2012年3月27日火曜日

インナーチャイルドについての考察

一般的なインナーチャイルドセラピイは、記憶催眠(深い深度の催眠)まで誘導の後、年齢退行によって「傷ついている子どもの意識」を探り出し、癒すということになっています。
SAMの仮説では、魂は二層構造になっており、その表層は前世のものたちによって構成されている、という前提に立ちます。ちょうどミラーボールの球表面に一枚一枚の鏡の断片が張り付いているように、魂の表層も一人一人の前世のものたちが張り付いていると考えるといいかもしれません。それら前世のものたちが、潜在意識・意識を作り出しているということもSAMの仮説です。
そして、魂の表層には「現世のもの」が位置付いています。この「現世のもの」は、現世に誕生して以後の現世での潜在意識・意識を作り出しているものということになります。
したがって、魂の表層の「現世のもの」に、インナーチャイルドと呼ばれる「子どもの人格」が内在している、と考えることになります。つまり、インナーチャイルドを、「傷ついている子どもの人格」そのものとして扱うわけです。
「大人の私」の人格が、子どもであったときに傷ついた記憶を想起して語る、という立場をとりません。
以上の仮説に基づき以下の手順で、SAM前世療法によるインナーチャイルドセラピイを実験的におこないました。
被験者は、32歳男性です。彼は、自分に向けられた叱声はもちろん、他人が受けている叱声にも過剰に反応し、異常なほどの恐怖感と激しい動悸に襲われるという症状を持っていました。特に大声で叱声を浴びると、耐えられないほどの恐怖と動悸に襲われると訴えました。そこで、インナーチャイルドセラピイを依頼されたというわけです。
①魂遡行催眠まで誘導し、魂の自覚状態に至っていることを確認する。
②魂の表層の「現世のもの」を呼び出し、顕現化させる。
③「現世のもの」の内部に存在する、症状を作り出すことによって、苦しみ訴えている「子どもの私」の人格を呼び出す。
④「子どもの私」の人格が、どのような原因から傷つき、苦しんでいるのかを対話によって聞き出す。
⑤苦しみに共感的理解をしてやりながら、さらに癒しが必要だと訴えればヒーリングをおこなう。
その結果、呼び出しに応じて現れた被験者の「子どもの私」の人格は2歳でした。子どもどうしで遊んでいるときに、遊び相手の子どもと大声でわめきながらオモチャの奪い合いになり、そのオモチャで気を失うほど激しく殴られたということでした。その傷つきの恐怖体験を持つ「子どもの私」の人格が、「大人の私」に、類似のことが起こる度に恐怖感と動悸を起こさせて、自分の傷つきを訴えているということでした。
こうした対話をした後、この「子どもの私」にヒーリングをしてセッションを終結しました。
もう1例は、30代女性の事例です。
このクライアントの主訴は、家庭外で昼食をとるときに決まって起こる腹痛の改善でした。
良好な深い催眠(記憶催眠)状態を確認し、主訴に関わるトラウマが生じた時点まで年齢退行をしてみました。
その結果、小学校3年生のときに生じたトラウマであることを確認しました。
このクライアントはSAM前世療法の体験者です。そのため、どうやら記憶催眠から魂遡行状態に移行し、トラウマを訴える小学校3年生の少女の人格が顕現化しました。
担任の女性教師に給食を全部食べることを強要され、もう一人やはり食べられない同級生の女の子と二人、毎日掃除の時間に、脇で学級の仲間が掃除をしている埃の漂う教室で給食を食べさせられていた辛さを泣きながら訴えました。自分は胃腸が弱く食が細いので、とても給食を残らず食べられないのだと訴えるのです。
そうした苦痛が1年間続いたのです。
さらに、担任から「いくら勉強ができても、給食が食べられない子は悪い子です」と決めつけられ、自分は悪い子なんだと、「小学校3年生の私」の人格は激しく泣きました。その口調は、10歳の少女としか思われないものでした。
この少女は、給食が全部食べられないことで、「悪い子」だと全人格を否定されていると思い込んでいました。
こうして、少女の人格は、自分の辛さと苦しみを、昼食時の腹痛という症状によって「大人の私」に、訴えているというのです。
筆者は、10歳の少女人格に正対し、説得を続け、納得を確認したうえで、これからは「大人の私」に腹痛という形で訴えをしないことを約束してもらいました。
以下はセッション後のクライアントの感想の一部です。
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前回のイメージ療法と昨日先生にして頂いたセッションを併せて考えてみますと、おそらく前回のイメージ療法は、単に浮かんで来た映像の表面のみをきれいに修飾したに過ぎなかったため、その内に潜んでいたインナーチャイルドの人格は、訴えを聞いてもらえず、不満や悲しみが未解消のまま存在し、「悪さ」をしていたのではないかと思います。
そして、昨日のセッションでやっと訴えを聞いてもらえるチャンスが来たと、人格が表面に出て来たのではないかと考えました。
大人の自分から見れば既に解決済みの件だと思っていたため、セッション中に当時の幼い人格の気持ち(悲しみ)がそのまま現れ、後から考えるとても不思議な体験でした。
そして、先生がインナーチャイルドの人格と直にお話して共感・説得して下さったため、大きな安堵感と開放感につながりました。
注 「前回のイメージ療法」を施術したのは筆者とは別の催眠療法士です。
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以上のSAM前世療法によるインナーチャイルドセラピイの改善効果の検証はこれからです。
改善効果が確認されれば、魂の二層構造仮説の信憑性を示すことになるでしょうし、新しい発想によるインナーチャイルドセラピイの開発につながると考えています。


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