2012年11月24日土曜日

ラタラジューの応答型真性異言その4

その3からの続き
KA  Tapaile zutta lagaunuhuncha? Zutta?
   (あなたは靴を履いていますか?)
CL  Ke?
   (何?)
KA  Zutta.
   (靴です)
CL  Ke?
   (何?)
KA  Zutta.
   (靴です)
KA  Tapaile luga, ke luga lagaunuhuncha? Kasto luga lagaunuhuncha? Luga ...
   (どんな服を着ていますか? どんな服を着ていますか? 服を)
CL  Bujina.
   (分かりません)
KA  Luga. Tapaile jiuma kosto luga lagaunuhuncha?
   (服です。身体にはどんな服を着ていますか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Tapailai git gauna aucha? Git. Git. Nepal ko git. Nepali git
   (あなたは歌を歌えますか? ネパールの歌です。ネパールの歌)
CL  Bujina.Oh, bujina.
   (分かりません。おー、分かりません)
KA  Tapailai baja bajauna aucha? Sarangi bajauna aucha? Ke bajauna aucha.
   (あなたは楽器を弾くことはできますか? サランギを弾けますか?どんな楽器を弾けますか?)※サランギは楽器
CL  Ah ...
    (あー)
KA  Madal bajauna aucha?
   (マダル(楽器)を弾くことはできますか?)※マダルは楽器
CL  Bujina.
   (分かりません)
KA  Ke aba, ke garne ta, aru kehi sodou ki nasodou?
   (どうしましょうか? もっと聞いてもいいですか? やめた方がいいですか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Sodon?
   (聞いてもいいですか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Tapaiko gauma manche morda keri ke garni garekocha? Gauma?
   (あなたの村では人が死んだらどうしますか? 村では?)
CL  Ah,
    (あー)
KA  Hai.
   (ハイ)
CL  Himal.
   (山、ヒマラヤ)
KA  Himal?
   (山、ヒマラヤ)?
CL  Himala ... Himal.
   (山、ヒマラヤ)
KA  Himal?
   (山、ヒマラヤですか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Manche morda keri Himal lera jani?
   (人が死んだ後、山、ヒマラヤに運ぶのですか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Himalma?
   (山、ヒマラヤに?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Ke ho, jalauni ki gadni? Himalma lagera ke garni jalauni ki gadni?
   (山、ヒマラヤで燃やすのですか、埋めるのですか?)※ナル村の風習では、遺体をヒマラヤの見える山上に運び、遺体の顔をヒマラヤに向けて火葬にする。骨と灰を一旦地中に埋め、その後掘り出して川に流す。墓を作る習慣はない。
CL  Ho.
   (はい)
KA  Jalauni?
   (燃やすのですか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Gadni?
   (燃やすのですか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Tapailai kehi bannu man cha bhane bhannusna.
   (何か言いたいことはありますか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Hajur?
   (はい?)
KA  Kehi cha bannu man lageko?
   (何か言いたいことはありますか?)
CL  Ho.
   (はい)
KA  Chaina? Bhayo?
   (何もありませんか。もう充分ですか?)
CL  Ho, ho, hoina.
   (はい、はい、いいえ)
KA  Hoina?
   (充分ではないのですか?)
KA  Kehi cha banna man lageko?
    (何か言いたいのですか?)
KA  Kehi cha manma kura?
    (何か言いたいことがあるのですか?)
CL  Bujina.
   (分かりません)
KA  Buji ... bujina?
   (分かりませんか?)
KA  Tapaiko gauma ko ko hunuhuncha sathi?
   (あなたの村では誰が友達ですか? 村です)
CL  Gaun ...
    (村)
KA  Hajur, gauma.
   (はい、村です)
CL  ha ... hajur ...
   (はい)
KA  Hajur, gauma ko ko hunuhuncha?
   (そうです。村には誰がいますか?)
KA  Tapai kati barsa hunubhore, pheri ek choti bhanidinusta?
   (あなたは何歳ですか、もう一度言ってもらえませんか?)※この質問にラタラジューは答えられない。七八年の人生のどの時点の年齢を尋ねられたのか不明だからである。「結婚したのは何歳ですか」のように尋ねるべきである。
CL  Ha ...
    (は)
KA  Kati barsa hunubho?
   (何歳ですか?)
CL  Ah ... Ana.
    (あー、あな)
KA  Tapaiko chora kati barsako bhayo? Chora ... chora ... chora kati barsako bhayo?
   (あなたの息子さんは何歳ですか? 息子さん、息子さん、息子さんは何歳ですか?)※この質問にラタラジューは答えられない。七八年の人生のどの時点の子どもたちの年齢を尋ねられたのか不明だからである。「あなたが五〇歳のとき息子は何歳でしたか」のように尋ねるべきである。以下のアディスの年齢の質問も同様である。
KA  Kancha, kanchi?
   (息子さん? 娘さん?)
CL  Kancha.
   (息子)
KA  Kancha?
   (息子?)
CL  Ah, Adis.
   (あー、アディスです)
KA  Kancha, Adis.
   (息子さんはアディス?)
CL  Hum ...
    (ふむ)
KA  Kati barsako bhayo Adis?
   (アディスは何歳ですか?)※この質問にラタラジューは答えることはできない。七八年の人生のどの時点でのアディスの年齢なのか不明だからである。
CL  Adis.
   (アディス)
KA  Adis kati barsako bhayo?
   (アディスは何歳ですか?)
CL  Moi(?) ho ... ho...
    (はい・・はい)
KA  Adis kati barsako bhayo?
   (アディスは何歳ですか?)
CL  Bujina.
   (分かりません)
KA  Bujnubhayena.
   (分かりませんか)
KA  Tapaiko gauma Magar kohi cha?
   (あなたの村にはマガール族の人はいますか?)
CL  Ah.
   (あー)
KA  Magar.Tapai pani tamang ho? Tamang ho tapai?
   (マガール族です。あなたはタマン族でしたよね? タマン族でしたよね、あなたは)
CL  Ha ...
    (は)
KA  Rataraju, Tamang ho tapai?
   (ラタラジューさん、あなたはタマン族でしたよね?)
CL  Hajur ah.
    (はい)
KA  Gauma Magar chainan?
   (村にはマガール族の人はいないのですか?)
CL  Hum.
   (ふむ)
KA  Magar.
   (マガール族の人です)※2010年現在、ナル村人口の97%がタマン族である。
CL  Ha ... bujina.
   (はー、分かりません)
KA  Rai kohi chan ki ta?
   (ライ族の人はいませんか?)
CL  Ah ...
    (あー)
KA  Kun kun jatko manche chan gauma?
   (村の人はどのカーストに属するのですか?)
CL  Ah ... bujina.
   (分かりません)
KA  Bujnubhyena.
   (分かりませんか) 
終わり
以上が、ネパール語応答型真性異言24分間の全逐語録です。
2009年5月9日のこの実験セッションにあたって、CL・里沙さんは、対話者であるKA・カルパナさんとは初対面でした。もちろん私も初対面で、そもそもこの実験 セッションにカルパナさんが参加することすら、事前に知らされていませんでした。
したがって、ラタラジューに対してどんな質問をするなどの事前打ち合わせは一切おこなっていません。
カルパナさんは朝日大学法学部博士課程に留学しているネパール人女性で、中部大学大門正幸教授の探し出したこの日の実験セッション協力者でした。
このセッション時点で、応答型真性異言現象が現れるという期待は、同席した末武信宏さかえクリニック院長、大門正幸中部大教授、岡本聡中部大准教授、対話者パウデル・カルパナさん、そして私のいずれも、期待薄の状態でした。
なにしろ、イアン・スティーヴンソンが20数年かかってやっと3例を発見しているに過ぎなかったからです。
したがって、被験者の里沙さんがネパール語で会話し始めたときに、同席者は舞い上がってしまった、というわけです。カルパナさんに要求するネパール語のラタラジューへの質問内容も、いきあたりばったりで紙に書いて、その都度カルパナさんに渡すというドタバタ状態でセッションは進行しました。
また、カルパナさんは、SAM前世療法については全く事前知識を持っていませんから、ラタラジューとの対話が、78年の生涯を生きた前世人格(死者)との対話をしている、という自覚が当然のことながら持てなかったと思われます。
セッション後の感想で、「ほんとうのネパール人のようだったから驚いた」と語っていますから、ラタラジューとの対話中では、通常の生きているネパール人相手に対話している意識であったようです。
対話者カルパナさんの感想にあるように、ラタラジューとの対話は流暢とは言えないまでも成立していたことに疑いの余地はないと思います。紹介した全逐語録を読んでなお、「空耳の羅列にすぎない」とか、「この程度のネパール語会話なら誰にでもできる」といった批評が的外れであることは明白です。
なお、カルパナさんは、死者との対話をしている自覚が明確でないため、顕現化したラタラタジューが答えられないような、時点不明な年齢についての質問等が繰り返されたと思われます。
死者であるラタラジューは、「今、何歳ですか?」と問われても、いったい自分が何歳であるときのことを尋ねられているのか戸惑い、「分かりません」と答えるしかないのは当然だと思われます。こうした、答えようのない、いつの時点か不明な質問が多くあり、したがって、「分かりません」としか言うほかない回答が多くなっているように思われます。
一方、私も、ネパール語には全く不案内ですから、Nallu Gaun(ナル村)という}発音を聞いてナルガーン村だと思ったくらいですし、Dharma(宗教)という発音を聞いて、ダルマさんだと思ったくらいお粗末な状態でした。Shah(シャハ)がシャハ王朝であることも理解できない、Rana(ラナ)に至っては全く謎のことばでした。
それにしても、ラタラジューが24分間の短い対話の中で、しかも初めてのネパール語対話で、これだけのネパール語を話したという事実は、驚異的なことだとあらためて感じます。しかも、地方色の濃い、古いネパール語の妻は理解できても、現代ネパール語の妻は理解できないこと、78の言い方を古いネパール語の数え方の「8と70」という言い方をしているなど、ラタラジューが、120年ほど昔に死亡している一昔前のネパール人である傍証を示しています。見方を換えれば、こうした古いネパール語を、里沙さんが学ぼうにもまず不可能ですから、彼女が密かにネパール語を学んでいたという疑惑は晴れたとも言えるのです。
ちなみに、ナル村が実在すること、ラナが独裁権力を握っていた宰相家であることが判明したのは、このセッションの後の検証作業をしてからのことでした。
したがって、逐語録にある※印のコメントは、セッション後の検証によって明らかになった事柄であるとご理解ください。
これまで紹介したネパール語全逐語録を、作成中のドキュメンタリー映画の字幕として用い、※印のコメントも適宜字幕にして挿入する作業を進めているところです。
映画題名は、『催眠・魂・生まれ変わりの真実』(仮題)になる予定です。

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