総括その10 タエの語りは里沙さんの前世の記憶の想起だろうか
2005年3月・6月に、里沙さんを被験者にワイス式でおこなった2回の前世療法で、私は「タエの事例」に出会いました。
そして、タエの語りは、里沙さんの前世記憶の想起として語られたというより、タエという前世人格が顕現化し、里沙さんとは別人格のタエ自身が語っていると解釈することが妥当ではないか、という強い印象を受けました。
この印象の妥当性を検討するきわめて貴重な資料が、セッション後に里沙さんが記してくれたセッション中の意識状態を内観(内省)した体験記録です。
この体験記録をお願いするにあたって、私は、催眠中に起こった意識内容を出来る限り詳しく思い出して書くように注文を出しました。
初めて出会ったきわめてまれな事例であったので、後の事例研究のために是非とも残しておきたかったからです。
下記に転載したのは体験紀録の抜粋です。(『前世療法の探究』春秋社、2006、PP221-222)
なお、1回目のセッションは2005年3月におこない、2回目のセッションは2005年6月におこなっています。
このうち、2回目セッションの録画が2006年10月のフジTV「奇跡体験アンビリバボー」に25分間取り上げられて紹介されています
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【転載はじめ】
1回目のセッションでは、稲垣先生の誘導により、暗闇のトンネルを進み、前世の世界の扉を開けることから始まりました。
次は、そのときの状態を、記憶に残っているままに書き留めたものです。
扉を開けると、まばゆい光の世界が見え、そこにもう一人の私がおりました。
前世の私と思われるそれは、姿も形もなく、無論男か女かも分からない、音も声もない、小さな光の塊ではありましたが、まちがいなく私でした。
そして、一瞬にして、すべてのものが、私の中に流れ込んできました。
私は、自分が何者なのかを知り、状況も把握できました。
私の前世は、タエという名前の女性で、天明三年に起きた火山の噴火を鎮めるために人柱となって、16歳で溺死するというものでした。
目の前に迫る茶色い水の色や、「ドーン」という音もはっきり分かりました。
水を飲む感覚、息が詰まり呼吸できない苦しさ、そして死ぬことへの恐怖、それは言葉では言い表すことのできない凄まじいものでした。
私は、タエそのものとして死の恐怖を体験しました。
(中略)
二回目のセッションでの私の望みは、できることなら痛みに耐えて、生きてゆく意味を、自分なりに見つけたいということでした。
このセッションは、70分という時間がかかったことを後で聞かされましたが、私には、せいぜい30分程度の感覚でした。
後でビデオを見せてもらいましたが、偉大な存在者の記憶は全くなく、そのあたりで時間のズレができたのではないかと思います。
ただし、タエと、ネパール人と、中間世の魂となっている部分の記憶は、催眠から覚醒しても、ハッキリ覚えていました。
次は、二回目のセッションの記憶を書き留めたものです。
前回と同じように、扉を開けると、あっと言う間に、私は13歳のタエで、桑畑で桑の実を摘んで食べていました。
私がそのタエを見ているのではなく、私自身の中にタエが入り込んでくるという感覚でした。
稲垣先生から、いろいろ質問がされましたが、現世を生きている私が知るはずもない遠い昔の出来事を、勝手に口が動いて、話が出てしまうという状態でした。
それは本当に不思議なことでした。
【転載おわり】
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さて、検討したい個所は次の記述です。
扉を開けると、まばゆい光の世界が見え、そこにもう一人の私がおりました。
前世の私と思われるそれは、姿も形もなく、無論男か女かも分からない、音も声もない、小さな光の塊ではありましたが、まちがいなく私でした。
そして、一瞬にして、すべてのものが、私の中に流れ込んできました。
私は、自分が何者なのかを知り、状況も把握できました。「まばゆい光世界」にあって「姿も形もなく」、男女の性別もわからない、小さな光の塊であるような自分である自覚が認められ、一瞬にしてすべてのものが、私の中に流れ込んできた、そして自分がタエという名の16歳の少女であり、そのときの状況も把握できた、と里沙さんは言います。
さらに、タエそのものとして、泥流によって溺死した体験をした、と記述しています。
2回目のセッションでは、あっという間にタエになっており、それは「自分のなかにタエが入り込んでくるという感覚」であったと記述しています。
また、そのようなタエが話すときは、「勝手に口が動いて話が出てしまう状態」だったと言います。
このような意識状態になったという記述をありのままに受け入れるとしたら、どのように説明がつくのでしょうか。
里沙さんが、このセッションで「記憶催眠」レベルの催眠深度に達していたことは、標準催眠尺度によって確認しています。
そのような深い催眠状態に至って、里沙さんは自動的に「魂状態」になり、その「魂状態」になったそのときに、タエという前世の別人格が一瞬にしてあらわれた、と考えることができるのではないでしょうか。
里沙さんとタエとは別人格であるので、タエの人格が話すときには、里沙さんの発声器官を借りて、タエ自身が話すことになる、したがって里沙さんの意志ではないのに「勝手に口が動いて話が出てしまう」という自覚を持たざるをえなくなってしまうのでしょう。
ただし、催眠学的解釈をすれば、こうしたタエという人格があらわれたようにみえる現象は、里沙さんの無意識的に起こした「役割演技」だとみなすことが可能です。
実際に「記憶催眠」レベルは、「人格催眠」レベルとも名付けられており、このレベルの催眠深度に至れば、人格変換、つまり、役割演技を引き起こせることが分かっているのです。
しかし、役割演技としてあらわれたタエという架空の人格が、里沙さん自身の入手していない正確な情報を話せるはずがありません。
タエの語りの内容の史実との一致率は80%を上回っています。
残り20%弱の語りは、検証不可能であり、結局、タエの語りについての明確な誤りはなかったのです。
そして、2009年に実施したポリグラフ検査によって、タエの語り内容の情報を、里沙さんが事前に入手していていた可能性は否定できるという鑑定結果が出ています。
つまり、タエは、里沙さん自身の知らない天明3年浅間山大噴火にまつわる諸情報を語ったということです。
(その50につづく)
8 件のコメント:
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少しずつ認められつつあるのですね
しかし世の中の常識を変えたり社会の価値観や公の場の教育などの場で持ち込めるような証明にはならないのですね
ブログを見ると唯物論解釈でメジャーな過去の記憶の捏造説の反論をクリアしてるので従来の唯物論の覆えにはならないのか?と感じます
真性異言自体「スピリチュアル対科学」の番組で前世の記憶のテーマになった時紹介されなかったり苫米地英人など懐疑派の人の意見は殆ど過去の記憶や胎児記憶で片付けられてしまいます
臨死体験の場合は再現不可能なのもあるし懐疑派は現象全体として扱い「体験中にその時刻でしか知り得ない情報を知った事実」や「盲目者(生まれつきも含む)の体験」などについて説明していなく追及してる側から見れば番組は肯定派に対して控え目な気がします
ニュース記事も肯定よりは雑報の類でYahoo記事やmixiニュースには載らず一方否定よりの方は新聞にまで載ります
そう言えばレイモンド・ムーディ博士が鏡視方法を発明したという動画を見たことあります
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生まれ変わりに否定的な、あるいは懐疑的な唯物論陣営側の人々は、生まれ変わりの濃厚な事例を提示されると、きちんとした事実の検討をしないで、そのような非科学的な奇怪な現象が起こるはずがないという先入見から、否定することに躍起になります。唯物論の知見に「認知的不協和音」を感じるからでしょう。否定できないとなると無視を決め込みます。既存の唯物論の体系では説明できない事実を「非科学的だ」と切り捨てて顧みないのは、事実の示す重さを軽視・無視する非科学的な態度だと思わざるをえません。こうした態度を超心理学者笠原敏雄氏は、「心理的抵抗」と呼んで批判しています。
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>稲垣勝巳さん
脳科学の番組の人、特に茂木健一郎さんや苫米地英人さんなどテレビ番組に出演している科学者は否定してますね。あと大槻義彦さんなど
大槻義彦さんの場合は唯物論者として有名なので否定されても驚かないが茂木さんや苫米地さんの場合は難しい用語使って「証明された」と言うのでそこが手強いですね
しかし現在の脳科学は人の心まで分かったり変えたり出来るので本当に心と体は別なのか疑問が大きくなります
最近はエベン医師や矢作さんなど肯定学者も出てきた一方脳科学も発展してるので肯定されてくるのか否定されるのか
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W・ペンフィールド、J・エックルズ、R・スペリーなどノーベル賞を受賞した脳科学者が、晩年になって、自らの実験研究をもとに「心・脳二元論」を唱えています。催眠研究者九大名誉教授成瀬悟策医博も、80歳過ぎて「脳は心の家来です」という言い方で心・脳の二元論に至っています。もちろんこうした科学者は圧倒的少数派です。一方、科学的に確定された手続きによって、心(意識・潜在意識)が脳の随伴現象であることの科学的実証はなされていません。
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う~ん霊魂は物質なのか?
先程昨日発表された宇宙記事で「暗黒物質は存在しないかもしれない」という霊魂の存在を脅かす記事を見つけました。http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=shitteokitaikoto&articleId=11771280476&guid=ON
今までは通常の物質を超える暗黒物質(ダークマター)という観測できない存在が想定されていたが今回の研究でそれが否定されてこの物質世界で還元できるという宇宙科学的には否定されてきてしまってるようですが
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暗黒物質と霊魂の関係性については、私の守備範囲を超える難題です。
SAM前世療法の示す意識現象の事実から想定できることは、霊体と肉体(物質)とは何らかの共通の性質があるだろうということです。誤解を恐れずにいえば、霊体はいくぶんか物質的な性質を帯びているに違いないということです。と言っても、霊体に質量があるわけではないようです。
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霊魂の存在はペンローズとハメロフの二元論の改良型の量子脳理論に期待ですね
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催眠学は心理学の一領域ですが、深い催眠状態において、他の霊魂との接触現象や、憑依現象が「意識現象の事実」として観察されます。こうした現象の解明に、心理学や精神医学は正対することをしないで、腰が引けるか無視を決め込みます。あるいは、妄想として処理します。
むしろ、最新の量子力学理論が霊魂の解明に有力な手がかりを与えてくれるかも知れません。
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