応答型真性異言(xenoglossyゼノグロッシー)で語った「ラタラジューの事例」(2010年アンビリ放映)のネパール人ラタラジューの語りの謎は大きく一つあります。
ラタラジューの語りの中で、ナル村での食べ物、ヒルの棲息、ナル村での火葬、傭兵としてラナ家のクーデターに参加したことなどは、検証によってすべて事実であることが明らかになっています。
しかし、ラタラジューの語りのこれらの諸情報は、超ESP仮説の適用によって、里沙さんの超能力発揮の結果として、すべての情報が入手可能だという説明が成り立つ余地があります。
語られた諸情報、しかも里沙さんが知っているはずのない情報が、事実と一致しただけでは、生まれ変わりの科学的証拠としては不十分なのです。
「ラタラジューの事例」が、決定的に重要であるのは、応答型真性異言という会話技能が成り立っていることなのです。
会話技能は、超ESP仮説が適用できないからです。
技能は練習が必須条件であり、いかに優れた超能力者といえども、練習が必要な技能を超能力で入手することは不可能だからです。
したがって、里沙さんがネパール語会話を取得していないことが立証され、にもかかわらず、前世人格であるラタラジューが、ネパール語会話をしたことが立証されれば、それだけで、生まれ変わりの科学的証拠として採用されるべきなのです。
そこで、「ラタラジューの事例」が、応答型真性異言であるとした場合に浮上してくる大きな謎が、ラタラジューが日本語を知らないはずであるにもかかわらず、私との日本語会話がなぜできるのか、という謎です。
そして、この謎は、他のSAM前世療法のセッションで顕現化する、日本語を知らない外国人前世人格が、セラピストの私との日本語会話がなぜできるのかという謎とも直結しています。
こうした謎は、「前世記憶の想起」を前提とするワイス式前世療法では回避できます。
現世のクライアントが、外国人であった前世の記憶を想起して語るわけですから、クライアントが母国語で語って当然だからです。問題意識の起こりようがありません。
さて、この謎について、唯一言及している科学者がイアン・スティーヴンソンです。
彼は、応答型真性異言現象を、さすがに「前世の記憶」として扱うことは不可能だと考えました。
退行催眠中に顕現化した「トランス人格(前世人格)」と呼び、次のような解釈を試みています。
ちなみに、退行催眠中に現象した応答型真性異言の公表は、「ラタラジューの事例」を除いて、これまで世界でわずか2例のみです。
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私が特に解明したいと考えている謎に、イェンセンやグレートヒェンが母語(スウェーデン語とドイツ語)でおこなわれた質問と同じく、英語でおこなわれた質問に対しても、それぞれの母語で答えることができるほど英語をなぜ理解できたのかという問題がある。
イェンセンとグレートヒェンが、かつてこの世に生を享けていたとして、母語以外の言葉を知っていたと推定することはできない。
二人は、したがって、自分たちが存在の基盤としている中心人物(英語を母語とする被験者のこと)から英語の理解力を引き出したに違いないのである(『前世の言葉を話す人々』P235)。
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このことは、ラタラジューにも当てはまる謎です。
なぜ、ネパール人前世人格ラタラジューが、知っているはずのない日本語を理解し、私と対話できるのかという謎です。
これはラタラジューが顕現化した第一回セッションからこだわり続けていた謎でした。
だから、、応答型真性異言実験セッションの最初に、「ラタラジューはネパール人です。それなのに日本語が分かるということは、翻訳、仲立ちをしているのは魂の表層の『現世の者』と考えてよろしいですか? 」という質問を里沙さんの守護霊にしたのです(『生まれ変わりが科学的に証明された』P46)。
これに対して、里沙さんの守護霊とおぼしき存在も、そのとおりだと認めています。またこの存在は、「魂レベルでは言語の壁がなくなり自然に分かり合える」とも告げています。
つまり、SAM前世療法の「魂の表層構造仮説」のように、魂の実在を仮定すれば、スティーヴンソンの「特に解明したい謎」に解答が出せるかもしれないということです。
魂の表層に存在し、ラタラジューとつながっている「現世の者(現世の人格を主として担っている者)」が通訳をしているという説明ができることになるのです。
こうした海外で発見された応答型真性異言と考え合わせると、前世人格の存在する座を魂の表層である、とするSAM前世療法の作業仮説の検証は、ますます意味深い作業になると思っています。
なぜならば、スティーヴンソンは、呼び出された「トランス人格(前世人格)」が応答型真性異言を話すことまでは言及しても、その「トランス人格(前世人格)」の存在する座はいったいどこにあるのか、その仮説まで言及しようとしていません。
ただし、彼は、「前世から来世へとある人格の心的要素を運搬する媒体を『心搬体(サイコフオア)』と呼ぶことにしたらどうか」(『前世を記憶する子どもたち』P359)とまでは提唱しています。
それは実証を重んじる科学者としてのスティーヴンソンの慎重な自制からでしょうが、SAM前世療法は、それ以上言及されなかった前世人格の存在する座までも検証することになるからです。
スティーヴンソンは、スウェーデン人の前世人格イェンセン、ドイツ人の前世人格グレートヒェンが、「自分たちが存在の基盤としている中心人物(英語を母語とする被験者のこと)から英語の理解力を引き出したに違いないのである」と確信的に述べています。
この文脈からすれば、スウェーデン人の前世人格であるイェンセン、ドイツ人の前世人格グレートヒェンは、彼らの生まれ変わりである現世の者の「脳内から英語の理解力を引き出した」ことになります。
では、前世人格イェンセン、前世人格グレートヒェンも、中心人物の脳内に存在しているのでしょうか?
死とともに消滅する脳内に、前世人格が存在することはありえません。
前世から来世へとある人格の心的要素を運搬する媒体である「心搬体(サイコフオア)」に、前世人格イェンセン、前世人格グレートヒェンは存在している、とスティーヴンソンは述べるべきであったと、私は思います。
そう考えることができなかったのは、スティーヴンソンがセラピストではなく生まれ変わり研究者であり、したがって、私のように前世療法を実践するための切実な作業仮説を必要としなかったからであろうと思います。
応答型真性異言という生まれ変わり現象は、魂の存在を前提としないことには説明不可能だと私は考えます。
2 件のコメント:
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実際、応答型真性異言を見ていると、唯物論の範囲ではかなり無理があるような気がします。
今度、ご著書のほうも読んで、もし時間があればAMAZONに書評出します。決して、「催眠状態でのうわごとで、どうとでも聞こえる状態」ではありませんからね(ある批判レビューに反論しておきましょうか)。
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ラタラジューのネパール語会話の解析については、拙著出版後あらたに2点の事実が判明しています。 ①死亡年齢を、ath satori 、8と70、つまり78歳だと答えています。「8と70」という数え方は、現代ネパール語では用いない古いネパール語の使用法であることが確認されました。
②妻という単語について、ラタラジューは現代ネパール語 srimati が理解できず、古いネパール語 swasni に反応して、「私の妻はラメリ」だと答えています。
「催眠状態でのうわごとで、どうとでも聞こえる状態」で、このような解析ができるはずがありません。
これら2点の事実も含めて、どうぞ書評をお書きくだされば、うれしく思います。
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