総括その5 「超ESP仮説」を打破する「応答型真性異言」
難題である超ESP仮説の打破に挑んだのが、ヴァージニア大学精神科教授で、現代における超心理学の泰斗、そして「生まれ変わりの科学的研究」の先駆者として知られる故イアン・スティーヴンソンです。
スティーヴンソンが着目したのは、もし、ESPによって取得不可能なものであれば、それは超ESPであろうとも取得が不可能である、という事実でした。
少し長くなりますが、彼の着目点を下記に引用してみます。
「デュカス(注:カート・ジョン・デュカス、哲学者)は、本来、霊媒は他人の持つあらゆる認知的情報をESPを介して入手する力を持っているかもしれないことを原則として認めているが、その情報を本来の所有者と同じように使うことはできないと考える。
デュカスによれば、霊媒は、テレパシーを用いてラテン語学者からラテン語の知識をすべて引き出すこともあるかもしれないが、その知識をその学者の好みとか癖に合わせて使うことはできないのではないかという。
以上のことからデュカスは次のように考える。
もし霊媒が、本来持っているとされる以外の変わった技能を示したとすれば、それは何者かが死後生存を続けている証拠になるであろう。
もしその技能が、ある特定の人物以外持つ者がない特殊なものであれば、その人物が死後も生存を続けている証拠となろう。
技能は訓練を通じて初めて身につくものである。
たとえばダンスの踊り方とか外国語の話し方とか自転車の乗り方とかについて教えられても、そういう技能を素早く身につける役には立つかもしれないが、技能を身につけるうえで不可欠な練習は、依然として必要不可欠である。
ポランニー(注:マイケル・ポランニー、科学哲学者)によれば、技能は本来、言葉によっては伝えられないものであり、そのため知ってはいるが言語化できない、言わば暗黙知の範疇(はんちゆう)に入るという。
もし技能が、普通には言葉で伝えられないものであるとすれば、なおさらと言えないまでも、すくなくとも同程度には、ESPによっても伝えられないことになる」
(スティーヴンソン「人間の死後生存の証拠に関する研究ー最近の研究を踏まえた歴史的展望」笠原敏雄編『死後生存の科学』PP41-43)
ESPである透視・テレパシーなどによって、取得可能なのは、あくまで「情報」です。
そしていくら情報を集めても、実際にかなりの訓練をしない限り、「技能」の取得はできません。
自転車の乗り方をいくら本や映像で知っても、自転車に乗ることはできないように、たとえば言語も情報による伝達だけでは「会話」まではできないはずです。
つまり、「超ESP」によっても、「外国語の会話能力」までは獲得することができないわけです。
したがって、ある人物が、前世の記憶を、その前世での言語で語り、かつ現世の当人がその言語を学んだことがないと証明された場合には、超ESP仮説は適用できず、生まれ変わりが最も有力な説明仮説となる、とスティーヴンソンは考えたのです。
そして、前世記憶を語る中には、ESPによる「情報取得」では説明できない、学んだはずのない外国語での会話を実際に示す事例が、きわめて稀ですがいくつか報告されています。
これを「真性異言」と呼びます。
「真性異言」(xenoglossy ゼノグロッシー)とは、フランスの生理学者で心霊研究協会の会長も務めたシャルル・リシェの造語で、本人が習ったことのない外国語を話す現象のことを言います。
『新約聖書』などにも「異言」(glossolaria グロッソラリア)という現象が記述されていますが、「真性異言」は、その言語が特定の言語であることが確認されたものです。
このうち、特定の文章や語句だけを繰り返すものを「朗唱型真性異言」、その言語の話者と意味のある会話ができるものを「応答型真性異言」と呼びます。
さて、真性異言のうち、「朗唱型真性異言」は、「情報」ですから超ESPによって取得が可能と言えます。
しかし、意味の通った応答的会話ができる「応答型真性異言」は、そうではありません。
言語を自由に話せるというのは、「技能」であり、いくら単語や文型の情報を集めても、実際にかなりの訓練をしない限り、応答的会話は可能にはなりません。
自転車の乗り方をいくら本や映像で知っても、自転車に乗ることはできないように、言語も情報による伝達だけでは技能である「会話」まではできないのです。
つまり、「超ESP」によっても、「外国語の会話能力」は取得できないことは明白です。
こうして、ある人物が、前世の記憶を、その前世の外国語で語り、かつ現世の当人がその言語を学んだことがないと証明された場合には、超ESP仮説は適用できず、生まれ変わりの最も有力な説明仮説として採用せざるをえないということになります。
生まれ変わりの証拠である応答型真性異言は、スティーヴンソンが20年以上にわたって世界中から収集し精査した2000余の生まれ変わり事例の中で、わずか3例にすぎません。
「イェンセンの事例」と、「グレートヒェンの事例」、および「シャラーダの事例」です。
イェンセンとグレートヒェンの事例は、催眠中に偶発的に前世人格が出現したもので、前者はスウェーデン語、後者はドイツ語で、短い応答的会話によるやりとりが記録されています。
両者とも、アメリカ人女性が被験者です。
シャラーダの事例は、マラティー語しかしゃべれないインド人女性が、覚醒時に、きわめて長いベンガル語の会話で流暢に受け答えし、歌まで歌っています(『前世の言葉を話す人々』春秋社)。
スティーヴンソンの報告以外に信頼できる事例として、数名の科学者によって調査され、覚醒時にスペイン語で流暢な長い会話をした「ルシアの事例」の調査報告があります(心霊現象研究協会 (The Society for Psychical Research)。
つまり、世界中で信頼にあたいする応答型真性異言の事例は4例発見されており、そのうち2例が催眠下で起こった事例ということになります。
スティーヴンソンが、著書『前世を記憶する子どもたち2』P106で、「私は、自らの手で調べた応答型真性異言の2例が催眠中に起こったという事実忘れることができない。このことから私は、催眠を使った研究をけっして非難することができなくなった」と述べているのは、「イェンセンの事例」と「グレートヒェンの事例」を指しています。
私の出会った「ラタラジューの事例」は、世界で5例目の応答型真性異言であり、催眠中に起きた事例として世界で3例目の応答型真性異言に加えられてよいと自負しています。
そしてSAM前世療法の成立を支えているのは、SAM前世療法によってあらわれた応答型真性異言「ラタラジューの事例」が、超ESP仮説の適用を拒絶できるからにほかなりません。
(その45へつづく)
3 件のコメント:
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前世があるなら人口増加の矛盾はどう説明できるのですか?
生まれ変わりがあるなら肉体は母親からの新しく意識は再利用なのですか?
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SAM前世療法の実践では、魂表層の前世の者たちの数(生まれ変わり回数)が100、200は珍しくないようですし、生まれ変わりを経験していない新しい魂の持ち主もそう珍しくありません。したがって、人口増の計算は単純にはできないと思われます。
「肉体は母親からの新しく意識は再利用」という質問は、意味不明で答えられません。
コメントしてくださることはうれしいのですが、私はセッションで確認できた意識現象の事実に限定してしか答えられませんのでご海容ください。
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稲垣先生のブログを読むと死後意識の証明は難しいのかもしれないがブログの内容的に超能力や物理法則を超えた存在の証明はできないのかなと感じますがどうなのでしょうか?
先生が一番排除できないとしている超ESPも一般社会の価値観、常識的には認めていなく一般的には信じるか信じないかの段階なので先生のブログを読むと常識を変える何かの存在証明にはならないのでしょうか?
2012年から村上和雄の祈りの効果、矢作直樹の死生観やエベン・アレグザンダー医師の臨死体験など学者や医師による霊的な物の肯定番組や記事が多かったので輪廻転生や死後意識の有無関係なくそろそろ唯物論を覆す物を認めても良い時代なのかなと感じました。
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