2018年7月20日金曜日

元妻に憑依した夫の生き霊との対話

     SAM催眠学序説 その115

    「生き霊」との対話セッション逐語録


「生き霊」の真偽について科学的検証、証明は不可能だと思われます。
生き霊を飛ばすという行為は意図的におこなわれることより、多くは無自覚のうちに飛ばしているらしいことが言われているからです。
そうなると、無自覚に生き霊を飛ばしている当事者本人に「あなたはA子さんに生き霊を飛ばしていますか?」などの確認の検証をすることは無意味に違いありません。

また、生き霊は、意識体ですから、その意識現象としての憑依を科学機器による映像化や計測化もできず、科学機器による憑依の検証や証明はできません。 
できることは、状況証拠を慎重に考察し、その累積から共通項を抽出して間接的な証明をすることしかないと思われます。

生き霊とはいかなる意識体か。
SAM催眠学では次のように暫定的な定義をしています。

生き霊とは、「耐えがたい嫉妬の体験をしたために、魂表層の『現世の者』から分離した嫉妬の思念の集合体であり、意志を持つ人格としての属性を備えたもの」である。

したがって、生き霊とは、意志を持つ人格として見做される「見做し人格」と言えるでしょう。

この定義によるSAM前世療法のセッションの目的は、生き霊をクライアントに顕現化させ、生き霊との対話をおこなうことによって説得し、納得させ、生き霊を飛ばしている本体である「現世の者」に統合させることです。
その結果として、生き霊の憑依がおさまるであろう、と考えることが、生き霊療法の治癒仮説です。

そして、生き霊の憑依が起きているのではないかと推測されるような、体調の悪化や情緒不安定、憑依様の人格変化などの原因不明の意識現象・身体現象が、少数ながら確かにあるようです。
単なる思い込みや憑依妄想では解釈できない霊的現象があるようです。

ここに紹介する「生き霊との対話セッション逐語録」は、生き霊という「意志を持つ人格としての属性備えた意識体」の存在の信憑性が強く示唆される事例です。

●生き霊の憑依という「霊的意識現象の事実」を認めることが、著しく臨床的直観に反することはなく、

●生き霊の憑依という「霊的意識現象の事実」を認めることが、特に不合理な結論に帰着することはなく、 

●生き霊の憑依という「霊的意識現象の事実」が、これまで知られている脳の特性(心・脳の一元論)から考えるとどうしても説明できない超常現象だと認めざるをえない、

と判断できると思われる事例です。

いかなる霊的意識現象も先験的に否定せず、いかなる霊的意識現象も検証なくして容認せず」というのが、SAM前世療法で立ち現れる「意識現象の事実」に対する私の思考態度です。

さて、クライアントのS子さんは、現在派遣社員をしている2年前に離婚した30代の女性です。
離婚を決断したのはS子さんの方からで、離婚を渋る夫のもとを去り別居しました。
その結果、夫は渋々離婚に応じました。
離婚後、よき友人関係でいようと度々会っていましたが、それもうまくいかないと断念し、1年後には完全に関係を断絶しました。

その後、しばしば「生き霊」ということばを聞くだけで、わけもなく涙が出る、同時に体調不良に陥ることが起こるようになったそうです。
このような現象は、別れた夫の生き霊のせいではないかと感じるので、セッションを依頼したい、というかなり追い詰められた様子でした。
ちなみに、S子さんは霊的感受性が敏感で、すぐれた霊媒体質の持ち主だと思われます。

このセッションは、S子さんの希望で録音記録をとることを許可しました。
その録音記録を起こしたものを送付していただいたので、S子さんの許可を得て、SAM催眠学研究の一環としてここに紹介することにしました。

生き霊との対話セッション逐語録のような、生き霊が対話するという顕現化現象そのものが録音され公開されたことはないと思われます。
この対話は、SAM前世療法を用いた「生き霊祓い」のセッションでもあり、その意味でもきわめて貴重な記録です。

霊的意識現象の探究のため、公開を許可いただいたS子さんには、この場を借りてあつくお礼申し上げます。

以下は、SAM前世療法の催眠誘導手続きによって、S子さんが「魂状態の自覚」に至ったことを確認後の対話逐語録です
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
稲垣:さあ、これから3つ数えます。S子さんに飛ん来ているらしい「生き霊」の憑依を許可します。
私は生き霊と話したい。きっと生き霊も苦しいと思う。体の変調が起きているS子さんも苦しんでいる。
お互いの苦しみを解消するために私は生き霊と話したい。
一体どなたの生き霊なのか知りたいし、一体なぜ飛ばしているのか知りたい、そして理解し、癒やしてあげたいと思います。
そして、出来るならば生き霊を飛ばしていいるご本人の魂表層に戻ってほしいと思います。

じゃあ暗示しましょうか。貴方はいま魂状態にありますから、これから三つ数えたらあなたの意識は脳から完全に分離しますよ。一つ、意識が脳からドンドン離れていきます。二つ、よりいっそう意識は脳から離れ広がっていきます。三つ、あなたの意識は完全に脳から離れました、脳の管理下を離れ完全に自由になったのです。
じゃあ、これから三つ数えたら、そういう魂状態では霊的意識体が憑依することが可能になっているはずです。
そしたら生き霊はこの者の声を借りて、自分の存在やら苦しみを訴えることが可能になっています。
つまりこの者が霊媒として働いてくれるはずですよ。
じゃあいいですか、S子さんに飛んできている生き霊がいるなら(S子:あぁ…)これから三つ数えたらこの者に憑依することを許可します。いいですね、
一つ、三つ、さあ三つです。
あなたは、この者に飛んできている生き霊かな?

S子:ああ、うううううう。

稲垣:苦しいことよく分かりますよ、でもそれではね、お話しできないから。

S子:はあ! はあ! うううううー、はあ! むかつく!! はああー、ふー! ふー!

稲垣:そうとう苦しいんだな、それは怒りかな?

S子:腹が立つ! ふううううううううううう!

稲垣:思いっきり…。

S子:許さない!!! ふう! ふう!

稲垣:貴方は、この者の前の旦那?

S子:まだ旦那だ! 前じゃない!

稲垣:あなたは旦那なのですか?

S子:ずっと今でも旦那だー!


稲垣:あ、今も旦那のつもりでいるのね。

S子:当たり前だ!

稲垣:でも法的には離婚が成立している。

S子:認めない!!!!!

稲垣:認めないと言ったって、それは法的には認められていますよ。

S子:(泣き気味に)そんなことがあるわけないだろうがぁ。

稲垣:苦しいんですね。

S子:(泣きながら)嫌だああ。

稲垣:それで貴方は前の妻であるこの者が恋しくてそれで苦しんでいるんだな。

S子:(泣きながら)恋しい、なんで離れていくのか分からない。こんなに好きなのに何で受け入れられないのか分からないいい。

稲垣:悲しいですね。

S子:(泣きながら)悔しい。

稲垣:悔しいですね。

S子:なぜ俺のことを受け止めないのか理解ができないい。

稲垣:ふ~ん。

S子:(泣きながら)俺は何も悪くない!悪いのはコイツなんだ、なのにそれなのにそれでも離れていく。意味が全く分からない。

稲垣:ふ~ん。そういうあなたは苦しみを持っておいでになるか。というかそういう苦しみをあなたは飛ばしている本体のね、魂の表層の現世の者が、あなたを飛ばしているはずですよね。うーん、そうですか。あなたの魂は本体…。

S子:認めない。受け入れられない。受け入れられない…。

稲垣:現世の者は受け入れられないとあなたに盛んに言わせているんだけど、でもねえ、うーん。

S子:無理だ、受け入れられない。帰って来てほしい。帰って来ない限り認めない。無理だ。

稲垣:うーん、そうですか。私が思うにはですよ、あなたを飛ばしている魂の本体の前の旦那ですね、たぶん、あまり女遊びをしていないんじゃないかなあ? 真面目で、公務員だったと聞いていますからねえ。どうですか?

S子:人並だ。

稲垣:(笑いながら)人並ですか。でも人並にも色々あるんだけどねえ。女心について色々痛い目にあったり苦しい目にあったり。

S子:女は分からない。

稲垣:分からないままでしょ。

S子:俺は俺の家族も分からない。

稲垣:分からないままでしょ。だからそれは私に言わせると、遊びと言っちゃイカンけどね、女性とのお付き合いがあまり上手じゃなかった…。

S子:俺は親父も許せなかった。

稲垣:分かるよ、それは。

S子:(泣きながら)俺は母親も許せなかった。俺は何でこんな家に生まれなきゃいけなかったのか理解できなかった。やっとコイツと一緒になって、これからだとずっと思ってたのに、俺の元を離れた、許せない! 絶対許さない!

稲垣:うーん、うーん。ただね、私のようなこういうSAM前世療法ということをしているとね…。

S子:(泣きながら)お前でも無理、俺の気持ちなんか分からない。(泣き続けている)

稲垣:それは完全に貴方の気持ちをね理解することは誰も出来ませんよ。でも悲しみは伝わってきます。感じます。理解ということではなくてね。

S子:(泣きながら)悲しいというより悔しいんだ。

稲垣:悔しいのも分かるよ。

S子:(泣きながら)俺が認められないことが悔しいんだ。(泣き続けている)

稲垣:それはよく伝わっては来ます。完全には理解できないです、貴方の本当のね苦しみや悲しみはね。ただこういうことは私は自分のね体験からハッキリと言うことが出来ますよ。おそらく貴方を飛ばしている魂本体のね、この者の旦那の二倍近く生きていますから、だから男と女のことについてはあなたよりも遥かに体験を積んでいると自信を持っています。その中で言えることはね、一旦 男と女の関係がねえ…。

S子:嫌だ…。

稲垣:嫌いということになった時。どちらかが。これはねえ、修復出来ませんよ。

S子:嫌だ…。

稲垣:一旦嫌いになった者をまた好きになるということは…。

S子:無理だ、俺は好きだ…。

稲垣:私の体験ではあり得ない。

S子:(泣きながら)俺は嫌いになれない。コイツが必要で、コイツに居てほしいから嫌なんだ…。

稲垣:でもねえ。

S子:(泣きながら)コイツが俺のことを嫌いでも、俺の傍に居てほしいんだ。

稲垣:でもねえ、S子さんは、あなたのことが耐えられない。ハッキリ私に訴えていますからねえ。

S子:(泣きながら)嫌だ。

稲垣:嫌いなんでしょうね、あなたのことが。

S子:(泣きながら)嫌だあぁ…。

稲垣:嫌いというよりあなたとは、人生を共にするだけのね、そういう深い気持ちが持てないという。

S子:(泣きながら)認めない!

稲垣:認めなくても、認めざるを得ませんよ。

S子:(泣きながら)嫌だぁ。

稲垣:それは本当に苦しいことです。私だってそういう失恋したことありますからね。

S子:(泣きながら)俺はコイツが本当に必要なんだ。行かないでほしい、帰ってきてくれ、お願いだ。(泣き続けている)

稲垣:悲しいですね。

S子:(泣きながら)嫌だ、絶対嫌だぁ。他の人なんかじゃ嫌だ、コイツじゃなきゃ嫌だあ。(泣き続けている)

稲垣:うん、でも、このS子さんは、他の男と深い付き合いは今はしていませんよ。

S子:(泣きながら)当たり前だ。俺のことが好きなはずなんだから。帰ってくるはずだ、帰って来てほしい、帰って来てくれ、もう嫌だよう、嫌だ嫌だ嫌だ、絶対嫌だ。(泣き続けている)

稲垣:うーん。

S子:(泣きながら)絶対嫌だ、嫌だ。(泣き続けている)

稲垣:絶対、嫌ですか?

S子:(泣きながら)嫌だ! 認めないぃ!(泣き続けている)

稲垣:ふーん、認めないですかあ…。

S子:(泣いている)

稲垣:ただねえ、私は、このS子さんに頼まれてねえ…。

S子:(泣きながら)帰って来て、帰って来て…。

稲垣:あなたが生き霊としてねえ、この者に憑依してきてねえ、訳もなく涙を流す、これは貴方です。

S子:(泣きじゃくっている)

稲垣:生き霊である貴方のせいですね? この者が涙を流して止まらなくなるなんていうのはね。涙を流している主体はS子さんではなくて、生き霊である貴方が主体なんですよね? あなたがS子さんの身体を借りて流しているんですよね?

S子:(泣きながら)コイツも悲しい、俺と離れて悲しいから泣いている。だからコイツが流しているんだ。(泣き続けている)

稲垣:見かけ上はこのS子さんが流しているんだけど、流させている主体はあなたですよ。

S子:(泣きながら)違う…違う…。

稲垣:あなたでしょ?

S子:(泣きながら)違う。俺のことが好きだ。コイツは俺のことが未だ好きだ。
(注0:37:02経過)帰って来なきゃいけない。俺は待ってる、ずっと待ってる。行かないで、ヤダヤダ。嫌だよう。(泣き続けている)

稲垣:あなたの悲しみよく分かるしねえ…。

S子:(泣きながら)嫌だ!

稲垣:同情はしますよお。

S子:(泣きながら)同情なんかいいんだ、コイツを返してえ! 返して、返して、嫌だ!コイツと離れたくない、絶対嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ、何が何でも嫌だあ、それだけは嫌だあ!(泣き続けている)

稲垣:じゃあね、この者との結婚生活中にねえ、なぜ貴方は生活費を渡さないようなことをしたんですか? それが大きい原因みたいですよ。経済的な問題はねえ、結婚生活の一番根本ですから…。

S子:(泣きながら)俺は最初渡さなかったから、もう渡したくなかった…。

稲垣:あなたねえ、生活費を渡さない、自分で使っておったんでしょ?

S子:(泣きながら)そうだあ。

稲垣:そりゃイカンわ、我儘ですよ。夫婦生活をやるからには、普通はですよ、私の場合は完全に…。

S子:(泣きながら)関係ない、普通は。

稲垣:はい?

S子:(泣きながら)俺は金も渡さないし、コイツも欲しい。嫌だ。

稲垣:(呆れ気味に)そりゃ我儘だな。そりゃ愛想尽かされますよ。だから結婚生活を実質この者S子さんが稼いだお金で夫婦生活を営んでた訳でしょ? で、あなたは、自分で得たお金は独り占めして遣っておった。これって、逆の立場に立ったらどう考えますか?

S子:他の奴らもそうしてた。俺がそうしちゃいけない理由がどこにあるんだ?

稲垣:それはねえ、他の奴らっていうのは貴方の知ってる狭い範囲の男たちでしょ? 世の中全般はそんなこと認めませんよ。共にお金を出し合う。そして共同でそのお金をね、夫婦生活の営みのために…。

S子:結婚してやったのに当たり前だろ。

稲垣:残念ながらね、そういう考えだからS子さんは貴方から離れた。私に言わせるとそうだ。

S子:認めない。嫌だあ。帰ってこい。(泣いている)俺に必要なんだから帰ってくるのが道理だろう。

稲垣:そういうことが当然ということはあり得ません。男と女の間には本当に心が通じ合ってね…。

S子:通じてた、通じてたあ…。

稲垣:お互いに納得してね、はじめてね生活が共にできるわけですよ。

S子:アイツが。俺は悪くない。

稲垣:自分は悪くない悪くない言ってるだけで、あなたは変わることが無いんだから…。

S子:当たり前だ変わる必要がない。

稲垣:そういう変わらないあなたをね、要するに…。

S子:認めない。

稲垣:見切りを付けたというわけ。

S子:俺のことは全て受け容れろ。

稲垣:あなたはだから、言ってみれば見切りを付けられちゃったわけよ。

S子:嫌だぁ。

稲垣:嫌でも仕方ない。男と女の感情だけは何ともなりませんからね。第三者がどう言おうが何ともなりませんから。

S子:嫌だ。

稲垣:だからもう。ふ~ん、貴方は…。

S子:嫌だ。

稲垣:S子 さんのことは…。

S子:嫌だ。

稲垣:諦めなさい。

S子:嫌だ。

稲垣:見切りを付けなさい。

S子:嫌だ。

稲垣:そして、あなたが言うように…。

S子:嫌だ。無理。嫌だ。

稲垣:言うなりになってくれる女性を見つけなさい。

S子:嫌だ。コイツじゃなきゃ嫌なんだ。

稲垣:そんなことは仕方がないことですよ。S子さんは嫌だと言ってるから。

S子:認めない。関係ない、俺が欲しいっつってんだから、俺のものになればいい。

稲垣:そんな理屈はとおりません。だったら何で簡単に判子を押したんですか?

S子:あの時は・・・。(注40:44経過) 

稲垣:離婚の判子なんか押しちゃダメでしょう。徹底的に粘って、説得して自分の基に戻るようにやるのが男じゃないですか?

S子:(少しボケ始めた様子。何か納得しつつある)一回離れたら、俺を失って困ると思うと思った。

稲垣:そりゃ困りませんよ。見切りを付けた女は強いですよ。見向きもしませんよ。あなたは、そこが分かってないということだ。そりゃあなたは男としてね、女性体験が未熟だからです。私はそれは貴方にハッキリ言えると思うよ。あなたの1.5倍以上の年齢をしてますから、私はそういうことはハッキリ断言出来ると思っている。

S子:どうしたらコイツは帰ってくる?

稲垣:フーーン、まあ、あなたが態度を改めることが第一だな。

S子:変わらない。

稲垣:それはダメですー。

S子:変えないでどうやったら帰ってくる?

稲垣:変えなかったら、帰ってはきませんね。

S子:俺は変わらない。

稲垣:そのうちね、それこそね、このS子さんが別の男を好きになって…。

S子:嫌だ。

稲垣:その別の男とね、結婚するようなことになるような気がしますよ。

S子:認めない。

稲垣:それはあなたが認める認めない関係ないです。だってもうS子さんとは法律上の離婚が成立…。

S子:コイツと一緒になりたいんだぁ。もう一回一緒にしてくれぇ。

稲垣:そりゃ、あなたが土下座して頼み込むことだな。

S子:出来ない。

稲垣:それが出来なければ、諦めなさい。

S子:・・・

稲垣:苦しみなさい。

S子:苦しみたくない。

稲垣:苦しむのもね、魂の成長として必要な負荷ですからね。

S子:苦しみたくない。苦しむのは嫌だ、苦しむのは嫌だ、苦しむのは嫌だ。嫌だ、どうにかしてくれ兎に角。

稲垣:どうにか出来ない訳じゃないんだけど、あなたが苦しい目に会うだけです。どうにかするというのはね、今、あなたは、このS子さんに憑依していますが、それを無理矢理剥がして、あなたを飛ばしている…。

S子:もう要らないコイツ。俺がそんな苦しむためにコイツが要るんだったら、苦しみたくないからもう要らない。兎に角、サッサとどうにかしてくれ。

稲垣:なら帰ってくれますか?

S子:帰る。

稲垣:間違いなく?

S子:帰りたい。もうコイツは俺のものにならないんだったら、もう要らない。

稲垣:それはね、ならないと思っていいと思うし…。

S子:じゃあ、要らない。

稲垣:私が約束しましょう。

S子:じゃあ、要らない。

稲垣:いいですか?

S子:うん。

稲垣:あなた、苦しかったんですからね…。

S子:苦しい。(注43:22経過)

稲垣:…でもその苦しみはね男としての成長に必ず役に立つはずですから、まだあなたも若いわけだからまた別の魅力を備えた女性と出会う、そういう可能性は大いにあると思う。

S子:俺はコイツが良かった。

稲垣:それは分かるよ。憎しみに囚われてね別れるよりも、少々の未練を残して別れた方が私はいいと思ってる。

S子:なんでだ?

稲垣:なんでと言ったって、憎しみは何も生み出しませんよ。

S子:俺は憎い。

稲垣:でも、あなたは憎んじゃったね。

S子:そうだ憎い、とても憎い。

稲垣:半分憎いし、半分は未練はあるし。

S子:とても大好きだった。

稲垣:大好きだったんですね、その気持ちはよく分かりますよ。愛憎紙一重とそういう言葉が昔からありますからねえ。

S子:大好きだった。

稲垣:愛することと憎しみとは紙一重の問題。

S子:でも苦しいんだ。

稲垣:だからそういう苦しみはこれからのあなたの人生にはきっと役に立つはずですよ。うん、でも一言言っておきますが、やっぱりあなたが、このS子さんに対するような、自分の言いなりになれ、とそういう態度を改めないとおそらくね、再び誰か良い女性と巡り会っても結婚生活は続きませんよ。余計なお世話かもしれませんけどね。

S子:コイツとはもう一生、もうコイツ以外と一緒になる気はない、だけどもう苦しむのはもう嫌だ。

稲垣:一気に忘れるなんてことは出来ないでしょうけどね、でも徐々に徐々にね忘れていくはずです。去る者日々に疎していうのはね、これは真理ですよ。だから連絡も今取り合ってないという話ですからね。でもあなたは苦しんで、今もこうして生き霊として飛んできてますからね、でもは時間と共にね、S子さんを忘れていくでしょう。

S子:忘れない。忘れないけど、この気持ち忘れたい。

稲垣:この気持ちとは好きという気持ちですが?

S子:いや、好きなのは変わらない。ただ憎んだり、俺が気持ち悪いのは・・・。

稲垣:気持ち悪い思いするのが何だって?

S子:コイツが帰ってこないとか、悶々としている日々は嫌だから、それを止めたい。

稲垣:それを止めるということですね?

S子:止めたい。

稲垣:それはやっぱり一つのね愛情でしょうね。S子さんに対する愛情だと思いますよ。

S子:今でも帰って来てほしい。今でも帰って来てほしい。

稲垣:帰って来てほしいんでしょ。

S子:(泣きながら)帰って来てほしいけど、帰って来ないのも分かった。

稲垣:分かった。

S子:(泣きながら)分かったから辛い。もうこの気持ちを捨てたい。

稲垣:そういうね、何とも言えないジレンマというのは良く分かります、辛いですね。どうしましょうね? あなたがそういう気持ちを少しでも和らぐようにね、あなたのために般若心経を読んであげようかなと思うんだけど、どう?

S子:そうしてほしい。

稲垣:般若心経が説いてる世界はね、色即是空 空即是色そういう…。

S子:(泣きながら)S子大好きだ!

稲垣:はい?

S子:(泣きながら)S子大好きだ、俺は忘れ切れない。お前と居た時のこと忘れきれない。(泣き続けている)

稲垣:そうですか。うーん。じゃあ兎に角、般若心経を読んであげましょう。

S子:(泣きながら)また会いたい。また会いたい。

稲垣:いや、会わない方がいいと思いますよ。

S子:いつかまた会いたい。

稲垣:会うとしたら今度はね、いい思い出としてね色んなことを語り合えるような…。

S子:(泣きながら)頑張るからぁ…。

稲垣:そういうふうなね、心境になった時…。

S子:(泣きながら)今生じゃなくていい、俺 頑張るからまた会ってもいいって思ってほしい。お願い、お願い、お願い…。

稲垣:何をお願いしてるんですか?

S子:(泣きながら)中間世で願って、また俺と一緒になるって、お願い、お願い…。(泣き続けている)

稲垣:それはね、私は約束は出来ませんが。

S子:(泣きながら)俺、それないと帰れないぃ。(泣き続けている)

稲垣:うん。S子さんはね、次の次の生まれ変わりでまた夫婦になる。っていうふうに霊界から言われたようですよ。貴方とだからまた…。

S子:(泣きながら)また会いたい。

稲垣:だからね、会えるはずですよ。(泣き続けている)

S子:(泣きながら)また会いたい。俺悪かったから、直すから。お願い、お願い、絶対、絶対、これきりなんて、それだけは嫌ぁ、会いたい。(泣き続けている)

稲垣:次の生まれ変わりでは夫婦になれないかもしれませんが、その次の生まれ変わりで、夫婦になるんだそうですよ。だからそれまで待ちなさい。ね、そして この現世では一旦 S子さんへの想いを断ち切って、そしてあなたは独自のね、これからの人生を歩んでくださいね。そしてまた良い女性と巡り会うような気がします。
 
S子:(泣きながら)俺はずっとS子ことだけ考えてる。

稲垣:でもね、繰り返し言いますが、貴方がS子さんに対して…。

S子:(泣きながら)分かってる。一緒にならないのわかってる。

稲垣:そうそう。慎重に女性の気持ちを汲んでね、そして付き合っていかないとまた同じ繰り返しをしますよ。

S子:(泣きながら)お前だけ。

稲垣:そういうことが出来るようになれば、また必ず来世で会えるということなんでしょうね。現世でまだ残りの人生をそういう女性に対する思いやりのような、そういう心をねやっぱり学ぶのがね現世に生まれてきたあなたのね、使命というか課題と言ったらいいのかな。その課題を果たすことが出来れば必ず来世で…。

S子:(かなり大人しくなった様子)俺は果せない。

稲垣:また出会えるはずですよ。一緒にまた夫婦になるっていう話ですからね。だからこれで全て終わっちまった訳じゃないと思ってくださいね。じゃあ、穏やかにあなたを飛ばしている、魂本体の表層にいる「現世の者」のところに帰ってください。

S子:帰る。

稲垣:魂のね、表層にいる現世の者のところに戻ってくれますか?

S子:はい。

稲垣:魂表層の現世の者はね、あなたを飛ばしている分だけ欠けた状態になっていて魂表層の者として不完全な状態になっていますからね。

S子:(注50:32経過)だから、俺は帰る。

稲垣:だから魂表層の現世の者と一つになってください。戻ってね。

S子:分かった。

稲垣:分かりました? じゃあ、あなたがそうやって穏やかに戻れるように般若心経を読みましょうね。まあ般若心経は何千年という間読まれ続けたお経でね、その中で一番大事な文言は、色即是空 空即是色です。貴方がS子さんのことを実在していると思っていることもね空なんだっていう教えです。すべては実体が無いのだという訳です。実体があるように見えるんだけども、実は実体など無いのだ、と。そういうね訳の分からんことを説いていますが、それは実際に霊界に上がると分かることなんだそうです。あなたはこの現世ではS子さんとは一旦もう縁を切りますけどね、その次の次の来世でまた出会って結婚する。そういうそういうことをね、どうやらS子さんが自分で言ってますからね、これは間違いないと思うよ。それでなんとか納得してくれるなら、もうあなたを飛ばしている魂の本体の「現世の者」のところに戻ってくださいね。いいですか?

S子:はい。

稲垣:じゃあ、こうしましょう。私が般若心経を貴方のために心を込めて読んであげます。それが終わったらね、もう戻る準備が出来たことになりますからね。手をパンパンと2回打ちます。それを合図にあなたを飛ばしている魂本体のね、魂表層に居る現世の者の所へ戻って一つになってください。そうするとあなたを飛ばしている本人もね、とても楽になるはずです。そしてS子さんも、生き霊のあなたが飛んでくると突然涙をこぼすようなそういうね、心が不安定になる苦しみから解放されると思っている。とりあえずね、お互いにね、良い状態が出来上がると思ってますからね。じゃあ般若心経を読みますよ。

(般若心経を読む)

願わくは、この功徳をもってこの生き霊を飛ばしている魂の本体と一つになれますよう。そして生き霊が戻って十全になった魂が、これから先、男として磨きをかけて幸せになれますように。
さあ準備出来ましたからね、じゃあ戻ってくれますね? 手を打ちますよ。

(手を2回打つ)

さあこれでいいでしょう。これで納得してね、生き霊は戻ってくれましたから、もうS子さんに飛んでくることはないでしょうね。もし強制的に生き霊払いという儀式をやるとね、一旦は離れるでしょうけど、また戻って来ますからね。戻って来ないように説得をしてね、そして戻ってもらうように今しておきました。

(生き霊との対話おわり)
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このセッション後2ヶ月以上が経過していますが、「生き霊」ということばを聞くだけで、わけもなく涙が出る、同時に体調不良に陥ることが起こるといった症状がセッション後は治まったという報告をいただいています。
SAM前世療法は症状の改善が第一義ですから、このセッションはとりあえず成功したと判断してよいと思われます。

このことは、生き霊との対話による説得が成り立ち、ひとまず功を奏したということであり、S子さんに憑依してきた生き霊の存在を認めてもよいように考えられます。
ただし、前夫が未練心を復活させて、また生き霊を飛ばしてくる可能性が完全に払拭されたと断言できるわけではありません。

憑依してきた生き霊の存在を疑うとすれば、S子さんが前夫の生き霊のふりをして、架空の生き霊(の人格) を演じたのではないか、という疑いでしょう。
しかし、催眠中の作為は否定されますから、催眠に入ったふりをして生き霊を演じたということになります。

ただし、S子さんが確実に知覚催眠の深度に到達していたことは、標準催眠尺度を用いて確認していますから、催眠に入ったふりをして生き霊を演じたという疑いは却下できます。

残るは、催眠中の潜在意識下で無意識的に生き霊を演じたという疑いでしょう。
その可能性のあることを100%否定できません。

催眠学的に考察すれば、催眠中の「要求特性」によって、つまり、セラピストの生き霊を呼び出そうとする行為に、クライアントが無意識的に応えようとして、架空の生き霊を作り出し、演じたのだ、という解釈が成り立たないわけではないということです。

しかし、S子さんに顕現化(憑依)してきた前夫の生き霊の、怒りや悲哀の形相とその語り口や落涙などの様子は、S子さんではない別人格が主体ではないかと思われるような(人格変換が起きているかのような)迫真性があり、そのような演技はとてもできるものではないだろうという真実性を実感させました。
このことは、 実際の音声記録を試聴すれば、大方の人が実感できるはずです。

ちなみに、90分にわたる事前面接で、S子さんに「統合失調症」、「境界性人格障害」、「演技性人格障害」、「解離性同一性人格障害(多重人格)」などを疑わせるような精神疾患の兆候は観察できませんでした。
また、彼女の報告を検討するかぎりでは、妄想癖や思い込みの激しさをうかがわせるような性向もありませんでした。
また、特定の新興宗教の信者ではないことも、確認できました。
ただし、未浄化霊や生き霊などの霊的存在は信じているということでした。

さて、すでに離婚が成立しているS子さんが、愛想を尽かして別れた夫の生き霊を演じることに、なんらかの利得があるとはまず考えられません。
もし、利得があるとすれば、無意識的に生き霊の顕現化を演じ、それが説得によって祓われたというストーリーを作りあげることによって、自分に起きている霊障を取り除けると期待し演じたのではないかという、ナラティブセラピイ(物語療法)的なうがった解釈が考えられるかもしれません。
しかし、なぜそのような迂遠な方法をとらねばならないのか、説得力がありません。

覚醒後に、憑依中の記憶があったS子さんは、生き霊の言っていることを聞いていて離婚してよかったとますます強く思った、別れた夫に対する同情や未練は一切ない、と断言しています。
そのように、前夫への同情も未練も皆無のところで、S子さんが前夫の生き霊を演じなければならない必然性があるとはまず考えられないと思います。

こうした彼女の種々の諸事情を考慮すれば、この対話セッションは、前夫の未練や怨恨などの強烈な思念の集合体が人格化し、生き霊として憑依してきた顕現化現象なのだ、とありのままに、現象学的にとらえることが妥当ではないかと思われます。

私あて第9霊信は、次のように告げています。

「そして、あなたが最も理解すべきなのは『霊祓い』を選択するのではなく『浄化』を選択することである。祓うことは、追いやることや強制的に引き離すことを意味する。離れた
としても一時的なものでしかない。応急処置のようなものでしかない。霊がいつも求めるものは『理解』であることを忘れないようにしなさい。そして、その本質は『愛』なのだ」

 私はこの霊信の忠告を誠実に守ろうと、「理解」と「愛情」を理念として、今回の生き霊との対話に臨んだつもりです。
私の生き霊への向き合う姿勢、発したことばから、それら理念を実現しようとする努力の一端を感じ取っていただけたとしたらうれしく思います。

なお、同様の理念をもって、女性の生き霊との対話を試みた事例を、本ブログ「SAM催眠学序説その82」の3で掲載していますのでご覧ください。

SAM催眠学の仮説による魂状態への誘導と、そこで展開できる対話による「生き霊祓い」の可能性を、機会があれば、さらに実践を累積し、探究したいと思います。

付言すれば、こうした対話による生き霊祓いは、半端な決着は許されませんから、事後にやってくる相当な体力の消耗と精神的な疲労を覚悟しない限り、迂闊に引き受けるべきではないと思われます。

また、「統合失調症」、「解離性同一性人格障害」、「演技性人格障害」、憑依妄想などの疑いがある場合は、そうした精神疾患を顕在化し、悪化させる事故を引き起こすことになりかねません。
したがって、事前の慎重な面接で、それら精神疾患の疑いの兆候を見逃すことは許されません。

生き霊祓いのセッションは、セラピスト生命を賭けて取り組むほどの覚悟をもって、おこなうことが求められていると思います。

ちなみに、このセッションから3ヶ月経ている時点で、体調不良などは改善し、生き霊の憑依はないようだと報告を受けています。
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