SAM催眠学序説 その82
未浄化霊という霊的存在について、下記、私あて第12霊信で、「この世に残る未成仏霊のような存在は、残留思念の集合体である」と告げています。
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この世に残る「未成仏霊」のような存在は、残留思念の集合体である。
だが、それらは意志を持つようにとらえられる。
よって、魂と判断されがちだがそれらは魂とは異なるものである。
それらの持つ意志は意志ではない。
なぜ、それらが意志を持つものだととらえられるのか、そして、魂が別の道をたどりながらそのような意志を残すのか。
それを残すのは、その魂ではない。
それらを管理するのは神である。
それらは計画の一部である。
転生し旅を続けるものに対する課題として必要なものである。
その詳細への説明は与えるものではない。
あなた方は、なぜそのような仕組みになっているのか答えを待つのではなく、自らが探究して得るべきなのだ。
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通信霊の告げている、未成仏霊は残留思念の集合体である、という説を採用すると、インナーチャイルド、多重人格にあらわれる副人格、生き霊といった現象も、「強烈な思念の集合体であり、それらは意志を持つ人格のように振る舞う」という仮説が成り立つのではないか、というのがここでのテーマです。
なぜなら、SAM前世療法のセッションにおいて、たしかに未浄化霊を名乗る霊的存在が顕現化する意識現象があらわれ、「残留思念の集合体」であるにもかかわらず、あたかも意志を持った一個の人格として振る舞うからです。
このことをさらに考察しますと、「憎悪・悲哀・嫉妬などの強烈な思念」、つまり「強烈な負の意識」が凝縮された集合体になると、それが一個の人格的存在を創出することがある、という仮説が成り立つと思われるのです。
この仮説を裏付けるセッションで確認してきた「意識現象の事実」を三つ挙げてみます。
1 インナーチャイルドは「記憶」ではなく、解離している子どもの人格的存在ではないか
魂の表層には「現世のもの」が位置付いています。
この「現世の者」は、現世に誕生して以後の現世での潜在意識・意識を作り出している者ということになります。
したがって、魂の表層の「現世の者」に、インナーチャイルドと呼ばれる「子どもの人格」が内在している、と考えることになります。
つまり、インナーチャイルドを、成長していく大人の人格から取り残され、解離している「傷ついている子どもの人格」そのものとして扱うわけです。
「大人の私」の人格が、子どもであったときに傷ついた記憶を想起して語る、という立場をとりません。
以上の仮説に基づき以下の手順で、SAM前世療法によるインナーチャイルドセラピイを実験的におこないました。
被験者は、32歳男性です。
彼は、自分に向けられた叱声はもちろん、他人が受けている叱声にも、幼児のように過剰に反応し、異常なほどの恐怖感と激しい動悸に襲 われるという症状を持っていました。
特に大声で叱声を浴びると、耐えられないほどの恐怖感と動悸に襲われると訴えました。
そこで、インナーチャイルドセラピイを試みたというわけです。
①魂遡行催眠まで誘導し、魂の自覚状態に至っていることを確認する。
②魂の表層の「現世の者」を呼び出し、顕現化させる。
③「現世の者」の内部に存在する、症状を作り出すことによって、苦しみ訴えている「子どもの私」の人格を呼び出す。
④「子どもの私」の人格が、どのような原因から傷つき、苦しんでいるのかを対話によって聞き出す。
⑤苦しみに共感的理解をしてやりながら、さらに癒しが必要だと訴えればヒーリングをおこなう。
その結果、呼び出しに応じて現れた被験者の「子どもの私」の人格は2歳でした。
子どもどうしで遊んでいるときに、遊び相手の子どもと大声でわめき ながらオモチャの奪い合いになり、そのオモチャで気を失うほど激しく殴られたということでした。
その傷つきの恐怖体験を持つ「子どもの私」の人格が、「大人の私」に、類似のことが起こる度に恐怖感と動悸を起こさせて、自分の傷つきを訴えているということでした。
この恐怖感の訴えは、結果として「大人の私」への危険な事態に対する警報となって、「大人の私」を守るはたらきをしていると思われます。
こうした対話をした後、この「子どもの私」にヒーリングをし、「大人の私」と一つになるように説得してセッションを終結しました。
もう1例は、30代女性の事例です。
このクライアントの主訴は、家庭外で昼食をとるときに決まって起こる腹痛の改善でした。
良好な深い催眠(記憶催眠)状態を確認し、主訴に関わるトラウマが生じた時点まで年齢退行をしてみました。
その結果、小学校3年生のときに生じたトラウマであることを確認しました。
このクライアントはSAM前世療法の体験者です。
そのため、どうやら記憶催眠から魂遡行状態に移行した時点で、トラウマを訴える小学校3年生の少女の人格が顕現化しました。
担任の女性教師に給食を全部食べることを強要され、もう一人やはり食べられない同級生の女の子と二人、毎日掃除の時間に、脇で学級の仲間が掃除を している埃の漂う教室で給食を食べさせられていた辛さを泣きながら訴えました。
自分は胃腸が弱く食が細いので、とても給食を残らず食べられないのだと訴え るのです。
そうした苦痛が1年間続いたのです。
さらに、担任から「いくら勉強ができても、給食が食べられない子は悪い子です」と決めつけられ、自分は悪い子なんだと、「小学校3年生の私」の人格は激しく泣きました。
その口調は、10歳の少女としか思われないものでした。
この少女は、給食が全部食べられないことで、「悪い子」だと全人格を否定されていると思い込んでいました。
こうして、少女の人格は、自分の辛さと苦しみを、昼食時の腹痛という症状によって「大人の私」に、訴えているというのです。
私は、10歳の少女人格に正対し、説得を続け、これからは「大人の私」に腹痛という形で訴えをしないことを約束してもらい、「大人の私」と一つになるように(人格を統合するように)了解を取り付けました。
以下はセッション後のクライアントの感想の一部です。
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前回のイメージ療法(注:稲垣とは別の療法士によるもの)と昨日先生にして頂いたセッションを併せて考えてみますと、おそらく前回のイメージ療法は、単に浮かんで来た映像の表面のみを きれいに修飾したに過ぎなかったため、その内に潜んでいたインナーチャイルドの人格は、訴えを聞いてもらえず、不満や悲しみが未解消のまま存在し、「悪 さ」をしていたのではないかと思います。
そして、昨日のセッションでやっと訴えを聞いてもらえるチャンスが来たと、人格が表面に出て来たのではないかと考えました。
大人の自分から見れば既に解決済みの件だと思っていたため、セッション中に当時の幼い人格の気持ち(悲しみ)がそのまま現れ、後から考えるとても不思議な体験でした。
そして、先生がインナーチャイルドの人格と直にお話して共感・説得して下さったため、大きな安堵感と開放感につながりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・引用終わり
2 多重人格であらわれる副人格は主人格の思念が創出した人格的存在ではないか
私は、顕現化する多重人格の各人格(副人格) は魂の表層に存在する「前世の者」が、主人格(現世の者)を人格崩壊から守るために、自動的に顕現化する現象ではないかという仮説を抱いていました。
検証結果の結論から言うと、私の仮説は、以下に報告するクライアントにおいては成り立ちませんでした。
このクライアントは、22歳会社員の男性です。
2年前から、強いストレスにさらされると、六つの人格が交互にあらわれ、その各人格顕現化中の記憶がなくなる、という症状に悩んでいるという主訴 でした。
ただし、勤務継続に支障が出るには至っていませんが、勤務先周囲は人格交替が起こるらしいことに気づいて見守ってくれているということでした。
両親の離婚後、20歳で再会した母親からのセッション依頼でおこなったセッションです。
幼くして両親離婚、父方に引き取られて育つ過程で精神的虐待を受けていたという生育歴がありました。
主治医からは「解離性同一性障害」の診断が下りているということでした。
日本では、解離性同一性障害の報告はきわめて少なく、私も初めて直面した事例です。
母親立ち会いのもとに慎重に催眠誘導をおこない、魂状態の自覚まで導くと、次から次へと六回の人格交替が起こり、副人格が現れました。
①正体不明の怒りと苦しみのうめき声を発する男性(ヒーリングして落ち着かせました)
②目に疾患を持つ幼い少女とそれを治療する眼科医(いつもペアで現れるとのこと)
③37歳の落ち着いた女性
④お茶目な若者
⑤落ち着いた老人
⑥副人格たちのリーダーであるというもの静かな青年
六つの人格は、それぞれ声音と話しぶりが異なり、それぞれ独自の個性を持つ人格を思わせました。
これら六つの副人格どうしは互いの存在を知っていますが、主人格は副人格についてまったく知らないという典型的な多重人格(DSM-ⅣーTRによる解離性同一性障害)の症状でした。
会話のできた②③④⑤⑥の副人格に、「あなたは魂の表層にいる前世のものではありませんか?」と尋ねると、回答は全員「ノー」でした。
「ではあなたは、どういう存在ですか?」と尋ねると、「この人(主人格)を守るためにいる」という回答です。
「この人は、あなたが勝手に現れるの で困っています。もうこの人は大丈夫ですから、この人と一つになって勝手に現れることをやめてくれませんか」と繰り返し説得しました。
②③④⑤の副人格は説得に応じ、「この人と一つになる(人格統合する)」と約束してくれましたが、⑥の副人格は、①の副人格が落ち着くまで面倒をみる必要があり、まだ一つになることは危険であるので約束できない、と拒否しました。
結局、①と⑥の副人格は、主人格との統合をどうしても拒否したので、ここで今回のセッションは終結としました。
予後を見守り、必要があれば再セッションすることにしました。
こうした、意識現象の事実から、このクライアントにおける副人格は、魂の表層の「現世の者」が自分を守るために作り出したフィクションの人格ではないか、と考えざるをえませんでした。
多重人格における、副人格=前世人格という仮説は成り立つ余地はなさそうです。
離婚後引き取られた父親の元で、父親からの耐えがたい精神的虐待から自分を守るために必死の思念を凝らしているうちに、その思念の凝縮した集合体が六つの副人格を創出し、それぞれが1個の人格的存在として振る舞うようになったのではないかと考えられます。
そして、精神医学も同様の見解をとっていると思われます。
3 生き霊は強烈な憎悪や嫉妬の思念が創出した人格的存在ではないか
さて、ここで紹介する奇妙なセッションに登場する人物は次の3名です。
①会社員で20代半ばのクライアントA子さん。
②職場同僚でA子さんの恋人B男君。
③職場同僚で生き霊を飛ばしていると思われるC子さん。
クライアントA子さんの主訴は、恋人B男君と一緒にいるときに、突然、別人格のように変身して(憑依様の状態)、B男君を激しく罵ることの改善でした。
セッションには、同行したB男君が同席しました。
突然、別人格のように変身して憑依様の状態が、かなり頻繁に起こる、という心理現象にはいくつかの可能性が考えられます。
①統合失調症(精神分裂病)の症状である妄想
②解離性同一性障害(多重人格)の副人格の顕現化
③未浄化霊の憑依
④前世人格の顕現化
⑤生き霊の憑依
⑥無意識的理由によって別人格に変身する役割演技
事前のカウンセリングによって、①②など精神疾患の兆候のないことは確認できました。
ただし、精神疾患が隠れている可能性を疑って、催眠誘導には細心の注意を怠らないように慎重を期しておこないました。
催眠によって、潜在意識下に抑圧していたマイナス感情が噴出して(蓋開け効果)、コントロール不能になる畏れがあるからです。
A子さんの催眠感受性は良好で、異常の兆候はなく、魂の自覚状態まで順調に誘導できました。
しかし、魂状態の自覚に至って、顕現化した存在は、なんと、A子さんの職場の同僚で先輩C子さんの生き霊であると名乗ったのです。
A子さんとC子さんは、同僚以上の親しい人間関係はないということです。
憑依している生き霊は、同席しているB男君を名指しで次のように罵り始めました。
このとき、閉眼し催眠中であったA子さんは、薄目を開けてB男君を指さし、不気味とも思える表情をしていました。
「おまえ(B男)は、ほんとうはこいつ(A子)より、わたし(C子)のほうが綺麗だと思っているんだろう。な、なっ、ほんとうことを言えよ。私(C子)が綺麗だって言えよ」
「おまえ(B男)は、私(C子)を抱きたいと思っていたんだろう。ほんとうのことを言えよ」
「嘘つけ!ほんとうのことを言えよ。ほんとうは私(C子)を抱きたいと思ってたんだって言えよ!」
「私(C子)は、絶対、こいつ(A子)を許さないからな。おまえらの仲を必ず裂いてやるからな」
「私(C子)は、こいつ(A子)を、絶対自殺に追い込んでやるからな。殺すからな。絶対許さないからな」
生き霊を名乗る存在が顕現化したのも初めてのことですが、そうした存在が口頭で話すという現象も初めてのことで、私は驚くと同時に、どのようにしてこのセッションを終結したらよいのか混乱してしまいました。
解離性同一性障害のセッションと、インナーチャイルドのセッションから、「意識・想念」が、一個の人格としてふるまうような存在を作り出すらしいことは承知していましたから、このC子さんの生き霊に対しても、一個の人格として対話するしかないと腹を決めて、その後のセッションを展開しました。
まず、この生き霊が、なぜこのようなすさまじい憎悪と怨念をA子さんにぶつけてくるのか、その理由を問い質してみました。
生き霊が語る理由は、次のような事情でした。
前世で、A子さんは高級遊女である花魁(おいらん)であった。
そしてその花魁に入れあげて妻子ある男が家庭を放棄した。
その男の妻こそ現世のC子さんであった。
捨てられた妻(C子の前世)は、夫を迷わせ奪った花魁(A子の前世)を憎み、刺し殺して恨みを晴らした。
こうした前世の経緯をもつA子さんとC子さんが、ふたたび現世で再会し、しかも同じ職場の同僚として出会った。
しかも、同僚のB男君は、最初C子さんに好意を示して接近しておきながら、後から就職してきたA子さんに乗り換えて、恋愛関係を結んでいる。
C子さんにしてみれば、前世で夫を奪われ、今度は現世で もB男君を奪われ、恨み骨髄に徹しているということらしい。
こうして、C子さんの生き霊が、A子さんに憑依して、恨みを晴らそうということらしい。
ここまで分かったところで、私の思いは、この生き霊を説得して、おだやかにC子さんの元へ帰ってもらうことでした。
生き霊というからには、浄霊して光の世 界(霊界)へ送り出すことはできないでしょうし、生き霊を飛ばしているC子さんの元へ帰ってもらうしかないだろうと思われたからです。
生き霊祓いという強制措置は、最後の手段であって、祓ったからといって事が収まるとは思えなかったからです。
C子さんが生きているかぎり、また生き霊の憑依現象が再発することが当然起こりうると考えられるからです。
また、私は、こうした生き霊の語りを聞くうちに、怨念へのおぞましさより、生き霊の心情に共感し、あわれに思う気持ちが湧いてきたからです。
好いた男に対する深情け、その裏返しとしての奪った女への憎悪という女心をいとおしく思いました。
「あなたのC子を恨む気持ちはよく理解できた。しかし、あなたは前世で、夫を奪った花魁である前世のA子を殺して恨みを晴らし、帳消しにしたはずではな かったか。
それを現世でふたたび、A子を殺すという同じことを繰り返すとしたら、C子の魂が成長するために生まれ変わった甲斐がないではないか。
このよう な理不尽なことを、神が許されるとは思われない。
あなたが、生き霊として、これ以上A子に害を為すというなら、あなたに生き霊祓いをすることになる。
その ようなことをすると、C子は衰弱すると聞いている。
そのようなことはどうしても避けたい。
今後A子は、C子に悪意の感情を向けないという約束で、どうか憑依を解いてC子の元へおだやかに帰ってもらえないだろうか。
約束が守られないときには、またあなたが憑依することはやむをえないと思っている」
ざっと以上のような説得を繰り返したところ、生き霊はやっと帰ることを約束してくれました。
生き霊に対する私の、生き霊の心情に共感し、浮気者のB男君ではなくA子さんを憎悪するC子さんをあわれに思うとともに、こうした女心をいとおしくさえ思う気持ちが通じたのかもしれません。
その後、人格交替のような憑依様現象は収まったという報告を受けています。
また、C子さんには衰弱の気配はなく、逆にA子さんがエネルギーの減退を感じているということでした。
A子さんによれば、彼女はエンパスと呼ばれる他者の自分に向けられる思念を敏感に感知してしまう体質らしく、それまでC子さんが自分に向けている理由不明の悪感情を感じ続けていたということでした。
さて、「憎悪・悲哀・嫉妬などの強烈な思念」、つまり「強烈な負の意識」が凝縮された集合体になると、それが一個の人格的存在を創出することがある、という仮説の裏付け(状況証拠)である三つの事例を紹介しました。
どうやら、「凝縮され持続する強烈な負の意識はエネルギーの要素を持つらしい」ということになります。
強烈な負の意識が持続し凝縮すると、ある種のエネルギーを持ちうるようになり、 その凝縮されたエネルギー体は、切迫した条件下では人格としての属性を創出するようになることがある、と言えるかもしれません。
そして、インナーチャイルドや生き霊の例が示すように、そのような人格の属性を帯びた意識体は、時空の制限を超えることもできるように思われます。
このような仮説を唱えることは、唯物論者にとっては、妄想として片付けられるでしょうが、催眠臨床に携わる者としての、あらわれる「意識現象を状況証拠とした」実感的仮説です。
わずかな事例から以上のような仮説を唱えることは、「極端な一般化だ」という批判を受けることを覚悟のうえで、SAM前世療法の示す可能性のある仮説として提示しました。
イアン・スティーヴンソンは、意識現象について次のように述べています。
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心的現象は、私たちがなじんでいる空間とも、物理学者が記述する物理空間とも異なる空間の中で起こるということである。・・・人間の肉体は物理的空間に、心は心理的空間にあるのである。
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深度のきわめて深い催眠中にあらわれる心理的空間で生起する「意識現象」の謎は、途方もなく深遠であり、探究が尽きることがありません。
そもそも、われわれには、「意識があること」が言うまでもなく自明であるのに、その意識自体はどこで生み出されているのか、というもっとも根源的な謎が未だに分かっていないのです。
未浄化霊という霊的存在について、下記、私あて第12霊信で、「この世に残る未成仏霊のような存在は、残留思念の集合体である」と告げています。
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この世に残る「未成仏霊」のような存在は、残留思念の集合体である。
だが、それらは意志を持つようにとらえられる。
よって、魂と判断されがちだがそれらは魂とは異なるものである。
それらの持つ意志は意志ではない。
なぜ、それらが意志を持つものだととらえられるのか、そして、魂が別の道をたどりながらそのような意志を残すのか。
それを残すのは、その魂ではない。
それらを管理するのは神である。
それらは計画の一部である。
転生し旅を続けるものに対する課題として必要なものである。
その詳細への説明は与えるものではない。
あなた方は、なぜそのような仕組みになっているのか答えを待つのではなく、自らが探究して得るべきなのだ。
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通信霊の告げている、未成仏霊は残留思念の集合体である、という説を採用すると、インナーチャイルド、多重人格にあらわれる副人格、生き霊といった現象も、「強烈な思念の集合体であり、それらは意志を持つ人格のように振る舞う」という仮説が成り立つのではないか、というのがここでのテーマです。
なぜなら、SAM前世療法のセッションにおいて、たしかに未浄化霊を名乗る霊的存在が顕現化する意識現象があらわれ、「残留思念の集合体」であるにもかかわらず、あたかも意志を持った一個の人格として振る舞うからです。
このことをさらに考察しますと、「憎悪・悲哀・嫉妬などの強烈な思念」、つまり「強烈な負の意識」が凝縮された集合体になると、それが一個の人格的存在を創出することがある、という仮説が成り立つと思われるのです。
この仮説を裏付けるセッションで確認してきた「意識現象の事実」を三つ挙げてみます。
1 インナーチャイルドは「記憶」ではなく、解離している子どもの人格的存在ではないか
魂の表層には「現世のもの」が位置付いています。
この「現世の者」は、現世に誕生して以後の現世での潜在意識・意識を作り出している者ということになります。
したがって、魂の表層の「現世の者」に、インナーチャイルドと呼ばれる「子どもの人格」が内在している、と考えることになります。
つまり、インナーチャイルドを、成長していく大人の人格から取り残され、解離している「傷ついている子どもの人格」そのものとして扱うわけです。
「大人の私」の人格が、子どもであったときに傷ついた記憶を想起して語る、という立場をとりません。
以上の仮説に基づき以下の手順で、SAM前世療法によるインナーチャイルドセラピイを実験的におこないました。
被験者は、32歳男性です。
彼は、自分に向けられた叱声はもちろん、他人が受けている叱声にも、幼児のように過剰に反応し、異常なほどの恐怖感と激しい動悸に襲 われるという症状を持っていました。
特に大声で叱声を浴びると、耐えられないほどの恐怖感と動悸に襲われると訴えました。
そこで、インナーチャイルドセラピイを試みたというわけです。
①魂遡行催眠まで誘導し、魂の自覚状態に至っていることを確認する。
②魂の表層の「現世の者」を呼び出し、顕現化させる。
③「現世の者」の内部に存在する、症状を作り出すことによって、苦しみ訴えている「子どもの私」の人格を呼び出す。
④「子どもの私」の人格が、どのような原因から傷つき、苦しんでいるのかを対話によって聞き出す。
⑤苦しみに共感的理解をしてやりながら、さらに癒しが必要だと訴えればヒーリングをおこなう。
その結果、呼び出しに応じて現れた被験者の「子どもの私」の人格は2歳でした。
子どもどうしで遊んでいるときに、遊び相手の子どもと大声でわめき ながらオモチャの奪い合いになり、そのオモチャで気を失うほど激しく殴られたということでした。
その傷つきの恐怖体験を持つ「子どもの私」の人格が、「大人の私」に、類似のことが起こる度に恐怖感と動悸を起こさせて、自分の傷つきを訴えているということでした。
この恐怖感の訴えは、結果として「大人の私」への危険な事態に対する警報となって、「大人の私」を守るはたらきをしていると思われます。
こうした対話をした後、この「子どもの私」にヒーリングをし、「大人の私」と一つになるように説得してセッションを終結しました。
もう1例は、30代女性の事例です。
このクライアントの主訴は、家庭外で昼食をとるときに決まって起こる腹痛の改善でした。
良好な深い催眠(記憶催眠)状態を確認し、主訴に関わるトラウマが生じた時点まで年齢退行をしてみました。
その結果、小学校3年生のときに生じたトラウマであることを確認しました。
このクライアントはSAM前世療法の体験者です。
そのため、どうやら記憶催眠から魂遡行状態に移行した時点で、トラウマを訴える小学校3年生の少女の人格が顕現化しました。
担任の女性教師に給食を全部食べることを強要され、もう一人やはり食べられない同級生の女の子と二人、毎日掃除の時間に、脇で学級の仲間が掃除を している埃の漂う教室で給食を食べさせられていた辛さを泣きながら訴えました。
自分は胃腸が弱く食が細いので、とても給食を残らず食べられないのだと訴え るのです。
そうした苦痛が1年間続いたのです。
さらに、担任から「いくら勉強ができても、給食が食べられない子は悪い子です」と決めつけられ、自分は悪い子なんだと、「小学校3年生の私」の人格は激しく泣きました。
その口調は、10歳の少女としか思われないものでした。
この少女は、給食が全部食べられないことで、「悪い子」だと全人格を否定されていると思い込んでいました。
こうして、少女の人格は、自分の辛さと苦しみを、昼食時の腹痛という症状によって「大人の私」に、訴えているというのです。
私は、10歳の少女人格に正対し、説得を続け、これからは「大人の私」に腹痛という形で訴えをしないことを約束してもらい、「大人の私」と一つになるように(人格を統合するように)了解を取り付けました。
以下はセッション後のクライアントの感想の一部です。
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前回のイメージ療法(注:稲垣とは別の療法士によるもの)と昨日先生にして頂いたセッションを併せて考えてみますと、おそらく前回のイメージ療法は、単に浮かんで来た映像の表面のみを きれいに修飾したに過ぎなかったため、その内に潜んでいたインナーチャイルドの人格は、訴えを聞いてもらえず、不満や悲しみが未解消のまま存在し、「悪 さ」をしていたのではないかと思います。
そして、昨日のセッションでやっと訴えを聞いてもらえるチャンスが来たと、人格が表面に出て来たのではないかと考えました。
大人の自分から見れば既に解決済みの件だと思っていたため、セッション中に当時の幼い人格の気持ち(悲しみ)がそのまま現れ、後から考えるとても不思議な体験でした。
そして、先生がインナーチャイルドの人格と直にお話して共感・説得して下さったため、大きな安堵感と開放感につながりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・引用終わり
2 多重人格であらわれる副人格は主人格の思念が創出した人格的存在ではないか
私は、顕現化する多重人格の各人格(副人格) は魂の表層に存在する「前世の者」が、主人格(現世の者)を人格崩壊から守るために、自動的に顕現化する現象ではないかという仮説を抱いていました。
検証結果の結論から言うと、私の仮説は、以下に報告するクライアントにおいては成り立ちませんでした。
このクライアントは、22歳会社員の男性です。
2年前から、強いストレスにさらされると、六つの人格が交互にあらわれ、その各人格顕現化中の記憶がなくなる、という症状に悩んでいるという主訴 でした。
ただし、勤務継続に支障が出るには至っていませんが、勤務先周囲は人格交替が起こるらしいことに気づいて見守ってくれているということでした。
両親の離婚後、20歳で再会した母親からのセッション依頼でおこなったセッションです。
幼くして両親離婚、父方に引き取られて育つ過程で精神的虐待を受けていたという生育歴がありました。
主治医からは「解離性同一性障害」の診断が下りているということでした。
日本では、解離性同一性障害の報告はきわめて少なく、私も初めて直面した事例です。
母親立ち会いのもとに慎重に催眠誘導をおこない、魂状態の自覚まで導くと、次から次へと六回の人格交替が起こり、副人格が現れました。
①正体不明の怒りと苦しみのうめき声を発する男性(ヒーリングして落ち着かせました)
②目に疾患を持つ幼い少女とそれを治療する眼科医(いつもペアで現れるとのこと)
③37歳の落ち着いた女性
④お茶目な若者
⑤落ち着いた老人
⑥副人格たちのリーダーであるというもの静かな青年
六つの人格は、それぞれ声音と話しぶりが異なり、それぞれ独自の個性を持つ人格を思わせました。
これら六つの副人格どうしは互いの存在を知っていますが、主人格は副人格についてまったく知らないという典型的な多重人格(DSM-ⅣーTRによる解離性同一性障害)の症状でした。
会話のできた②③④⑤⑥の副人格に、「あなたは魂の表層にいる前世のものではありませんか?」と尋ねると、回答は全員「ノー」でした。
「ではあなたは、どういう存在ですか?」と尋ねると、「この人(主人格)を守るためにいる」という回答です。
「この人は、あなたが勝手に現れるの で困っています。もうこの人は大丈夫ですから、この人と一つになって勝手に現れることをやめてくれませんか」と繰り返し説得しました。
②③④⑤の副人格は説得に応じ、「この人と一つになる(人格統合する)」と約束してくれましたが、⑥の副人格は、①の副人格が落ち着くまで面倒をみる必要があり、まだ一つになることは危険であるので約束できない、と拒否しました。
結局、①と⑥の副人格は、主人格との統合をどうしても拒否したので、ここで今回のセッションは終結としました。
予後を見守り、必要があれば再セッションすることにしました。
こうした、意識現象の事実から、このクライアントにおける副人格は、魂の表層の「現世の者」が自分を守るために作り出したフィクションの人格ではないか、と考えざるをえませんでした。
多重人格における、副人格=前世人格という仮説は成り立つ余地はなさそうです。
離婚後引き取られた父親の元で、父親からの耐えがたい精神的虐待から自分を守るために必死の思念を凝らしているうちに、その思念の凝縮した集合体が六つの副人格を創出し、それぞれが1個の人格的存在として振る舞うようになったのではないかと考えられます。
そして、精神医学も同様の見解をとっていると思われます。
3 生き霊は強烈な憎悪や嫉妬の思念が創出した人格的存在ではないか
さて、ここで紹介する奇妙なセッションに登場する人物は次の3名です。
①会社員で20代半ばのクライアントA子さん。
②職場同僚でA子さんの恋人B男君。
③職場同僚で生き霊を飛ばしていると思われるC子さん。
クライアントA子さんの主訴は、恋人B男君と一緒にいるときに、突然、別人格のように変身して(憑依様の状態)、B男君を激しく罵ることの改善でした。
セッションには、同行したB男君が同席しました。
突然、別人格のように変身して憑依様の状態が、かなり頻繁に起こる、という心理現象にはいくつかの可能性が考えられます。
①統合失調症(精神分裂病)の症状である妄想
②解離性同一性障害(多重人格)の副人格の顕現化
③未浄化霊の憑依
④前世人格の顕現化
⑤生き霊の憑依
⑥無意識的理由によって別人格に変身する役割演技
事前のカウンセリングによって、①②など精神疾患の兆候のないことは確認できました。
ただし、精神疾患が隠れている可能性を疑って、催眠誘導には細心の注意を怠らないように慎重を期しておこないました。
催眠によって、潜在意識下に抑圧していたマイナス感情が噴出して(蓋開け効果)、コントロール不能になる畏れがあるからです。
A子さんの催眠感受性は良好で、異常の兆候はなく、魂の自覚状態まで順調に誘導できました。
しかし、魂状態の自覚に至って、顕現化した存在は、なんと、A子さんの職場の同僚で先輩C子さんの生き霊であると名乗ったのです。
A子さんとC子さんは、同僚以上の親しい人間関係はないということです。
憑依している生き霊は、同席しているB男君を名指しで次のように罵り始めました。
このとき、閉眼し催眠中であったA子さんは、薄目を開けてB男君を指さし、不気味とも思える表情をしていました。
「おまえ(B男)は、ほんとうはこいつ(A子)より、わたし(C子)のほうが綺麗だと思っているんだろう。な、なっ、ほんとうことを言えよ。私(C子)が綺麗だって言えよ」
「おまえ(B男)は、私(C子)を抱きたいと思っていたんだろう。ほんとうのことを言えよ」
「嘘つけ!ほんとうのことを言えよ。ほんとうは私(C子)を抱きたいと思ってたんだって言えよ!」
「私(C子)は、絶対、こいつ(A子)を許さないからな。おまえらの仲を必ず裂いてやるからな」
「私(C子)は、こいつ(A子)を、絶対自殺に追い込んでやるからな。殺すからな。絶対許さないからな」
生き霊を名乗る存在が顕現化したのも初めてのことですが、そうした存在が口頭で話すという現象も初めてのことで、私は驚くと同時に、どのようにしてこのセッションを終結したらよいのか混乱してしまいました。
解離性同一性障害のセッションと、インナーチャイルドのセッションから、「意識・想念」が、一個の人格としてふるまうような存在を作り出すらしいことは承知していましたから、このC子さんの生き霊に対しても、一個の人格として対話するしかないと腹を決めて、その後のセッションを展開しました。
まず、この生き霊が、なぜこのようなすさまじい憎悪と怨念をA子さんにぶつけてくるのか、その理由を問い質してみました。
生き霊が語る理由は、次のような事情でした。
前世で、A子さんは高級遊女である花魁(おいらん)であった。
そしてその花魁に入れあげて妻子ある男が家庭を放棄した。
その男の妻こそ現世のC子さんであった。
捨てられた妻(C子の前世)は、夫を迷わせ奪った花魁(A子の前世)を憎み、刺し殺して恨みを晴らした。
こうした前世の経緯をもつA子さんとC子さんが、ふたたび現世で再会し、しかも同じ職場の同僚として出会った。
しかも、同僚のB男君は、最初C子さんに好意を示して接近しておきながら、後から就職してきたA子さんに乗り換えて、恋愛関係を結んでいる。
C子さんにしてみれば、前世で夫を奪われ、今度は現世で もB男君を奪われ、恨み骨髄に徹しているということらしい。
こうして、C子さんの生き霊が、A子さんに憑依して、恨みを晴らそうということらしい。
ここまで分かったところで、私の思いは、この生き霊を説得して、おだやかにC子さんの元へ帰ってもらうことでした。
生き霊というからには、浄霊して光の世 界(霊界)へ送り出すことはできないでしょうし、生き霊を飛ばしているC子さんの元へ帰ってもらうしかないだろうと思われたからです。
生き霊祓いという強制措置は、最後の手段であって、祓ったからといって事が収まるとは思えなかったからです。
C子さんが生きているかぎり、また生き霊の憑依現象が再発することが当然起こりうると考えられるからです。
また、私は、こうした生き霊の語りを聞くうちに、怨念へのおぞましさより、生き霊の心情に共感し、あわれに思う気持ちが湧いてきたからです。
好いた男に対する深情け、その裏返しとしての奪った女への憎悪という女心をいとおしく思いました。
「あなたのC子を恨む気持ちはよく理解できた。しかし、あなたは前世で、夫を奪った花魁である前世のA子を殺して恨みを晴らし、帳消しにしたはずではな かったか。
それを現世でふたたび、A子を殺すという同じことを繰り返すとしたら、C子の魂が成長するために生まれ変わった甲斐がないではないか。
このよう な理不尽なことを、神が許されるとは思われない。
あなたが、生き霊として、これ以上A子に害を為すというなら、あなたに生き霊祓いをすることになる。
その ようなことをすると、C子は衰弱すると聞いている。
そのようなことはどうしても避けたい。
今後A子は、C子に悪意の感情を向けないという約束で、どうか憑依を解いてC子の元へおだやかに帰ってもらえないだろうか。
約束が守られないときには、またあなたが憑依することはやむをえないと思っている」
ざっと以上のような説得を繰り返したところ、生き霊はやっと帰ることを約束してくれました。
生き霊に対する私の、生き霊の心情に共感し、浮気者のB男君ではなくA子さんを憎悪するC子さんをあわれに思うとともに、こうした女心をいとおしくさえ思う気持ちが通じたのかもしれません。
その後、人格交替のような憑依様現象は収まったという報告を受けています。
また、C子さんには衰弱の気配はなく、逆にA子さんがエネルギーの減退を感じているということでした。
A子さんによれば、彼女はエンパスと呼ばれる他者の自分に向けられる思念を敏感に感知してしまう体質らしく、それまでC子さんが自分に向けている理由不明の悪感情を感じ続けていたということでした。
さて、「憎悪・悲哀・嫉妬などの強烈な思念」、つまり「強烈な負の意識」が凝縮された集合体になると、それが一個の人格的存在を創出することがある、という仮説の裏付け(状況証拠)である三つの事例を紹介しました。
どうやら、「凝縮され持続する強烈な負の意識はエネルギーの要素を持つらしい」ということになります。
強烈な負の意識が持続し凝縮すると、ある種のエネルギーを持ちうるようになり、 その凝縮されたエネルギー体は、切迫した条件下では人格としての属性を創出するようになることがある、と言えるかもしれません。
そして、インナーチャイルドや生き霊の例が示すように、そのような人格の属性を帯びた意識体は、時空の制限を超えることもできるように思われます。
このような仮説を唱えることは、唯物論者にとっては、妄想として片付けられるでしょうが、催眠臨床に携わる者としての、あらわれる「意識現象を状況証拠とした」実感的仮説です。
わずかな事例から以上のような仮説を唱えることは、「極端な一般化だ」という批判を受けることを覚悟のうえで、SAM前世療法の示す可能性のある仮説として提示しました。
イアン・スティーヴンソンは、意識現象について次のように述べています。
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心的現象は、私たちがなじんでいる空間とも、物理学者が記述する物理空間とも異なる空間の中で起こるということである。・・・人間の肉体は物理的空間に、心は心理的空間にあるのである。
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深度のきわめて深い催眠中にあらわれる心理的空間で生起する「意識現象」の謎は、途方もなく深遠であり、探究が尽きることがありません。
そもそも、われわれには、「意識があること」が言うまでもなく自明であるのに、その意識自体はどこで生み出されているのか、というもっとも根源的な謎が未だに分かっていないのです。