2016年7月21日木曜日

スティーヴンソンの生まれ変わりについての見解

   SAM催眠学序説 その94


私の研究の方法論は、イアン・スティーヴンソンの諸著作から学んだことを手本としています。
彼は、自らの手で集めている生まれ変わりを示す証拠が、自ら事実を物語るはずだ、と次のように繰り返し述べています。

私の見解は重要ではない。私は自分の役割は、できる限り明確に証拠を提示することにあると考えている。読者諸賢は、そうした証拠をー厳密に検討されたうえで自分なりの結論に到達する必要があるのである。
(イアン・スティーヴンソン『「生まれ変わりの刻印』春秋社、1998、P198)


また、生まれ変わりという考え方は、最後に受け入れるべき解釈なので、これに替わりうる説明がすべて棄却できた後に、初めて採用すべきである、という慎重な研究方法を一貫して採用しています。

拙著、『前世療法の探究』、『生まれ変わりが科学的に証明された!』のタエ・ラタラジューの両事例の諸検証は、スティーヴンソンの検証方法を忠実に守っておこなったつもりです。

私が死の恐怖について、きわめて臆病な人間であったことはこのブログに書きました。
そして、死の恐怖から免れるために、宗教に救いを求めることは、生来の気質からできなかったことも正直に述べました。

こうした私だからこそ、イアン・スティーヴンソンの生まれ変わりの科学としての研究に強く惹かれるものを感じてきました。
彼こそ、生まれ変わりという宗教的概念を、宗教的なものから科学的探究の対象へと位置づけることに成功した先駆的科学者であると評価できると思うからです。

そこで、ここでは、彼の生まれ変わりについての見解がもっとも濃厚に述べられている『前世を記憶する子どもたち』日本共文社、1989から、その見解を紹介し、SAM催眠学の魂二層構造仮説と比較してみたいと思います。
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生まれ変わったと推定される者では、先述のイメージ記憶、行動的記憶、身体的痕跡という三通りの要素が不思議にも結びついており、前世と現世の間でもそれが一体になっていなかったとは、私には想像すらできない。
このことからすると、この要素(ないしその表象)は、ある中間的媒体に従属しているらしいことがわかる。この中間的媒体が持っている他の要素については、おそらくまだ何もわかっていない。

前世から来世へとある人格の心的要素を運搬する媒体を「心搬体(サイコフォア)」と呼ぶことにしたらどうかと思う。私は、心搬体を構成する要素がどのような配列になっているのかは全く知らないけれども、肉体のない人格がある種の経験を積み、活動を停止していないとすれば、心搬体は変化して行くのではないかと思う。(中略)

私は、「前世の人格」という言葉を、ある子どもがその生涯を記憶している人物に対して用いてきたけれども、一つの「人格」がそっくりそのまま生まれ変わるという言い方は避けてきた。そのような形での生まれ変わりが起こりうることを示唆する証拠は存在しないからである。
実 際に生まれ変わるかも知れないのは、直前の前世の人格および、それ以前に繰り返された過去世の人格に由来する「個性」なのである。人格は、一人の人間がい ずれの時点でも持っている、外部から観察される心理的特性をすべて包含しているのに対して、個性には、そのうえに、現世で積み重ねた経験とそれまでの過去 世の残渣が加わる。したがって、私たちの個性には、人格としては決して表出することのないものや、異常な状況以外では人間の意識に昇らないものが数多く含 まれているのである。
(前掲書PP.359-360)
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上記のスティーヴンソンの見解とSAM催眠学の「魂の二層構造仮説」の見解とを比較してみると、ほぼ整合するところが指摘できます。

彼の言う「中間的媒体」、「心搬体(サイコフォア)」は、SAM催眠学の「魂」と同義です。
おそらくスティーヴンソンはSoulという語にまとわりつく宗教臭を回避したのだと思われます。
このことについて彼は次のように述べています。

私は、この中間媒体を表す用語として(心を運ぶと言う意味を持つ)「心搬体(サイコフォア)」という
言 葉を提案した。(私は、生まれ変わり信仰を持つ多くの宗教に、こうした中間媒体を意味する言葉があることを承知している。しかしながら、生まれ変わりに関 する私たちの、依然として初歩的な科学的研究を宗教と結びつけるのを避けるため、新しい言葉を作った方がよいと考えたわけである。)
(イアン・スティーヴンソン『「生まれ変わりの刻印』春秋社、1998、P198)


私は、前世から来世へとある人格の心的要素を運搬する媒体を、そのまま従来の「魂」の概念でも不都合はないと思いますし、取り立てて新しい概念でもないのに「心搬体」などの造語を用いることは不要だと思っています。

また、彼の、「心搬体を構成する要素がどのような配列になっているのかは全く知らないけれども、肉体のない人格がある種の経験を積み、活動を停止していないとすれば、心搬体は変化して行くのではないかと思う」という見解は、「魂は二層構造になっており、表層は前世人格たちが構成し、それら前世人格は互いの人生の知恵を分かち合い学び合い、表層全体の集合意識が成長・進化(変化)する仕組みになっている」という仮説を支持するものと言えそうです。

ただし、「心搬体」=「魂」を構成する要素がどのような配列になっているのかは全く知らない、と述べています。
私は、私あて霊信によって、「魂を構成する要素がどのような配列になっているのか」を教えられ、催眠を道具にその真偽の検証によって、魂表層を構成する前世の人格たちを呼び出すことに成功したと思っています。

しかも、「ラタラジューの事例」によって、前世人格ラタラジューは、魂表層で、肉体はなくとも生きて活動していることを実証できたと思っています。

つまり、「魂は二層構造になっており、表層は前世人格たちが構成し、それら前世諸人格は互いの人生の知恵を分かち合い学び合い、表層全体の集合意識が成長・進化する仕組みになっている」というのが、SAM催眠学の見解です。

つまり、「心搬体」=「魂」の表層全体は、変化していくものだということを、顕現化した前世諸人格の語りから確かめています。

さらに、一つの「人格」がそっくりそのまま生まれ変わるという言い方は避けてきた。そのような形での生まれ変わりが起こりうることを示唆する証拠は存在しない、というスティーヴンソンの見解は、そっくりSAM催眠学の見解と同様です。

現世の私という人格が、来世にそのままそっくり生まれ変わるわけではなく、魂表層の一つとして生き続けるのであって、魂が生まれ変わるとは、「表層を含めた一つの魂全体」だというのが、SAM催眠学の示す生まれ変わりの実相だと言えます。

また、「実際に生まれ変わるかも知れないのは、直前の前世の人格および、それ以前に繰り返された過去世の人格に由来する「個性」なのである。個性には、そのうえに、現世で積み重ねた経験とそれまでの過去世の残渣が加わる」というスティーヴンソンの考え方も、SAM催眠学の見解にほぼ一致します。

現世の個性は、魂表層の前世人格たちから人生の知恵を分かち与えられており、このようにして繰り返された前世の諸人格に由来する「個性」と、現世での諸経験とによって、形成されているに違いないのです。

さて、私が、故スティーヴンソンに求めたのは、前世の記憶を語る子どもたちの「記憶」の所在についての考究でした。

彼が、「前世の記憶」が脳にだけあるとは考えていないことは、「心搬体」という死後存続する「媒体」を想定していたことに照らせば、間違いありません。

私の期待したのは、その「心搬体」と「脳」との関係についてのスティーヴンソンの考究です。

前世の記憶を語る子どもたちは、その前世記憶の情報を、心搬体から得て話したのか、脳から得て話したのか、いずれなのでしょうか。

私の大胆な仮説を述べてみますと、すべての事例がそうではないにしても、子どもの魂表層に存在する前世人格が、顕現化(自己内憑依)し、子どもの口を通して、前世人格みずからが自分の人生を語った可能性があるのではなかろうか、ということになります。

それは、その前世を語った子どもの12事例のうち、8つの事例で、次のように話し始めた(ふるまった)とスティーヴンソンが紹介しているからです。

①ゴールパールは、「そんなものは持たない。ぼくはシャルマだ」と答え、周囲を仰天させた。(前掲書94)

②コーリスが1歳1ヶ月になったばかりの頃、母親が名前を復唱させようとしたところ、コーリスは腹立たしげに、「ぼくが誰か知ってるよね。カーコディだよ」と言った。(前掲書P98)

③日本に帰りたいという願望をよく口にし、ホームシックから膝を抱いてめそめそ泣くこともあった。また、自分の前で英米人の話が出ると、英米人に対する怒りの気持ちを露わにした。(前掲書P101)

④シャムリニーは、その町に住んでいた時代の両親の名前を挙げ、ガルトウダワのお母さんのことをよく話した。また、姉妹のことやふたりの同級生のことも語っている。(前掲書P104)

⑤ボンクチはチャムラットを殺害した犯人は許せないという態度を示し、機会があると復讐してやる、と何年か言い続けた。(前掲書P116)

⑥おまえの名前は「サムエル」だと教えようとしても、サムエルはほとんど従おうとしなかった。「ぼくはペルティだ」と言ってきかなかったのである。(前掲書P121)

⑦前世の話をもっとも頻繁にしていた頃のロバータは、時折前世の両親や自宅の記憶を全面的に残している子どもが養女にきているみたいにふるまった。(前掲書P126)

⑧3歳の頃マイクルは、全く知らないはずの人たちや出来事を知っているらしい兆候を見せ始めた。そしてある日、「キャロル・ミラー」という名前を口にして、母親を驚かせたのである。(前掲書P141)

以上のような事例の事実は、「子どもが前世の記憶を話した」というよりは、「前世人格が現れて人生の出来事を話した」と、現象学的にありのままに受け取ることのほうが、自然だと私には思われるのです。

スティーヴンソンは、応答型真性異言の「グレートフェン」の事例において、グレートフェンを顕現化した「トランス人格(前世人格)」として解釈しています。

前世を語った子どもにおいても、前世人格の顕現化の可能性をなぜ検討しなかったのか、私には不満が残ります。
子どもが語ったのは「前世の記憶」だという思い込みがあるように思われてなりません。
仮に、子どもが語ったのは「前世の記憶」だとして、その記憶の所在はいったいどこにあるのでしょうか?


とりわけ、上記③⑤⑦などのような、「態度」や「ふるまい」があらわれる事例は、前世の記憶ではなく、魂表層に存在する「前世人格の顕現化」として受け取るのが自然だろうと思います。

スティーヴンソンが存命しているなら、是非尋ねてみたいものです。

10 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

先生。自由意志に関する実験結果の報告があります。
>>http://wired.jp/2016/06/13/free-will-research/
これは大きな一歩だと考えます。
追加で、先生は>>http://www.victorzammit.com/index.html
死後の世界を研究する元弁護士のサイトをご存じでしょうか。
先生は英語も堪能なようなので是非とも彼へ先生の真性異言ラタラジューの動画を送付していただけないでしょうか。
先生の貴重な事例は、必ず世界を救うはずです。愛する人を失った悲しみや付随する絶望や虚無感etc
徹頭徹尾、論理的で科学的な先生の姿勢は彼(弁護士)と一致します。
世界初の真性異言の貴重な動画を、彼に提示していただけないでしょうか。

シュヴァル さんのコメント...

匿名さんへ

さしでがましいでようですがそれはあなたがされるべきことではないでしょうか?

人にしてもらうではなく本当にそう思われるのであれば自ら行動を起こすべきだと私は思います

それは人にやってもらうものではないように思います

稲垣 勝巳 さんのコメント...

匿名さん

自由意志にかかわる貴重な科学的知見をご紹介いただきありがとうございました。

生まれ変わりの科学的研究家ビクター・ザミット弁護士に「ラタラジューの事例」動画を送付していただけないか、とのご依頼ですが、私は英語が堪能とはとても言えません。
「ラタラジューの事例」英語版は、私の催眠塾の弟子筋の人が骨折って編集していただいたものです。

もし、匿名さんのほうでご紹介いただければと思います。

匿名 さんのコメント...

稲垣先生、ご返答ありがとうございます。
私もぜひビクター先生に教えてさしあげたいと思ったのですが
まず先生の了解を得たうえでなければ失礼と思いました。
また、「ラタラジューの事例」英語版を拝見して先生の英語力のほうが遥かに私より上と思いましたので
私ごときが紹介するより良いと判断しました。

>>もし、匿名さんのほうでご紹介いただければと思います。

私のつたない英語、しかも彼には世界中からメールが届くので目を通していただけるか保証はないですが
よければ紹介させていただきます。
psこの分野で研究しておられる多くの研究者にとっても有意義であり
科学の真の発展に欠かせない貴重な、先生の長年の努力による資料を私ごときが扱ってよいものかという思いで投稿させていただいた次第です。
失礼なところがありまして申し訳ありません。

稲垣 勝巳 さんのコメント...

匿名さん

「ラタラジューの事例」は、現時点で、日本発の生まれ変わりの科学的証拠として、世界に認められるべき貴重な事例だと自負している事例です。
どうぞ、世界に広める一助としてご協力ください。
you-tubeで世界に公開した動画は、公開と同時に私の手から離れ、世界の文化遺産として、求める人には誰にでも恩恵を与えるはずのものだと思っています。

シュヴァル さんのコメント...

匿名さんへ

うまくいくことを祈念しております

匿名 さんのコメント...

先生、 シュヴァルさん。
本日、emailにて送信したところさっそく返答がありました。
Thank you ○○, sounds interesting - we'll carefully listen to it.
という内容でした。
先生の事例が世界に広まれば嬉しくおもいます。

稲垣 勝巳 さんのコメント...

匿名さん
ビクター・ザミット氏へのemailありがとうございました。

日本のアカデミズムに所属している研究者は、霊魂仮説にかかわることにはきわめて臆病だと思っています。
福来友吉博士の「念写事件」の後遺症がいまだに尾を引いており、霊魂にかかわる事例に手を染めて自身の研究者としての立場が危うくなることへの警戒感があるように推測しています。

私は、福来事件さえなければ、あるいは念写現象の事実が認められたとするなら、日本の催眠学研究と催眠下(潜在意識下)で起こる霊的現象への科学的探究は、現行とは違ったものになっていたに違いないだろうと思っています。
そして、「SAM催眠学序説」は、霊魂仮説を否定している催眠学の現状に対する私のアンチテーゼでもあります。

匿名 さんのコメント...

稲垣先生は本当に肝っ玉の座った心の持ち主ですね。
名前も携帯もメルアドも全て公開し、滅茶苦茶かっこいい。
私には到底無理な、筋金入りの根性です。
臆病な烏合の衆のうすっぺらさなんか気にもせず科学的に客観的に実証のみを追求する姿勢は強いです。
ド根性ですね。

稲垣 勝巳 さんのコメント...

匿名さん
私が身元や連絡先を公開しているのは、生まれ変わりは科学的事実である、というきわめて重大な主張をネット上で公にし、その科学的証拠を示して主張していることに対して、その責任者の所在を明確にしておくことが、ブログ管理人として公正な態度だろうと思っているだけのことです。