2014年1月29日水曜日

SAM前世療法の成立 その47

総括その8 タエは里沙さんの前世の記憶か 
前の記事で、ワイスの事例を取り上げて私の疑問、すなわちセッション中のクライアントの語りは、前世の記憶であるのか、前世人格の顕現化であるのか、という疑問を提起しました。
そして、2005年6月に出会った「タエの事例」で、この疑問はますますふくれあがったと述べました。
ちなみに、2005年の時点ではSAM前世療法は開発されていません。
したがって、このときの「タエの事例」は、私がワイス式と呼んでいるワイスの前世療法の方法を用いています。
その考察のために、「タエの事例」の逐語録の抜粋(『前世療法の探究』春秋社、2005、PP165-168)を以下に示します。
記号THはセラピストの私、CLはクライアントの里沙さんです。
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TH その方はあなたのそばにみえますか? じゃ、コンタクトはとれますか?
CL はい。
TH じゃあ、私がいくつか尋ねるので、あなたからその方に尋ねて、答えをもらってください。そこでは言葉がいりますか?
CL いりません。
TH 心で思ったことが、ストレートに相手に伝わるわけですか。(CL頷く)じゃ、尋ねます。あなたがわずか16歳で、みなし子として貧しい生活の中で生きてきて、そして、みんなのための犠牲になって死ぬわけだけど、その短い人生で、あなたが学ばなければならなかったことは何でしょう? 私から見ると、ただ悲しいだけの人生に思えるんだけど。その方に聞いてみてください。なぜ、あなたはそんな人生を歩まなければならないのでしょう? 答えが返ってきたら教えてください。
CL ・・・みなのために、村を救う、みなを、幸せにするために、生きる人生だった。
TH あなたは、今、満足していますか? 自分のタエという人生を振り返って。
CL はい。
TH もう一つ聞いてもいいですか。今度は、できればあなたの口を借りて、その偉大な存在者と、お話することはできないでしょうか? 要するに、あなたに乗り移るということですよ。直接にその方の言葉で、伝えてもらえないでしょうか? できなければ無理は言いません。できたら、それをやってみたい。できますか?
CL ・・・はい。
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この後、タエの守護霊とおぼしき存在の憑依実験をすることになります。
私は、前世療法の核心に迫るために、中間世(霊界)の守護霊とおぼしき存在と直接対話することができないものか、その存在に対して、前世記憶の真偽を解き明かす質問ができないものか、という願いをかねてから抱いていました。
ワイスの「キャサリンの事例」では、催眠中のキャサリンに、マスターと呼ばれる霊的存在が、偶発的に憑依し、霊的情報を告げたことが述べてあります。
そうした霊的存在が偶発的に憑依を起こすとすれば、意図的に憑依を起こすことも可能ではないか、と考えたのです。
そこで、タエの守護霊とおぼしき存在の憑依現象が、催眠中に意図的に起こせるかどうか、起こせるとしたら、その存在が語る内容が、事実であるかどうかを検討可能であるような形に残す試みを、この絶好の機会を逃さないで実験してみようと決断しました。
里沙さんの表情と声の調子は、この守護霊とおぼしき存在者の憑依の後、また別人格のように一変します。
身体の動きがまったく止まり、表情は、ある威厳を感じさせるような、しかし能面のような顔に変化しました。声も、落ち着いてはいるが抑揚のほとんない、厳(おごそ)かで、くぐもった調子に変化しました。
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TH じゃ、一つ聞きますよ。そのあなたのいる魂の世界に、たとえば、私の愛する人が待っていて、生まれ変わりがまだなら、私もそこへ行けば会えますか?
CL はい。会えます。
TH もう、生まれ変わりをしていたらどうなりますか?
CL 必ず出会います。
TH 生まれ変わりをしていても出会えますか、魂どうしは?
CL はい。
TH もう一つ聞きますよ。今、あなたは偉大な存在者そのものになっていますね。じゃあその方は、時間も空間も超越していますから、今、私が、こうやって前世療法のセッションをしていることも、きっとお見通しのはずですね?
CL はい。
TH じゃ、聞きます。多くの人が、前世のことは現世に生まれ変わると、忘れて出てきません。でも今、里沙さんは深い催眠状態で前世のことを語ってくれましたが、もともと人間は、前世のことを忘れて生きるようにできていますか?
CL はい。
TH それを、無理矢理こうやって、催眠によってほじくり出すことは罪なことでしょうか? どうでしょう。
CL そうではありません。人を救う手段であります。人を救う手段であれば、罪なことではありません。あなたは、それができる人なので、たくさんの人を苦しみから救うことが使命であると。
TH 私の使命ですか。
CL そうです。
TH であれば、私がこうやって前世療法をやった後は、二人の人からとっても憔悴(しょうすい)しているように見えるそうです。命を縮めているんじゃないかって言われています。そういうことになっていますか? どうでしょう。命を縮めることですか。
CL 違います。できる限りたくさんの人を救います。
TH 分かりました。じゃあ私は、それを自信を持ってやっていいのですか?
CL はい。
TH 他に、私に伝えておかなければならないことがあれば、どうぞおっしゃってください。
CL 世界にたくさんの悩める人がいます。必ず出会います。力を尽くすよう。力を尽くしてお救いください。
TH はい。私はそういう道を進むのが使命ですか?
CL そうです。
TH もう一つ聞きます。大きな謎ですよ。おタエさんは、人柱となって16歳で短い一生を終えました。そのおタエさんの魂が、今、平成の現世では里沙さんとして生まれ変わっています。その里沙さんは、側湾症という治る見込みのない苦しい病に罹(かか)っています。なぜ、苦しみを二度も味わわねばならんのですか? いかにも不公平な人生ではありませんか。そのわけは何でしょう?
CL 魂を高め、人を救う道に位置付きし人です。
TH 里沙さんがそういう人ですか。
CL そうです。
TH じゃあ、側湾症になるということも、里沙さん自身が、あなたのいらっしゃる中間世で決められたことなんですか?
CL そうです。
TH それは、里沙さん自身が魂として選んだ道なんですか?
CL 「わたし」が選びました。
TH 「わたし」とは、魂の「わたし」なのか、それとも偉大な存在である「わたし」のことですか? どちらですか?
CL 魂の「わたし」が選びました。
TH もし、そのことを現世の里沙さんがはっきり自覚できたら、彼女は救われるでしょうか?
CL 救われます。
TH その苦しみを乗り越えるだけの力を得ることができますか?
CL できます。
TH また、聞きますよ。お答え願えますか? 浅間山の噴火のときに雷が起きましたか?
CL はい。
TH そのことを、雷神様と人々は言うのでしょうか? 雷のことを。
CL そうです。まだ、噴火、自然現象は分からない人たちですから、魔物のせいだと思ったのです。
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以上の逐語録の前半は、前提として、里沙さんの想起している前世のタエという16歳の少女の「記憶」として私は扱っているつもりでいました。
しかし、いつのまにか、私の意識は、ただいま、ここに、存在している、少女タエに向かって、現在進行形で対話しているのです。
そして、タエの守護霊とおぼしき存在が憑依したあとの私の意識は、そのような霊的存在と、明らかに現在進行形の対話をしていました。
こうして、タエを「前世の記憶の想起」として扱うことは、セッション中にあらわれた里沙さんの意識現象の事実からも、直感としても、受け入れることに無理があると思えたのです。
タエという前世人格そのものが顕現化し、里沙さんの発声器官を用いて、里沙さんとは別の人格として自己表現をしていると考えるべきではなかろうかということです。
同様に、守護霊とおぼしき存在との対話は、里沙さんの前世の記憶ではありえず、そのような霊的存在に憑依をしてもらったわけですから、里沙さんの前世の記憶として説明することはできるはずがありません。
一つの解釈としては、里沙さんが無意識のうちに守護霊の役割演技をして(守護霊のふりをして)対話したのだという説明が成り立つでしょう。
もし、私の直感が正しく、タエの人格そのものが顕現化したのだとすれば、そのような前世の人格は、いったいどこに存在していたのでしょうか。
これが、その後私を悩ませることになった大きな謎でした。
(その48につづく)

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