2012年3月30日金曜日

解離性同一性障害(多重人格)の考察

前ブログでインナーチャイルドの考察をしましたので、インナーチャイルド 現象と類縁性があると思われる解離性同一性障害(多重人格)について考察をしてみます。
筆者は、SAM前世療法の作業仮説に基づき、顕現化する多重人格の各人格(副人格) は魂の表層に存在する「前世のもの」が、主人格(現世のもの)を人格崩壊から守るために、自動的に(勝手に)顕現化する現象ではないかという可能性を抱いていました。
その根拠は、「タエの事例」、「ラタラジューの事例」を語った里沙さんに、それぞれのセッション後、数回に渡ってタエとラタラジュー人格が自動的に顕現化して、里沙さんに訴えるという現象の報告を受けていたからです。
ただし、里沙さんには、自動的に顕現化しているタエ、ラタラジューについてモニターしている自覚があるといいます。
解離性同一性障害(多重人格)の場合、主人格には、顕現化中の副人格との連絡はないとされています。つまり、主人格は、顕現化中の副人格について何も知らない、分からないということです。
検証結果の結論から言うと、筆者の仮説は、以下に報告するクライアントにおいては成り立ちませんでした。
このクライアントは、22歳会社員の男性です。
2年前から、強いストレスにさらされると、六つの人格が交互にあらわれ、その各副人格顕現化中の記憶がない、という症状に悩んでいるという主訴でした。ただし、勤務継続に支障が出るには至っていませんが、勤務先周囲は人格交替が起こるらしいことに気づいて見守ってくれているということでした。
両親離婚後、再会した母親からのセッション依頼でおこなったセッションです。
クライアントには、幼くして両親離婚、父方に引き取られて育つ過程で相当な精神的虐待を受けていたという生育歴がありました。
主治医の精神科医からは、「解離性同一性障害」の診断を告げられているということでした。
日本では、解離性同一性障害の報告はきわめて少なく、筆者も初めて扱った事例です。
母親立ち会いのもとに慎重に催眠誘導をおこない、魂状態の自覚まで導くと、次から次へと六回の人格交替が起こり、それぞれの副人格が現れました。以下が六つの副人格です。
①正体不明の怒りと苦しみの唸り声を発するだけの男性(ヒーリングして落ち着かせました)
②目に疾患を持つ幼い少女とそれを治療する眼科医(いつもペアで現れるとのこと)
③37歳の落ち着いた知的な女性
④お茶目な若者
⑤落ち着いた老人
⑥五つの副人格たちのリーダーを名乗るもの静かな青年
六つの人格は、それぞれの声音と話しぶりが明確に異なり、それぞれ独自の個性を持つ人格を思わせました。
これら六つの副人格どうしは、互いの存在を知っていますが、主人格は副人格についてまったく知らないという典型的な多重人格(DSM-ⅣーTRによる解離性同一性障害)の症状でした。
対話のできた②③④⑤⑥の副人格に、「あなたは魂の表層にいる前世のものではありませんか?」と尋ねると、回答は全員「ノー」でした。
「ではあなたは、どういう存在ですか?」と尋ねると、「この人(主人格)を守るためにいる」という回答でした。
「この人は、あなたが勝手に現れるので困っています。もうこの人は大丈夫ですから、この人と一つになって勝手に現れることをやめてくれませんか」と繰り返し説得しました。
②③④⑤の副人格は説得に応じ、「この人と一つになる(人格統合する)」と約束してくれましたが、⑥の副人格は、①の凶暴な怒りを持つ副人格が落ち着くまでリーダーの自分が面倒をみる必要があり、まだ一つになることは危険であるので、当面の約束できない、と拒否しました。
結局、①と⑥の副人格は、主人格との統合を最後まで拒否したので、ここで今回のセッションは終結としました。予後を見守り、必要があれば再セッションすることにしました。
こうした、意識現象の事実から、このクライアントにおける副人格は、魂の表層の「現世のもの」が、自分の人格を守るために作り出した架空の人格ではないか、と考えざるをえませんでした。
 
したがって、多重人格症状における「副人格」=「前世人格」、という筆者の仮説は、この事例からは成り立つ余地はなさそうです。
それにしても、解離性同一性障害(多重人格)において、「架空の副人格が顕現化する」という症状解釈が成り立っているとすれば、前世療法においても、「前世の記憶の想起」ではなく、「前世人格の顕現化」という解釈を、なぜこれまでの前世療法士はしてこなかったのでしょうか。
前世療法において観察できる意識現象の事実を、ありのままに受け取れば、クライアント自身が前世の記憶を語っているのではなく、前世人格が顕現化して対話していると考えることのほうが、はるかに自然であろうと思われるのです。

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