2012年1月24日火曜日

筆者の催眠研究歴その4

(その3からのつづき)
(4) はじめての前世療法
筆者は、自分の学んできた催眠技法はすべて使い果たしたので、これ以上のお役には立てないだろうとお断りをしました。しかし、「どんなことをしても娘を救いたい」という再三の懇願を振り切ることは忍びず、逡巡したあげく、最後の手段として前世療法を試みることを決断しました。万策尽きた以上、可能性はそこにしかないと思ったのです。
とにかく改善効果があるかも知れないのなら、試みてみるのがセラピストの務めであろうと思いました。
とはいえ、筆者にとって未知の前世療法の適用は厳しい認識に立たざるを得ないものでした前もってどんな前世の記憶が出てくるかまったく予測できず、それでも全セッションに責任持って臨機応変、戦略的に対処していかねばならないからです。
心理療法の総合的技量が直截(ちよくせつ)に試されることになるという認識に立たざるをえませんでした。
筆者にそれだけの技量があるのか、前世療法に取り組むことは、緊張と不安なしにはできないことでした。
引き受けたからには最善を尽くすしかない。異常な兆候を感じたときには躊躇(ちゆうちよ)せず中止して覚醒させる。
亜由美さんの潜在意識に現れてくるプロセスを現れるままに受け止め、集結への流れを無理なく進めていくしかない。
こうした覚悟を固めないでは踏み込めない未知への挑戦でした。
この亜由美さんへの最初の前世療法には、通常のセッションにはない特殊な前提が伴っています。
それは、彼女に前世療法を試みることがまったく伏せられていたことです。
彼女自身の希望ではないことと無用な心理的混乱を生じさせないために、ご両親の了解を得ておこなった措置でした。
亜由美さんはもちろん、ご両親にも前世療法の知識が皆無であること、彼女は前世や生まれ変わりをまったく信じていないと断言している状況も、通常のセッションとは異なるきわめて特殊な前提であると言えます。
亜由美さんはすぐに記憶催眠(深い催眠)の深さまで入りました。そこで、順に年齢を退行をさせ、それぞれの年齢で記憶しているエピソードを語ってもらい、最後は子宮内まで退行させました。
前世記憶への遡行に先立って子宮内退行をおこなうという技法が一般的かどうかを筆者は知りません。
ただ、現世以前の記憶があるとすれば、順序として子宮内への退行をしてくことが自然であろうと考えて試みたものです。 
ここで用いた前世記憶想起への誘導暗示は、ワイスの『前世療法2』の巻末にある誘導法を参考にしたものです。
この方法による前世療法を便宜的に「ワイス式」と呼んでおきます。
(つづく)

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