                                   
A子:えー?                                   

稲垣:うん。大人じゃないんだもん。でも本当のあなたは、もう大人になっているんだよ。                                   

A子:そうなの?                                   

稲垣:とても魅力的なね、スタイルを持った大人。                                   

A子:いや、無い、無い。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:無い、無い。                                   

稲垣:無い?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:なにが?                                   

A子:そんな大人になってない。                                   

稲垣:大人になりたくないの?                                   

A子:違う。そんな良い大人になってるはずがない。                                   

稲垣:それはねお母さんから埋め込まれたからだよ。いつもあなたは多分駄目な子ね、みたいなことを言われ続けたんじゃないかなと思うよ。                                   
                                      
A子:そうだよ。                                   

稲垣:そう言われ続けたでしょ。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:それ言われ続けてきたから、本当の自分をね、歪んだ目でしか見られなくなっちゃたんだけど…。                                   
                                      
A子:(大きな声になる)でもお母さんが言ってること…。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:(急に怒り出し、きっぱりと)お母さんの言ってることは正しいんだから間違ってないの!!                                        
                                      
稲垣:ふふん。それが子どものね、愚かさと言ったらいいのかな。それはまあ、ちっちゃいあなたにとっては、お母さんは絶対の存在だからね、間違って… 。                           
                                
A子:(泣きながら叫ぶ)お母さんの言ってることは、絶対に間違いないんだから! やなこと言わない!!                                     
                                      
稲垣:そんなことはありません。やっぱりそうだな。あなたはお母さんに認めて欲しかったんだよね。でも、お母さんは認めてくれなかったんだよね。そういうことだな。で、お母さんが認めてくれなくて、あなたは駄目な子みたいなことを言われたけど、それでもお母さん  は絶対正しいからって、あなたは思い込んできたんだよね。お母さんが間違ってるって思うことは誰だって悲しいもんね。だから、あなたはね、大人になっていくことが出来なくて、切り離されちゃったんだよ。                                       
   
A子:(泣きながら弱々しく)お母さんの言ってることは絶対なんだから、お母さんの言うことは聞かないといけないんです。                                   
                                  
稲垣:いや、絶対はありません。                                   

A子:(泣きながら)だって、お母さんの言うこと聞かないと、どんどんお母さんに嫌われ ちゃうから。                                  
                                      
稲垣:お母さんがなに?                                   

A子:(泣きながら)お母さんにどんどん嫌われちゃう。                                   

稲垣:そういうことね。                                   

A子:(泣きながら)だから、良い子で、お母さんの言うこと聞いていないと駄目なんで。 はぁー、はぁー、はぁー。                      
                                      
稲垣:よく分かりますよ。そういう気もちはよく分かる。うん。でもね、私に言わせると、お母さんが間違っています。                                    
                                      
A子:(泣きながら)お母さんが言っていることは正しいー。(泣きすすりの声)                                   
稲垣:残念ながら違う。                                   

A子:(泣きながら)お母さんが言うから、駄目なんだよね。                                   

稲垣:多分、あなたが言っているお母さんの年齢はおそらくね、20代の半ばから30代ぐらいだと思うけど、私は70歳だよ。お母さんの倍ぐらい生きているよ。                               
A子:(泣きながら)でも、お母さんのほうが正しい。                                   

稲垣:その私が言ってることと、お母さんの言ってることを比べてごらん。                                   
A子:お母さん。                                   

稲垣:経験が違うよ。                                   

A子:(泣きながら)お母さんは、私のお母さんだから絶対なんだ。                                   
稲垣:絶対はありません。大体ね、娘のことをね認めないなんていうお母さんは、間違っているよ。                                   
                                      
A子:(泣きながら)でも、私のお母さんなんだもん。                                   

稲垣:じゃあ、あなたが、間違ってることをしてたの?                                   

A子:(泣きながら)分かんない。                                   

稲垣:してないよ。分かんないっていうことは、してないってことだよ。あなたは、悪いことを何にもしてないのに、お母さんからこの子は悪い子だって。                               
                                      
A子:(泣きながら)でも、お母さんが悪いって言うから、悪いことしてるんだ。                                   
稲垣:違いまーす。お母さんのほうが歪んでるの。                                   

A子:(泣きながら)違う。お母さんは違う。                                   

稲垣:そりゃね、娘のあなただから、お母さんのことを悪く言われたくない気持ちは分かるよ。                                   

A子:(泣きながら)お母さんが好きなのに。                                   

稲垣:明らかに間違っているよ。                                   

A子:(泣きながら)お母さんは、なんにも間違ってなーい。                                   

稲垣:間違っています。間違っているから、あなたがこんなふうに悲しくなって…。                                       
A子:(泣きながら)違う。私が悪い子だから。                                   

稲垣:大人に成り損なっているんだよ。                                   

A子:(泣きながら)違う。                                   

稲垣:違います。                                   

A子:(泣きながら)お母さんは悪くない。                                   

稲垣:悪い。悪いなそりゃ。うーん。
                                   
A子:(泣きながら)違う。私がいつも悪いから。                                   

稲垣:いつも悪いはずがないよ。そんなふうにね、自分のことを責めてちゃ駄目だよ。      でも、もうお母さんもね、きっとそれは反省していると思うよ。                            
                                      
A子:(泣き声が変化)お母さんは反省しなくていい。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:(しっかりした話し方に変化)お母さんは、いつも正しい。                                

稲垣:いつも正しいの?                                   

A子:だから反省しなくていい。                                   

稲垣:反省しないの?                                   

A子:反省する必要はない。                                   

稲垣:そしたらそれも間違っているな。子どもであるあなたをこんなふうに苦しめているんだからね。良い母親とは言えませんよ。                                    
                                      
A子:でも、私が悪いからいいの。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:私が悪いからいいの。                                   

稲垣:あなたは、そういうふうに自分を悪者にして、そしてね、お母さんは正しくて、立派な人だったと誰でも思いたいんだよね。だから自分を悪者にして、自分が正しいこと本当はやっているんだけども、お母さんが怒るからには、自分が悪いと思い込んできたんだよね。そういうあなたがね、大人のあなたと分離して、インナーチャイルドになっちゃったんだ。                           
                                     
A子:今はこのままでいたいんだ。                                   

稲垣:駄目です。このままでいたかったら、大人のあなたと一つになりなさい。そして、もうあなたは、大人のあなたと一つになれば寂しいこともないし、一つになるから。                                   
A子:寂しくないよ。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:寂しくないよ。                                   

稲垣:今でも寂しくないの?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:寂しいから、でもね、あなたは誰かに、誰かと言っても、もう、訴える人は大人のあなたしかないんで、で、その大人のあなたが、苦しんでいるの。あなたが、そうやって訴え出るの。あなたが、そうやって訴え出ることを今まで知らずにいて、大人になっているあなたが、自信を無くしちゃってる。何やっても自分が悪いって、思い込んじゃっているの。そんなこと辛いでしょう。                                             

A子:うーん、それは当たり前のことだ。                                   

稲垣:違いますね。当たり前じゃないね。だってあなたは今、涙流しているじゃない。こんな悲しいことをあなたはね思い続けていて、それが良いとは絶対思えないね。                              
A子:でもそれが普通だ。                                   

稲垣:普通ではありません。だって、ほとんどの人は、そんなインナーチャイルドなんて抱えていませんよ。                                          
                                      
A子:ふーん、分かんない。                                   
  
稲垣:分かんないことはない。私には分かるよ。だって、あなたよりも何倍か年取ってるからね、色んな経験踏んでいる。それでもそんな人、そんなにいないんだもん。            
  
A子:うーん。                                   

稲垣:そんなにいるはずないでしょう。                                   

A子:そうなの?                                   

稲垣:あなたが、分かんないっていうだけの話。                                   
 
A子:ふーん。                                   

稲垣:だから、もうあなたは、大人の自分と一つになってくれないといかん。                 
           
A子:まだ出来ない。                                   

稲垣:出来ないことないです。出来ますよ。                                   

A子:そうかなぁ。                                   

稲垣:出来るねー。だって、今こうやってねあなたは涙をこぼしてね、それ難しい言葉でカタルシスって言うんですよ。浄化。                                   
                                      
A子:ふーん。                                   

稲垣:あなたは傷ついていてね、その傷ついた悲しみをね、涙にして外へ今流して出したから、浄化されていますからね、もう大人の自分と一つになることが出来ますよ。           

A子:今日は…  。                                 

稲垣:うん?                                   

A子:今日は、まだしない。                                   

稲垣:何で? 早くしたほうがいいよ。                                   

A子:でも駄目。                                   

稲垣:何でですか。                                   

A子:分かんないけど駄目。                                   

稲垣:またー分かんないが始まったなー。それならいつかは、今日は駄目でも。                                   
A子:うん、いつかなら、いいよ。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:いつかなら、いいよ。                                   

稲垣:いつかなら、いいの? これから一週間ぐらいで… 。                                  

A子:駄目。                                   

稲垣:一つになりなさい。                                   

A子:うーうん、まだ出来ない。もうちょっと、まだ駄目。                                       
稲垣:もう少し時間が欲しいですか?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:時間がきたら、時間が経って…。                                   

A子:(甘えたような声で)そん時、またおじちゃんにやって欲しい。                                   
稲垣:えっ?                                   

A子:また、おじちゃんにやって欲しい。                                   

稲垣:私に?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:うーん。そんなこと言わずに、今日一つになってくださいよ。                       

A子:今日は出来ないの。                                   

稲垣:ふふん。何で。                                   

A子:うーん、なんか駄目って感じるから。                                   

稲垣:うーん。曖昧な返事だな。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:でももう、あれだね。                                   

A子:でも、おじちゃんね。                                   

稲垣:うん。                                   

A子:少し、分かんないじゃ無くなったからね。                                   

稲垣:あ、そうか。少し分かってきた?                                   

A子:そう。だからね、もうなんかね、いいの。                                   

稲垣:(笑いながら)いいのか。じゃあ、あまり、あなたに、あせって一つになることをね。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:どうしても(聞き取れない)よくないかな。                                   

A子:うん。今日はね、駄目。                                   

稲垣:あなたのほうが納得してね。                                   

A子:でもね、分かったからいいの。                                   

稲垣:分かってきたのかな?                                   
 
A子:うん。                                   

稲垣:やっぱりあなたは、悲しかったに違いないし、苦しかったに違いないので、あなたより先に大人になっているね、大人のあなたに、そういうことをきっとね、訴えていたと思うよ。                                                                       
                                   
A子:うーん。                                   

稲垣:ね、悲しいし辛いし。私は駄目だからって。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:だからそれが、大人のあなたに伝わっちゃってるんだよ。                                   
A子:よく分かんないなー。                                   
 
稲垣:うーん。だから大人になってるあなたは…。                                   

A子:でも、今日は駄目なんだ。                                   

稲垣:自信無くしちゃって、ね。                                   

A子:「こいつ」が悪いから。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:「こいつ」が悪いからしょうがないね。                                   

稲垣:「こいつ」?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:「こいつ」って、(笑いながら)大人になってるあなたのことかな?                                   
A子:そうだよ。                                   

稲垣:やっぱり大人になってるあなたと、分離って分かるかな? 分かれちゃってるんだよね。離れ離れになちゃってる。皆そんなこと起こさないよ。                                   
                                      
A子:そうなの?                                   

稲垣:ずーっと一つで、大人になってるいくのが普通だけど、あなたはそこからね、大人になっていくのに乗り遅れちゃったんだよね。                                    
                                      
A子:よく分かんない。                                   

稲垣:悲しかったから、辛かったから。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:それで今みたいにね、インナーチャイルドって呼ばれている、まあ別のね人格と言ったらいいのかな。子どものままでね、成長出来なくなっちゃってるってことかな。                                   
A子:でも、「こいつ」は克服したって思ってる。                               
                                 
稲垣:あなたが一つになるのが克服だよ。

A子:違うんだ。「こいつ」自身が思ってるんだ。                                   

稲垣:何で?                                   

A子:うん? 自分は大丈夫って。                                   

稲垣:大丈夫って? でもあなたがそうやって、また苦しまない限りは大丈夫だとは思うけどね。                                   

A子:でも、「こいつ」は分かっちゃたんだ。                                   

稲垣:何が分かったの?                                   

A子:えー? こういう、私みたいなのが、いるってこと。                                   

稲垣:あー分かったのね、きっと。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:うん。                                   

A子:だから、今日は、もうそれでいいみたいだよ。                                   

稲垣:それでいいのか。でもあなたは必ずね、一つにならないかんよ。                                   
A子:あーん。                                   

稲垣:このまま一人ぼっちでね、大人になってるあなたが、「こいつ」か。                                   
A子:うん。                                   

稲垣:「こいつ」と分かれ、分かれになってて、一つのね、人格の中にいるってのは、普通じゃないよ。                                   

A子:そうなのかなー。                                   
 
稲垣:そうだよ。普通はね、一つになってるんだもん。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:それであなたが、一つになればあなたは、大人のあなたから見ると、あなたは小さい頃の記憶という形になるわけ。今は記憶ではない。あなが生きているんだもの。あなたは一つのね人格なの。人格って分かりますか?                                    
                                      
A子:なんとなく。                                   

稲垣:うん。大人のあなたの人格とは別の、あなたのような子どもの別人格ってのを抱えちゃってるわけだから…。                                   

A子:そうなのかなー。                                   

稲垣:そういうのは異常だよ。本当は一つで、一緒に成長していかなきゃいかんのに、あなたは取り残されちゃったわけ 。                                   
                                     
A子:そうなの、分かんない。                                   

稲垣:うん。そういうことだよ。それがインナーチャイルドって呼ばれている。                                   
A子:ふーん。                                   

稲垣:あなたはインナーチャイルドなんだよ。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:だから大人のね… 。                                  

A子:なんか違うなー。違う。                                   

稲垣:成長しているあなたと一つになって欲しいな。                                   

A子:うーうん。                                   

稲垣:うーうんじゃないの。一つにならないと、いかんの.                                   

A子:そーう。                                   
 
稲垣:今日はどうしても一つになれない?                                   

A子:今日はだめー。                                   

稲垣:駄目ですか。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:うん。でも、もう一つにならないと、いかんことは分かっているね?                                   
A子:それもまだよく分かんない。                                   

稲垣:まだよく分からないの?                                   
 
A子:うん。でも、分かんないだけじゃなくなった。                                   

稲垣:うーん。やっぱり、大人のあなたと一つになるのが本当だということは分かる?                                   
A子:それはまだよく分かんない。                                   

稲垣:よく分からない? 一つにならないといかんのです。そんな離れ離れはおかしいんです。元々一つなんだもん。                                      
                                      
A子:そう。                                   

稲垣:元々あなたは、一つになってたんだよ。                                   

A子:そうなの?                                   

稲垣:そこから切り離されて、取り残されちゃったわけ。なぜかと言ったら、子どものあなたが、あまりにも悲しい思いをし過ぎたから。                                    
                                      
A子:そうなのかなぁ。                                   

稲垣:耐えられないからね。そうなんだよ。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:だから、もう大人になっているあなたと、一つになって欲しいってわけ。                                   
A子:好きなものが欲しい。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:好きなものが欲しい。                                   

稲垣:好きなもの?                                   

A子:ずっと分かんないばっかで、辛かったから、好きとか嫌いが欲しい。                                   
稲垣:好きとか嫌いか。欲しいってどういうこと、どうすればいいの?                                   
A子:分かんないじゃない気持ちが欲しい。                                   

稲垣:あー、分かんないじゃない気持ちか。それは簡単なことで、思ったことを思った通り口に出せばよろしい。                                       
                                     
A子:うーうん。                                   

稲垣:嫌なものは嫌。                                   

A子:分かんないんだ、それが。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:それが、分かんないんだ。                                   

稲垣:そう言うことが、許されなかったのかな。                                   

A子:うーん、分かんない。                                   

稲垣:自分の気持ちを素直に出すことを。                                   

A子:分かんない。                                   

稲垣:それで、あなたは、分かんなくなっちゃったんだよ。                                   

A子:うーん、分かんないことだけしか分かんない。                                   

稲垣:だからね、大人のあなたと一つになると、そういうことを、大人のあなたがやってくれる。                                   

A子:今、なんか好きなものが欲しい。                                   

稲垣:好きなものが欲しい?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:好きなものって何かな。                                   

A子:分かんないんだそれが。                                   

稲垣:分かんないの?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:今、私はあなたのね、額に手を置いてるよ。                                   
 
A子:うん。                                   

稲垣:これはあなたのことを本当に大事にしようという、そういう気持ちの表れですよ。                                   

A子:そーう?                                   

稲垣:だからそれを、あなたが受け入れてくれたら、あなたが一番今までお母さんにしてもらえなかったことだろうと思う。                                    
                                      
A子:ご飯なんか、好きなものが知りたい。                                   

稲垣:お母さんの?                                   

A子:違う。私が、何が本当は美味しいと思うか知りたい。                                   

稲垣:一番美味しいのはきっとね、あなたを認めてくれるね、男性とめぐり会うことかな。                                   

A子:なんで?                                   

稲垣:それは、あなたをきっと可愛がってくれるからだよ。                                   

A子:ご飯だよ、ご飯。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:ご飯が食べたいんだよ。                                   
  
稲垣:ご飯が食べたいの?                                   

A子:美味しい、どれが美味しいご飯か知りたいの。                                   

稲垣:うーん。だったら、あなたが、大人の自分と一つになるのが一番いいよ。                                   
A子:それは、やだ。                                   

稲垣:そして、大人のね、あなたが、美味しいもの食べてくれれば…。                                   
A子:ご飯が食べたい。ご飯が食べたい。                                   

稲垣:それは、あなたが、食べたことになるもん。一つになれば。                                   
A子:うーん。                                   

稲垣:でも、離れ離れになってれば、そんなこと出来ないに決まってるでしょ。                                   
A子:美味しいご飯が知りたーい。                                   

稲垣:美味しいご飯は、一つになって、大人のあなたに、食べて、食べてってお願いすれば、食べてくれるよ。そしたら一つになってるから、当然あなたが…。                         

A子:それは出来ないから、今、知りたいんだ。                                   

稲垣:今、知りたいの?                                   

A子:うーん。                                   

稲垣:うーん。どうしたらいいのかな。                                   

A子:ご飯食べたい。                                   

稲垣:(笑いながら)ご飯食べたいの。あまり食べさせてもらってないことがあったの?                                   

A子:うーうん。でも、お母さんのご飯、あまり好きじゃなかった。                                   
稲垣:ほーう。                                   

A子:どれが美味しいのか分からない。                                   

稲垣:分からないの?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:でも私に言わせると、あなたが、大人の自分と一つになれば、大人の自分が食べてくれるから、それはそのまま、あなたが食べたことになるんだよ。                               

A子:でも大人の人もね、ご飯よく分かんないと思って、いつも食べてるね。                                   
稲垣:そうかな。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:へー。美味しいのが分からないの?                                   

A子:どれもおんなじ。                                   

稲垣:(笑いながら)どれもおんなじ?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:それちょっと変だね。                                   

A子:変じゃないよ。                                   

稲垣:何で?                                   

A子:どれもおんなじだから。                                   

稲垣:あなたが、そういうふうに仕向けているんじゃないの?                                   

A子:うーうん。だから、なにが美味しいのか知りたいの。                                   

稲垣:うん。そーうかなー。                                   

A子:美味しいやつ。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:美味しいやつ。                                   

稲垣:美味しいやつ?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:じゃあ、あなたは、大人のあなたの中に、別個の存在って分かるかな。別個の存在としていてね、離れ離れになっちゃっているから、分からないんだろうと思うよ。        

A子:私が思い出さないと、きっと大人の私も、思い出さないと思う。                                   
稲垣:そうかなー。                                   

A子:うん。今は美味しいものが食べたいの。                                   

稲垣:だからあなたは、じゃあ、大人のあなたになってるのがいるんだけど、その者が美味しいものを食べたら、あなたに伝わるかな。                                      

A子:うん。                                   

稲垣:うん。そしたらもうあなたも、美味しいってのが分かるから、いつもそれを普通に味わえるように大人のあなたと一つになってくれる?                                                                                         
A子:出来ない、それはー。                                   

稲垣:出来ないの?                                   

A子:うん。どうしても出来ないんだー、まだ。                                   

稲垣:まだ、出来ないのね。                                   

A子:うん、まだ出来ない。                                   

稲垣:いずれは出来るね。                                   

A子:いつか、きっとまた、おじちゃんがやってくれる。                                   

稲垣:うーんまあ、それだけ頼りにされればやってあげるけど、でもあなたもね、やっぱり大人の自分と一つになれるように努力しなけりゃ駄目だよ。                                   

A子おじちゃんがしてくれたから、分かってき始めたー。でも今は、まだ出来ない。                                   
稲垣:まあいいわ。今やれっていうことは、しつこく言いません。                                   
A子:うん。                                   

稲垣:でもね、ちゃんとね自然に、一つになってくれるのを待ったほうがいいかな?                                   
A子:うーうん。おじちゃんがやんないと出来ない。                                   

稲垣:ははは。そんなことないよ。あなたが努力すればいいんだよ。                                   
A子:無理だね。                                   

稲垣:無理じゃないね。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:寂しくないの?                                   

A子:うん。もう今日はおじちゃんが、色々してくれたから、すごくいい。なんかいい。                                   
稲垣:うーん。どうしても今日は一つになってくれないの?                                   

A子:うーん。                                   

稲垣:じゃあまた、そういう気になったらおいでなさい。                                   

A子:うん。おじちゃんありがとう。                                   

稲垣:まあ、お礼を言ってもらうのも嬉しいんだけど、おじちゃんが嬉しいのはあなたが大人にね…。                                   
                                      
A子:また来るから。                                   

稲垣:あなたと一つになることだよ。                                   

A子:うん。分かった。                                   

稲垣:それになってくれないともう、おじちゃんも悲しくなる。                                   
A子:約束する。                                   

稲垣:約束ができるね、そしたらまあ今日のところは、無理をしないで… 。                                  
A子:お願いがある。                                   

稲垣:何ですか?                                   

A子:大人の私が、こっちの今の私が好きなものを食べたら分かるようにして欲しい。                                   
稲垣先生:うーん、どうしたらいいかなそれはね。今あなたはね、大人の私とね心、心って言っちゃいかんな、大人の私と別々になっちゃてるけど、そして今、催眠状態って中であなたが出てきているんだけどね、催眠から覚めた後で、大人のあなたにそう言っとくわ。  美味しいものは、美味しいように食べてちょうだいって。                                 

 A子:うーん。                                   

稲垣:そうすると、それが、あなたに伝わっていくはずだよ。分かれてはいるけど元は一つなんだからね。                                   
                                      
A子:うーん。                                   

稲垣:あなたにも、伝わるはずです。ね。そしてあなたも、美味しい味を分かって、こんな面倒くさいことをしなくても、一つになったほうがいいわ、という気持ちになって来ると思うよ。                                   

A子:うーん。                                   

稲垣:うん。だって、それおかしいんだもん。一つでないことが、おかしいんだよ。                                   
A子:分かんない。                                   

稲垣:うーん、それは、あなたには分からんかもしれない。でもそれが普通ですよ。                                   
A子:ふーん。                                   

稲垣:こんなふうにね、一人の中で二つもね、大人の自分と子どもの自分が、分かれ分かれになってるって、おかしな話でね。                                       
                                      
A子:うーん。                                   

稲垣:でも、あなたは、やっぱりそういうふうにして、なんかお母さんに、うーん。                                   
A子:お母さんの悪口?                                   

稲垣:可愛くない、みたいなことを言われ続けたのかな。駄目な子だってね、それで悲しかった。滅茶苦茶にね。                                   
                                          
A子:分かんない。                                   

稲垣:だって、さっき涙こぼしたんだから、分かんないはずがないでしょ。                                   
A子:うーん。                                   

稲垣:そういったところが、可愛くないんだよ、私に言わせると。ふふ。すぐ…。                                   
A子:お母さんも、同じこと言ってた。                                   

稲垣:そうでしょ。そういうこと言うはずだよ。言われちゃうよ、分かんない、分かんないって言ってたら。                                   
                                      
A子:でも、分かんないんだもん。                                   

稲垣:でも一番悪いのはお母さんだよ。はっきり言ってね。そんなふうにね、娘が自信を無くするようなことを言っちゃ駄目なんだよ。だって、娘にとってはお母さんはもう絶対の存在だからね。そういう絶対の人から、あなたは駄目な子だって言われたらね、やっぱり 傷付いちゃうね。その傷が相当深かった。だから、あなたは分離しちゃったの。本当なら大人の自分と一つで、一緒に成長していかないかんのにね、離れ離れになっちゃったの。   だから、今こうやってあなたは出てきちゃったわけだよ。                                 

A子:(小さい声で)死にたい。                                   

稲垣:あー?                                   

A子:死にたい。                                   

稲垣:何?                                   

A子:死にたい。                                   

稲垣:死にたい? 誰が死にたいの?                                   

A子:私。                                   

稲垣:子どものあなたが死にたいの?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:うん。でもあなたが死んだら、あなたに繋がっている大人のあなたも死んじゃうことになっちゃうよ。                                   
                                      
A子:知ってるよ。                                   

稲垣:うん。それはまずいでしょ。それは止めたほうがいいな。                                   
A子:うーーん。                                   

稲垣:まだまだ、色々楽しいことが待ってるに違いないから。                                   

A子:楽しいことって?                                   

稲垣:そんなことなんか、今分かるはずがないでしょ。未来のことなんか誰にも分からない。                                   

A子:今、楽しくない。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:今、楽しくない。                                   

稲垣:楽しくなるように、大人のあなたと一つになりなさい。                                   

A子:それは、まだだと思う。                                   

稲垣:じゃあ、取りあえずね、あなたは本当は悪くなかったことをね、それは分かったでしょう。                                       
                                      
A子:まだ分かんない。でも、分かんないだけじゃない。お母さん、ひょっとしたら、お母さんも、悪かったのかもしれない、ということだけ分かった。                                   
                                      
稲垣:そこはよく考えてくださいね。うーん。だって、大人と子どもの関係ではね、それはお母さんが悪いに決まっているわ。                                   
                                      
A子:でも、お母さんは正しいから。                                   

稲垣:お母さんは、そうやって言うかもしれないよ。でも、子どものあなたは、お母さんのようにね、色々経験してないから分からないだけです。お母さんの間違いも分からない。全部正しいと思い込んでるだけだよ。                                                                      
A子:そうなのかなー。                                   

稲垣:そうなんだよ。どこかであなたは、お母さんはおかしいなとは思ってたはずだよ。でも、そんなこと言えないもんね。言ったら余計嫌われちゃうでしょ。                         


A子:うーん。                                   

稲垣:だから、嫌われたくないから、じーっとあなたは我慢していたわけ。それがね、余りにも辛くて、大人になりそこねて、今みたいの子どものままでね、大人になっていくことから取り残されているんだよ。                                  

A子:ふーん。                                   

稲垣:そういうことだよ。だから、まず大人のあなたと一つになりましょう。あなたは、大人になってるんだから。本当は。                                   
                                     
A子:うーん。                                   

稲垣:あなたが、残っちゃったことがおかしいんだからね。あなたが、一つになろうと思ったらなれます。必ずなれるよ。                                   

A子:じゃあね、それもまた、おじちゃんにやってもらう。                                   

稲垣:えー?                                   

A子:また、おじちゃんがやる。                                   

稲垣:はは。まあ、いいや。それはね、あなたに任せる。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:でも、もう、自分は駄目だ、駄目だって、大人のあなたに言っちゃあ駄目だよ、そんなことは。それはやめたほうがいい。大人のあなたはとてもね、あのスタイルの良い女性にね、成長しているんだから。                                    
                                      
A子:本当かなー。                                   

稲垣:本当だよ。嘘はつきません。                                   

A子:ふーん。                                   

稲垣:男性から見たら、とても魅力のある女性に成長してるんだから、その大人の女性になっているあなたにね、子どものままでいるあなたが、駄目だ駄目だって言い続けるから、大人のあなたも、駄目だって思っちゃってるわけよ。                                                            
A子:うーうん。お母さんだよ。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:駄目だって言ったの、お母さんだよ。                                   

稲垣:うん、言ったのはお母さんでしょうね。でもね、そんなことは無いはず。いくらそれをね、大人のあなたに言ってもね、やっぱり大人のあなたも、なかなかそれを信じようとしないね。                                   
                                   
A子:うん。                                   

稲垣:それはあなたのせいだよ。あなたが悪い。                                   

A子:おんなじだから。                                   

稲垣:だから一つになって欲しいの。                                   

A子:言ってること分かるけど、今は出来ない。                                   

稲垣:うーん。はい。同じこと繰り返ししても仕方がないから、時間の経つのを待ちます。そしてあなたのほうにね、もうそろそろ一つになろうかと、そういう気持ちがだんだん湧いてくるきっと。それを待ちましょう。                               
                                    
A子:うーん。                                   

稲垣:じゃあね、これから三つ数えたら、またあなたは魂の表層に現世の者がいて、そこからあなたが出て来てるんだから、その本来のあなたのいる場所へ戻りましょうね。   

A子:うーん。                                   

稲垣:出来たら、大人のあなたと一つになっちゃうといいけどね。そういうこと出来ない。なれないならなれないで、まあ、また、あなたを呼び出して、お話して納得しても    らおうかな。じゃあ、もう今日のところは戻ってくれますね。                              
                                   
A子:うん。                                   

稲垣:じゃあ三つ数えたら、魂の表層にいる、現世の者の中に戻ってくださいね。じゃあ、 三つ数えますよ。一つ、二つ、三つ。はい。さあ、今あなたは魂の状態にあります   から、これからね、あなたの場合は催眠の感受性がとても高いので、ひょっとしたら魂が 肉体から分離してちょっとずれたり、肉体の外へね、浮かび出してる可能性があるので、これから五つ数えて催眠から覚めてもらうんだけれども。                             
   
A子:まだー。                                   

稲垣:まだー?                                   

A子:まだもうちょっと。                                   

稲垣:もうちょっとどうしたいの?                                   

A子:何か聞いて欲しかった気がする。                                   

稲垣:もうちょっと聞いて欲しいの?                                   

A子:うん。いきりょう、生き霊のこと聞いて欲しい。                                   

稲垣:うつ病のこと?                                   

A子:生き霊。                                   

稲垣:あっ、生き霊か。生き霊がいるかどうかってこと?                                   

A子:今いるのか、もういないか。                                   

稲垣:ふーん。そんなのすぐ分かるよ。                                   

A子:本当? 何で死にたくなるまでなったのか怖い。何で死にたくなるまでに至ったのか、理由が分からなくて怖い。                                  

稲垣:死にたくなった?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:それはひょっとして、インナーチャイルドのあなたのせいじゃないの。                                   
A子:違う。                                   

稲垣:他になんか原因がありそう?                                   

A子:あった。それが知りたい。                                   

稲垣:その死にたいようなことを考えさせている者が、ひょっとしたら、あなたに憑いていたかもしれんね。                                   
                                     
A子:うーん。何が原因か分からないから知りたいです。                                   

稲垣:ひょっとしたら、ご先祖に関わっているかもしれないからね。それ聞いてみようか。                                   

A子:色々聞いて欲しいです。                                   

稲垣:じゃあ聞いてみましょう。いいですか。ご先祖の中で、ご先祖というのはあなたの母方も父方も含めてご先祖ですが、そういう方の中でね、未浄化霊として苦しんでいて子孫であるこの者にね、死にたくなるような気持ちを引き起こしている、そういうご先祖の未浄化霊がおいでになるなら、出ておいでなさい。または、ご先祖以外の霊的存在であっても死にたくなるような気持ちを引き起こしている存在、三つ数えますからね。この部屋は私が許可しない限り、結界が張ってあるから、入って来れませんが、特別許可しますから、この者に憑依していいですよ。じゃあ三つ数えます。一つ、二つ、三つです。         

A子:あーーっ。                                   

稲垣:ああ。どなたか憑依されたのですか?                                   

A子:なに、なに、うーん?                                   

稲垣:あなたがそうなの?                                   

A子:(戸惑っている様子)分からん、ん、な、な、何で私が来たんだ。                                   
稲垣:そんなこと、私に分からないよ。私が、この者に死にたくなるような、うつの状態を引き起こしていることに、関わっているそういう霊的な存在がおいでになるなら憑依してくださいってお願いしたの。それがあなたでしょ。                                                 


A子:うん。うーーーん。うーーん?うーーーん。                                   

稲垣:あなたは肉体持ってないでしょ。                                   

A子:えーっ?うーーん。ちょ、うーん?うーーーん。                                   

稲垣:じゃあ、あなたはひょっとしたら、未浄化霊と呼ばれているそういう存在?                                   
A子:違う。それは違う。                                   

稲垣:違う? じゃあ、どういう存在ですか?                                   

A子:分からない。                                   

稲垣:分からないんだ。                                   

A子:うん。                                   

稲垣:分からないという存在だ。                                   

A子:呼んだ。誰が呼んだ?                                   

稲垣:私が呼んだ。                                   

A子:何で呼んだ?                                   

稲垣:だってこの者が苦しんでいるからですよ。あなたは今、憑依している。                                   
A子:この者って誰?                                   

稲垣:この者はこの者。あなたが憑依している者ですよ。あなたが喋っているのは、この憑依されているこの者のね、声帯と舌を使って喋っているんですよ。                                   
A子:うーん。                                   

稲垣:で、憑依するということはね、あなたは、肉体を持っていないはずだよ。                                   
A子:うーん? いや、肉体はあるはず。                                   

稲垣:どこにあります?                                   

A子:分からない。                                   

稲垣:分からない? そんな馬鹿なことはないよ。                                   

A子:誰が呼び出したの?                                   

稲垣:私です。                                   

A子:何の目的で?                                   

稲垣:あなたが、憑依しているこの者がね、死にたくなるようなうつの状態になって… 。                                  
A子:こいつは、死んでもいいんじゃなーい?                                   

稲垣:そのためのね、そういう原因を引き起こしている者がいるなら、出ておいでなさいって言った。                        
                                     
A子:だって邪魔だから。                                   

稲垣:そしたら、あなたが出て来たんだよ。                                   

A子:うん。目障りなんだよね。                                   

稲垣:誰が?                                   

A子:うーん、こいつが。                                   

稲垣:なんで目障りなんですか?                                   

A子:目障りなものは目障り。とにかく目に映ると邪魔くさいから、私の目の前から消えて欲しいって思う。                                    
                                     
稲垣:ほーう。じゃあ、あなたってあれかな、生き霊か。誰かの。                                   
A子:うーーん。そうなんじゃないかなーー。                                   

稲垣:そうなんじゃない。ひょっとしたらこの者のね、会社の人間ですか?                                   
A子:そうだよ。                                   

稲垣:あなたは。お名前を言ってごらんなさい。あなたを飛ばしている本人の。            

A子:こいつは、私のことを知らない。                                   

稲垣:じゃあ、あなたは、どういう人です?                                   

A子:会社で、こいつのことは知っているけど、こいつは私のことは知らない。                                   
稲垣:知らないの。どういう関係ですか?                                   

A子:私はこいつをよく見てた。そうだ。そう。お前は私のことなんか知らない、嫌と思っているだろうが、私はお前のことをよく知ってる。お前が、周りの男性がお前の話をしてるのが、とにかく面白くなかった。                                   
                                  
稲垣:うーん。やっぱりあなたを飛ばしているのは、同じ会社の人間だったの?                   

A子:そうだ。                                   

稲垣:うーん。この者の会社の人間、女性ですかあなたは。                                   

A子:そうだ。                                   

稲垣:えー。じゃあ嫉妬してるんだな。ね。                                   

A子:何で関わりがないくせに、関わりがない女の話をしているんだ。全く理解が出来なかった。私という人間がいるにも関わらず、何故、あのC男の部下にいるこの女の話がよく出るのか分からなかった。他にもいる。この女のことを良く思ってないってやつが一杯いる。                                                                      

稲垣:うーん。何で、良く思ってないんでしょう。                                   

A子:(笑いながら)目立つから。                                   

稲垣:あー?                                   

A子:(笑いながら)目立つからに決まってる。                                   

稲垣:目立つからあー。                                   

A子:この女は、何もしてないくせに、何でか知らないけど目立つ。とにかく鼻につく。                                   
稲垣:あー。それが嫌なんですか。                                   

A子:そりゃそう。私は綺麗なんだから。                                   

稲垣:うーん、じゃあ、あなただな。この者に憑依して…。                                   

A子:私もそうだけれども、この者をそう思っているものは、沢山いるということだ。                                   
稲垣:だけど、実際生き霊としてね、来ちゃってるのは、あなただよね。                                   
A子:私のはまだ軽いものだ。                                   

稲垣:まあ、どっちにしてもそんなことしてもらってちゃあ困るよねー。                                   
A子:もうすぐ帰る。                                   

稲垣:うん?                                   

A子:私も、多少の影響を与えている存在として、呼ばれたの出て来てしまっただけで、軽いものである。そんなに重いものではない。                                        
                                      
稲垣:うん。じゃあ、この者から離れて戻ってくれますか?                                   

A子:ただし、この女には、そういうのが憑きやすい。                                   

稲垣:うん。                                   

A子:(笑いながら)この女、嫌だけど、この女が言うには、とにかくそれを防ぐ方法を知りたいと言ってる。                                    
                                      
稲垣:この人はね、優れた霊媒体質を持ってるからね、あなたのような存在が飛んでくることをね、防ぐのは… 。                                   
                                   
A子:この女は、だからそれで、早くさっさと潰れればいいんだ。                           


稲垣:難しいね。修行するしかないかな。                                   

A子:それは、あなたの仕事なんじゃないですか。                                            
稲垣:ま、どちらにしてももう、あなたはちょっと戻って欲しいな。                                   
A子:うん。帰ろう。                                   

稲垣:帰ってくださる?                                   

A子:うん。                                   

稲垣:じゃあ、三つ数えたら、あなたを飛ばしている本人の元へ戻ってください。飛ばすとね、本人も苦しむんだよ。苦しいしね、衰弱するって言われている。決して…。   

A子:私は美しくないといけない。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:私は、美しくないといけないから帰る。戻して欲しい。もう、そもそも呼ばれたくもなかった。                                           
                                      
稲垣:あっそう。じゃあ、三つ数えたら戻ってくださいね。はい、一つ、二つ、三つですよ。はい、OKですね。
さあ、ここまでにしときましょうか。ね。多分、死にたくなるような鬱状態を表出させていたのは、どうも生き霊せいも、あったね。                                               

A子:どうにかしてください。                                   

稲垣:えっ?                                   

A子:どうにかしてください。何かうまく生き霊を防ぐ方法を伝授して欲しい。こんなに一杯来てたら困る。                                   
                                      
稲垣:うーん。どうするかなー。ちょっと試してみましょうか。何をするかというとね、不動明王の真言を、あなたの霊体にね、これから入れて、バリアを張ります。不動明王の真言というのは、未浄化霊も含めて、よろしくない霊をね弾き飛ばす力があると言われていますからね。じゃあこれから、あなたの脳天チャクラから不動明王の真言を唱えて霊体全体にバリアを張り巡らします。                                                           
耳なし芳一の話知ってるかな、耳なし芳一はね、体中にね般若心経を墨で書いて、悪霊の目から見えないようにしてね、逃げようとしたわけだけど、結局耳だけ般若心経の文字を書くの忘れて、で、悪霊に耳をちぎられちゃったって話です。
そんなことにならないように、霊体全体にねバリアを張るようにしますからね。    最強の仏さまである不動明王の真言は、「のうまくさんまんだー、ば ーざらだんせんだ、まーかろーしゃーだ、そわたや、うんたらたーかんまん」です。この真言を念じながら、よろしくない霊的存在が、あなたの霊体に憑依できないようにこれからバリアを張っておきます。               

(脳天に手をかざしながら、5分間不動明王の真言を繰り返し唱える)                   

OK!さあ、これであなたのね、霊体全部に、不動明王の真言を唱えて、バリアを張りましたから、大丈夫です。じゃあ、五つ数えたら催眠から覚めましょうね。                        一つ、さあ少し覚めてきた。二つ、どんどんどんどん覚めてきますよ。二つ、どんどんどんどん覚めてきますよ。三つ、さあもう半ばまで覚めましたよ。四つ、さあもう少しで覚めます。覚めたらとってもすっきりしているはずです。どうやらね、あなたに、死にたくなるような鬱の状態を作っているのは、昔からいたインナーチャイルドそのせいです。それと、今出て来たあなたの勤め先の会社の女性の生き霊のせいです。死にたくなるほどのね、そういう気持ちを引き起こしてきたに違いないと思うけど。生き霊の元のね、飛ばしている本人の所に戻ってもらったし、またあなたの所へ飛んで来てもね、不動明王の真言でバリア張ってますからね、もうあなたに憑依することが絶対にできません。大丈夫です。さあ、完全に覚めますよ。はい五つ、さあ、催眠からすっかり覚めました。          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(セッション終了 )                              

覚醒後、A子さんが言うには、自分の中にインナーチャイルドがいるなんて、まったく信じてはいなかった、と断言しています。                               
そして、セッション1ヶ月後の現在、死にたくなるなるような抑鬱状態は改善され、気持ちは順調に回復に向かっているという報告を受けています。

こうした結果から、少なくともこの事例において、SAM催眠学の仮説によるインナーチャイルド療法は成り立つものと評価してよい、と考えています。

さて、ここに紹介したインナーチャイルド療法の事例は、臨床心理学的、催眠学的にどのような解釈の可能性があるのでしょうか。

 前提として、催眠誘導前の、初回、および今回の面接でも、日常生活においても、A子さんには統合失調症、境界性人格障害などによる被害妄想や幻聴などの精神疾患の兆候がないことを確認しています。

また、これまでにおこなっているインナーチャイルド療法6事例のうち、5事例のクライアントに顕現化したインナーチャイルド人格は、口頭で対話できました。
「魂状態の自覚」に至って、口頭での対話が可能であるのは、霊媒体質の持ち主であることが分かっていますから、A子さんは霊媒体質であると判断できます。

また、セッションの終わりに近い段階で、インナーチャイルドと交代して、会社同僚の女性が飛ばしていた生き霊が憑依していたことから、A子さんが憑依体質であることも判断できます。

こうした前提のもとに、インナーチャイルドの顕現化現象と私との対話を、「幼い頃のトラウマないし悲哀の記憶の抑圧の解除」という、精神分析の理論でとらえることは可能でしょうか。

催眠下で起こる「要求特性」によって、A子さんが抑圧してきた「子どもの頃の悲哀の記憶」を想起し、それらの記憶をもとに、彼女が「架空のインナーチャイルド人格を創作し、それに仮託して語っているフィクションだ」という解釈は、私が強引にそのような創作誘導の暗示をしていない限り、かなり不自然な解釈のように思われます。
催眠下では作為による創作は否定されます。
彼女が知覚催眠レベルの催眠に入っていたことは、標準催眠尺度によって確認しています。

ちなみに「要求特性」とは、催眠中のクライアントが、セラピストの要求していることを無意識的に察知し、それに応えようとする心理傾向のことです。

あるいは、「要求特性」によって、A子さんが架空のインナーチャイルド人格を作り出し、あたかも、その人格としての無意識的な役割演技をしている、という催眠学上の「人格変換現象」だ、と解釈することも、A子さんの「インナーチャイルドをまったく信じていなかった」という断言からすると無理な解釈のように思われます。

また、インナーチャイルド人格は、明らかに現在進行形の対話をしていますから、A子さん自身が、幼い頃のトラウマの「過去の記憶」を想起して、インナーチャイルドとして語っているという解釈も否定できます。

ナラティブセラピー(物語療法)という心理療法があります。
クライアントが、自分で自分の人生を語りながら、問題点を見つけたり、自分の過去の物語をとらえ直したりすることで、自らを再生していこうというものです。
「ナラティブ」とは「語り」という意味ですから、A子さんが自分を、架空のインナーチャイルド人格に仮託し、退行しての「語り」だという解釈をすれば、ナラティブセラピー的説明ができる一面はありますが、事実は似て非なるものです。
インナーチャイルド療法の仮説と、ナラティブセラピーの仮説の共通点はまったくありませんし、クライアントに催眠を用いるかどうかという点でも決定的な違いがあります。


逐語録で注目すべきことは、たとえば、インナーチャイルド人格は、私のことを何度も「おじちゃん」と呼んでいることです。
A子さんは、私のことを「先生」以外の呼び方をしたことは一切ないのです。
さらに、大人になっているA子さんを、別人格のように対象化して、「こいつ」と呼んでいることです。

こうして、顕現化したインナーチャイルド人格の、口調や表情や落涙の様子を観察した限りにおいて、幼い少女そのままの人格でしかなく、30代後半の年齢のA子さんに、とてもこのような無意識的演技が可能だとは思われません。
 このことは、「タエの事例」で、前世人格「タエ」が、50代になろうとしていた被験者里沙さんに顕現化したときの状況観察と重なるものでした。
里沙さんの口調や表情は、明らかに16歳のタエそのままの人格を思わせるものだったからです。


したがって、逐語録で確認できる、A子さんにあらわれた「意識現象の事実」は、インナーチャイルドが、「耐えがたい悲哀の体験をしたために傷つき、大人の人格へと成長していく本来の人格から分離(解離)され、取り残された子どもの残留思念の集合体であり、意志を持つ別人格としての属性を備えて形成されたもの」の顕現化である、と現象学にとらえることが妥当ではないでしょうか。 
そして、こうした仮説による6事例のセッションで、現に改善効果が実証されています。


you-tubeで公開している「タエの事例」のタエ、「ラタラジューの事例」のラタラジューの二つの前世人格は、魂状態での呼び出しによって、魂表層から顕現化した前世人格であり、完璧ではないものの、その存在がほぼ実証がされています。

同様のSAM前世療法のセッション手続きによって、A子さんの魂表層の「現世の者」に内在しているインナーチャイルド人格が、呼び出しに応じて顕現化したのは、SAM催眠学の「残留思念仮説」に立てば、当然の現象だと考えることができるのです。

しかし、現時点では、インナーチャイルド人格の存在は、状況証拠と改善効果をもって、間接的な実証とするしかないだろうと思います。

 SAM催眠学が探究している、催眠下の「魂状態の自覚」において確認してきた前世人格・インナーチャイルド人格・生き霊・未浄化霊などの霊的人格の顕現化現象は、「魂状態の自覚において立ち現れる意識現象の事実」の謎として、どこまでも尽きることがありません。
同時にそれは、「人格」の成り立ちの大きな謎でもあります。

生まれ変わりの科学的研究の泰斗であった、バージニア大学イアン・スティーヴンソン博士が、自分の研究室を「人格研究室」と名付けたのは、こうした意味合いがあったからだろうと思われます。
私も、前世人格・インナーチャイルド・未浄化霊・生き霊などの霊的人格が、クライアントの心理的、肉体的健康に及ぼす影響を探究する意味で「メンタルヘルス研究室」と名付けています。

そして、「いかなる霊的意識現象も先験的に否定せず、いかなる霊的意識現象も検証なくして容認せず」というのが、SAM前世療法で立ち現れる不思議な「意識現象の事実」の謎に対する私の基本的思考態度です。

私の実証的探究の公開目的の第一義は、霊的諸意識現象のできる限り確実な客観的証拠を示すことにあり、私が催眠臨床で実体験してきたそれら諸証拠の解釈について、考えられる限りの可能性のすべてを厳密に検討され、得心のいく自分なりの妥当な結論に到達していただくことにあります。

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注: SAM催眠学用語の「魂」や「霊」は、宗教的意味を一切含みません。
便宜上の概念として、「魂」とは、肉体という器に入っている「霊」を意味します。
「霊」とは、「肉体を持たない人格的意識体」を意味します。
したがって、肉体という器を失えば、「魂」を「霊」と呼び換えることになります。
こうした用語の概念によって、香典袋の表書きを「御霊前」とするのは理に適っていると思われます。
霊も、魂も、本質は同じであり、肉体という器の有無によって呼び方を換えているだけだ、と定義しています。
したがって、SAM催眠学の定義では「霊的意識体」とは、「肉体を持たず一個の人格としての属性を帯びた意識体」のことを指します。
こうした人格の属性を帯びた意識体を、人格として見做して扱いますから「見做し人格」と名付けようと思います。
ただ、その霊的意識体の本来存在する居場所によって、「インナーチャイルド」・「前世人格」・「生き霊」・「未浄化霊」・「高級霊」・「守護霊」・「ガイド」などのように名称が変化するということです。
「インナーチャイルド」・「生き霊」・「未浄化霊」は霊ではなく残留思念の集合体だと考えますから「見做し人格」だということになります。

ちなみに、私の守護的存在は「ガイド」を名乗っています。
「ガイド」とは、生まれ変わりを経ないで霊界で霊性の進化を遂げた守護的存在、「守護霊」とは、生まれ変わりを経て霊性の進化を遂げた守護的存在、という名称状の便宜的区別をしている、と私あて霊信が告げています。
「守護霊」も、「ガイド」も、「守護的存在である霊」という意味では、本質は同じだということです。
また、「守護霊」は、霊的真理を広める使命を与えられ、再び地上の人間に生まれ変わることがある、とも告げています。
実際、クライアントの前世のうちに、「守護霊」であった者が十数名確認されています。


SAM催眠学では、これまでのSAM前世療法セッションで確認してきた「意識現象の事実」の累積から、霊的意識体の存在を認めています。

SAM催眠学の「SAM」とは、soul approach method の略であり、つまり、SAM催眠学は、「魂状態に接近するSAM前世療法」によって、「魂の自覚状態」へと導き、そこで起こる、前世人格をはじめとする霊的意識体の顕現化諸現象を、科学的方法論で検証・探究し、体系化した理論へと構築する、潜在意識の深層レベルの「催眠学」を目指しています。                    

明治時代の末に起きた、東大の催眠研究者であった福来友吉博士の「念写実験」が、インチキの疑惑ありとされた事件が起こって以後、日本の催眠学(アカデミズム)は、超常現象の探究をタブーとしてきました。 

SAM催眠学は、これまでの催眠学が、非科学的だとして排除してきた、催眠中にあらわれる「霊的領域の諸現象」の探究に、在野の臨床催眠実践者の立場から、光を当てようとするささやかな試みです。