2022年7月20日水曜日

死後存続仮説の科学性を広めるための戦略

SAM催眠学序説 その152                              

 

以下の点線内は、拙著『前世療法の探究』春秋社、の編集者鷲尾徹太氏からいただいた、わたしのブログ「生まれ変わりの実証的探究」に対する提案です。    

氏は春秋社の編集部にあって、『前世の言葉を話す人々』イアン・スティーヴンソン著/笠原敏雄訳、など数々の超常現象を扱った本の編集者として、実績を残しておいでになる「確信的スピリチュアリスト」を自称している人物です。                                      氏は、超心理学者の笠原敏雄氏、『霊の探究』春秋社、の著者筑波大の津城寛文宗教学博士とも著作の編集を通じて親交があり、死後存続の科学的研究をはじめ、SPR(英国心霊研究協会)の数多くの研究内容や研究史に通暁している在野の超心理学研究者でもあります。

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前世療法が含意している「前世」、つまり「死後存続仮説」は、今の科学(医学や臨床心理学や人文科学を含む)が標榜している「唯物論」とは鋭く対立します。             

これに対して、前世療法(ないし死後存続仮説)を擁護する側としては、どのように対応すべきなのでしょうか。                           

いくつかの戦略をあげてみます。                           

①実証事例をなんとかして集め、それを積み上げる       

これまで120年におよぶサイキカル・リサーチ(SPR・心霊研究)および超心理学はこの闘争でしたが、これは実に困難な闘いでした。唯物論側は様々な誹謗や奇説(超ESP仮説)を繰り出して、それらの信憑性を否定してきました。                     

また反唯物論的現象の希少性や「とらえにくさ問題」もあって、成果ははかばかしくありません。 (こうした歴史については、笠原敏雄編著『サイの戦場』や同氏のホームページ「心の研究室」、明治大学教授石川幹人氏のサイト「メタ超心理学研究室」かっこ(http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/などをぜひ参照してください。)        

この道で最もめざましい成果を上げたのは、イアン・スティーヴンソンの研究でしょう。 

彼は厖大な時間と手間をかけて、2000に及ぶ信憑性の高い再生事例を収集したのみならず、否定論者の最後の盾、「超ESP仮説」を棄却しうる「応答型真性異言」や「前世記憶と一致する先天性刻印(birthmarks)」の事例をもつきとめ、死後存続説の擁護に大きく貢献しました。                                  (このことの簡単な説明は、東京スピリチュアリズム・ラボラトリーのホームページ、http://www.k5.dion.ne.jp/~spiritlb/3-3.htmlを参照してください。)     

ところが、こうした実証に対して、唯物論体制は、「無視」という態度で応戦しています。

スティーヴンソンは、4巻にわたる精緻な研究書『再生と生物学』が、広く注目を集めなかったことに失望していたと言います。                       

死後存続否定論者が、彼の研究をきちんと読んだ後に批判をしているという例は、皆無だと思います。                                     

なお、この立場で戦う研究者は、だいたい死後存続仮説を「受け入れている」とは表明しません。                                      そう表明するだけで、信憑性が疑われると思われてしまうのです(実はこれは奇妙な話で、例えば宇宙の暗黒物質に関する研究では、当人がそれを信じているかどうかは問題にされません。)                                      反唯物論現象のみこうした要求があるのです。 

                                         ②唯物論や実証主義の論拠自体が絶対ではないことを論証する               

実は、唯物論や科学や実証主義自体、絶対完璧の基盤を持っているわけではありません。    

唯物論自体は憶説に過ぎませんし、実証主義、数理論理主義、基礎物理学なども、つきつめていくと、様々な論証不能性の壁にぶち当たります。                 

また、科学や医学などを作り上げている知識のある部分は、「欺瞞」や「思い込み」や「政治性」などに汚染されています。                           

一般の人はもちろん、正当科学に従事する人の多くも、こうした議論を知りませんが、現代哲学や物理学の先端では、「実証」という概念も成立しなくなってきているのです。     

こういった議論は、しばしば難解ですが、案外楽しいものです。            『七つの科学事件ファイル』『背信の科学者たち』といった暴露書、渡辺幹雄『リチャード・ローティ』などの現代哲学ものなど、エキサイティングな本もたくさんあります。                

③権威からの白眼視などどこ吹く風で、やることをやる                 

へたをすると、狂信家、頭の不自由な?オカルティストと変わらなくなってしまう危険性があります。当人の知性、人格、(論争史など)学史的知識などが、きびしく問われることになるでしょう。 

④大衆の支持に訴える   

アカデミズムの権威などに関係なく、唯物論信仰に深く汚染されていない、多くの“一般大衆”(こういう表現は反発を買うでしょうが、あえてこう表現しておきます)は、反唯物論的現象への拒否反応も少ないようです。                        

むしろ、「ニューエイジ」の流行や、「何たらの泉」現象に見られるように、唯物論の支配を脱しようとする動きは、ますます大きくなっているようにも思われます(疑わしい部分もありますが)。                                  

アカデミズムの威光の衰退も、かなり顕著になってきているような気配もあります。 ひょっとしたら、ニューエイジャーの言うように、人類は意識革命をしつつあるのかもしれません。                                     ともあれ、そうした動きと連動する道を探るという戦略です。               

ただし、③と同じく、へたをすると「怪しいオカルティスト」と変わらなくなるでしょう。  

前世療法を擁護したい人、特に実践者は、①の立場をある程度は保持してもらいたいと願う次第です(現実にはめったに実証性のあるデータは出てこないかもしれませんが)。   

しかし、③や④の戦略もまた「あり」かなとも思います。                

特に言いたいことは、③の道において、「死後存続仮説を受け入れる」という表明は、サイキカル・リサーチ(SPR)や超心理学、特にスティーヴンソンの研究が蓄積されている現在、まったく「理性を疑われる」ようなものではなくなっているのではないかということです。

つまり、ちゃんと勉強すれば、論拠は十分にあるよ、と言えるようになるはずだと思います。  

逆に、態度を留保しているような表現を重ねている(あるいは人生論ないし思想という安全枠に逃げている)一部の「前世物書き」(しかも実証の努力もしていない人々)は、不徹底なのではないかと思います(まあ、職を失うのは誰でもこわいものでしょうが)。 

また、④の道を探れば、あまり細かいことを言わずに、「何でもあり」でやってみる、前世想起体験をしてみたい人にどんどんやってあげて、納得する人が少しでも増えればOK(こういう表現は少し不埒ですね)というのもありかな、などと思う次第です。

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こうした鷲尾氏の示唆を受けて、わたしは死後存続仮説の科学性を広めるために上記①~④の戦略を愚直に実践してきたことは言うまでもありません。                     これまでの本ブログの諸記事も、その一端です。

鷲尾氏が当然のことながら、死後存続仮説を検証しようとするわたしの、SAM前世療法の実践に強い関心を抱かれたことは言うまでもありません。                 

催眠と超常現象(心霊現象)が接触することは古くから知られていることで、鷲尾氏もそうした催眠に対する並々ならぬ知識をお持ちでした。                  そして、成瀬悟策医学博士主催の臨床催眠スクールにわたしと同期で受講しておいでになっていたことが後でわかりました。

そこで、氏の要望もあったので当研究室にお招きし、SAM前世療法の実体験をしてもらうことになりました。                                     

そのときのエピソードを紹介します。

鷲尾氏の主訴は次のようなことでした。                       

「自分は、イエス・キリストの教えに違和感はないが、キリスト教会および教会組織に、なぜか強い嫌悪感がぬぐえない。そうした現世の自分には思い当たることのない強い嫌悪感がなぜ湧き起こるのか、その理由が前世にあるのかを探ってほしい」ということでした。

 SAM前世療法の催眠誘導定式にしたがって、魂状態にまで遡行してもらい、主訴にかかわりのある前世人格の顕現化に成功したところで、その前世人格との指での対話によるセッションで明らかになったなったことは次のような内容でした。

「自分は、キリスト教から異端の烙印を押されたカタリ派の修道士であった。正統派であるカソリック教会の迫害を恐れて、ピレネー山脈の奥地に潜み、密かにカタリ派の教義を守り続け、修道士として信仰生活を守り続けていた。しかし、ついに迫害者の知るところになり、捕らわれ、異端者として処刑され、人生を終えることになった」

セッションを終えて、氏は、「ようやく長年ひっかかり続けてきたわだかまりが氷解した。それにしても、SAM前世療法による『魂遡行催眠』の技法は、これはいいですねえ」と語っています。                                       

 氏が、カタリ派の修道士であったかどうかの真偽の検証はもとよりできませんが、SAM前世療法によって、前世の修道士の人格が顕現化し、「ああ、そうか体験」がおこなわれ、主訴に対して「感情をともなった納得(洞察)」がなされたことはほぼ間違いないと思っています。

そして、「タエの事例」において、わたしが、とっさに里沙さんの守護霊との対話を試みたことは、交霊会に通じる天才的なひらめきだ、と身に余るお褒めの言葉をいただきました。

一介の小中学校教頭だったわたしの持ち込み原稿を高く評価し、「編集者生命にかけて春秋社から出版します」と督励し、約束し、発刊していただいた鷲尾氏の編集者精神と使命感を忘れることはできません。

こうして、拙著『前世療法の探究』は、共同通信社の注目するところとなり、取材を受け、顔写真入りで全国の地方新聞のコラム「人物点描」の記事として配信されることになりました。

それがフジTV「アンビリバボー」で注目され、「タエの事例」が放映されるという連鎖反応へとつながっていくことなったのです。                       

そうしたこともあってでしょうか、本ブログを読み、これまでに大学教授15名ほど(国立大教授4名)、医師10名ほどがSAM前世療法のセッション体験においでになっています。                                       そのうち3名(国立大1名、私立大2名)が、当催眠塾に入塾、卒業しています。

 こうした注目に一番喜んでいただいたのは 、ほかならぬ鷲尾徹太氏でした。       氏のご助力なしで、わたしはけっして世に出ることはありませんでした。

 

参考までに、近代スピリチュアリズムを知るための図書として鷲尾氏から推奨していただいた本を下記に紹介しておきます。

 『近代スピリチュアリズムの歴史』三浦清宏、講談社、2008、¥1900 、314ページ。         

副題は、「心霊研究から超心理学へ」となっており、本の帯には「守護霊、オーラ、ポルターガイスト、念写、心霊現象は物理現象か」と記されています。「研究の歴史を詳細に検証する本邦初の労作!」とも。                

著者は昭和5年生まれ、明治大学で英語の教鞭をとった芥川賞作家であり、日本心霊科学協会理事でもあります。確信的スピリチュアリストであろうと思います。

イアン・スティーヴンソンの著作とともにわたしの愛読書になっています。


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