その3からの続き
ここからは、里沙さんに憑依してもらった「偉大な存在者」、いわゆる彼女の守護霊との対話である。この守護霊との対話は25分間続いた。これは、催眠を用いて、意図的に憑依させた霊との対話実験というほうが適切である。この守護霊との対話実験は、この場で思いついたインスピレーションである。タエの魂が「偉大な存在者」と出会い、対話できたことを報告したので、それならばその存在と私が直接対話することが可能であるかどうか、試みることを思いついたわけである。この守護霊との対話は25分間続いた。前世療法中に、こうした霊的存在との対話実験がおこなわれたという話を、私は寡聞して知らない。私にとって、初めての冒険的試みであった。
CO:じゃ、一つ聞きますよ。そのあなたのいる魂の世界に、たとえば、私の愛する人が待っていて、生まれ変わりがまだなら、私もそこへ行けば会えますか?
※この質問は、セッション見学者小野口裕子氏(現可児市教育委員)から依頼されていた。機会があれば是非探ってほしいと依頼されていたので、質問してみたということである。
CL:はい。会えます。
CO:もう、生まれ変わりをしていたらどうなりますか?
CL:必ず出会います。
CO:生まれ変わりをしていても出会えますか、魂どうしは?
CL:はい。
※先に他界し、生まれ変わりをすでにしている魂に、後で他界した魂が、霊界でにおいてなぜ「必ず出会える」のか? 里沙さんの守護霊との対話実験再セッションでその謎を告げられている。霊界において魂は、「類魂(グループ・ソウル)」という、魂どうしがひとまとまりの集団を形成しているという。生まれ変わりは、この類魂から一個の魂が分離され生まれ変わりの旅に出る。ただし、分離するとはいえ、類魂に分身を残している。したがって、霊界には分身としての魂が常在しているということになる。だから、後で霊界に来た魂は、先に霊界に来ている「魂の分身」と「必ず出会える」ということらしい。彼女の守護霊は、自分は霊界では異例の存在だと言う。その訳は、自分は稲垣に霊界の消息を教えることが使命になっているからだということであった。こうした経緯があるので、私は里沙さんの守護霊を信頼し、憑依してもらっては霊界の情報を入手している。霊的現象や霊界のことは信頼できる霊界の住人に聞け、というのが私の探究方法である。
CO:もう一つ聞きますよ。今、あなたは偉大な存在者そのものになっていますね。じ ゃあその方は、時間も空間も超越していますから、今、私が、こうやって前世療法のセッションをしていることも、きっとお見通しのはずですね?
CL:はい。
CO:じゃ、聞きます。多くの人が、前世のことは現世に生まれ変わると、忘れて出てきません。でも今、里沙さんは深い催眠状態で前世のことを語ってくれましたが、もともと人間は、前世のことを忘れて生きるようにできていますか?
CL:はい。
CO:それを、無理矢理こうやって、催眠によってほじくり出すことは罪なことでしょうか? どうでしょう。
※この問いは、前世療法に携わるようになってから、私が抱き続けてきた畏れである。
CL:そうではありません。人を救う手段であります。人を救う手段であれば、罪なことではありません。あなたは、それができる人なので、たくさんの人を苦しみから救うことが使命であると。
※この守護霊の回答は、裏を返せば、人を救う以外の目的に用いてはならないということである。
CO:私の使命ですか。
CL:そうです。
CO:であれば、私がこうやって前世療法をやった後は、二人の人からとっても憔悴(しょうすい) しているように見えるそうです。命を縮めているんじゃないかって言われています。そういうことになっていますか? どうでしょう。命を縮めることですか。
※実際、この「タエの事例」のセッション直後には疲労困憊し、膝ががくがくになって歩行がままならない状態に陥った。前世療法は、セラピストの命を縮める所業ではないかと真剣に心配していたのである。
CL:違います。できる限りたくさんの人を救います。
CO:分かりました。じゃあ私は、それを自信を持ってやっていいのですか?
CL:はい。
CO:他に、私に伝えておかなければならないことがあれば、どうぞおっしゃってくだ さい。
CL:世界にたくさんの悩める人がいます。必ず出会います。力を尽くすよう。力を尽くしてお救いください。
CO:はい。私はそういう道を進むのが使命ですか?
CL:そうです。
CO:もう一つ聞きます。大きな謎ですよ。おタエさんは、人柱となって一六歳で短い 一生を終えました。そのおタエさんの魂が、今、平成の現世では里沙さんとして生まれ変わっています。その里沙さんは、側湾症という治る見込みのない苦しい病に罹(かか)っています。なぜ、苦しみを二度も味あわねばならんのですか? いかにも不公平な人生ではありませんか。そのわけは何でしょう?
CL:魂を高め、人を救う道に位置付きし人です。
CO:里沙さんがそういう人ですか。
CL:そうです。
CO:じゃあ、側湾症になるということも、里沙さん自身が、あなたのいらっしゃる中間世で決められたことなんですか?
※「中間世」と「霊界」とは同義として用いる。中間世は前世療法でもっぱら使用される。霊界という用語は宗教色が濃厚であるので敬遠されていると言えよう。
CL:そうです。
CO:それは、里沙さん自身が魂として選んだ道なんですか?
CL:「わたし」が選びました。
CO:「わたし」とは、魂の「わたし」なのか、それとも偉大な存在である「わたし」 のことですか? どちらですか?
※この質問のニュアンスは微妙である。後に分かってくることであるが、「偉大な存在者である私」は類魂そのものである、と「偉大な存在者」が答えている。したがって、「魂のわたし」は、類魂を構成している存在であり、類魂である「偉大な存在者」の構成員でもあることになる。推測するに、類魂の一員としての里沙さんの魂が、類魂全体の意志を担って魂を高めるための生まれ変わり(脊柱側湾症の苦難の道)を選んだということであろう。つまり、類魂とそこに所属する里沙さんの魂とは一体であり、不可分の存在だと思われる。そして、類魂においては、そこに所属する個々の魂どうしが、それぞれの生まれ変わりにおいて獲得してきた智慧を分かち合い、類魂全体の霊的成長・進化を図るようになっていると言う。ただし、このセッション時点で、私には上記のような霊学的知識の素養はまったくなかった。
CL:魂の「わたし」が選びました。
※「魂のわたし」とは、「類魂全体としてのわたし(偉大な存在者)」でもある、と解釈してよいと思われる。
CO:もし、そのことを現世の里沙さんがはっきり自覚できたら、彼女は救われるでしょうか?
CL:救われます。
CO:その苦しみを乗り越えるだけの力を得ることができますか?
CL:できます。
CO:また、聞きますよ。お答え願えますか? 浅間山の噴火のときに雷が起きましたか?
※噴火による火山灰の摩擦によって火山雷と呼ぶ雷が生じる。天明三年浅間山大噴火の火山雷のすさまじさは、当時の絵図に描かれている。
CL:はい。
CO:そのことを、雷神様と人々は言うのでしょうか? 雷のことを。
CL:そうです。まだ、噴火、自然現象は分からない人たちですから、魔物のせいだと思ったのです。
CO:龍神様はなんのことでしょう?
CL:浅間山は信仰の山です。龍神が祀られています。
※浅間山に龍神信仰があったことは、浅間山麓嬬恋村の住人によって確認した。「偉大な存在者」はいい加減なことを告げているわけではない。
CO:その龍神が、お山が火を噴いたために住めなくなって、川を下るというように人々は思ったわけですね。
CL:そうです。
CO:それから、そのときの噴火によって空が真っ暗になって、日が射さなくなって、 火山灰が降り注いで、農作物は不作になりますよね。その結果、下界ではどんなこと が起きたのでしょう?あなたはご存じのはずですが、教えてもらえますか?
CL:噴火による土石流で川が堰(せ)き止められ、そのため洪水が起き、たくさんの人が亡くなりました。
※この事実が「浅間焼泥押(あさまやけどろおし)」と呼ばれる大泥流洪水の被害である。吾妻川、利根川流域で流死者1500人あまりが出た。この時点で、私はこうした史実をまったく知らなかった。もちろん里沙さんも知らない。それは2009年のポリグラフ検査で確認できた。
CO:その川の名前が吾妻川でしょうか?
CL:そうです。利根川の上流になります。
※私は吾妻川の実在はもちろん、それが利根川の上流で合流していることもまったく知らなかった。もちろん、里沙さんも知らない。里沙さんの知らない「浅間焼泥押」の被害や吾妻川が利根川の上流になっていることを「偉大な存在者」が語っている。里沙さんが、超ESP(万能の透視能力やテレパシー)を用いて、「浅間焼泥押」被害や吾妻川の情報を入手して、「偉大な存在者」として役割演技をして語っているという、超ESP仮説および、催眠学による説明、つまり、里沙さんの心の力ですべて説明するには無理があると私は思う。ちなみに、私は、このセッションで、宗教色を薄めるために「偉大な存在者」と表現しているが、守護霊と呼ばれている存在と同義である。
その5へ続く
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