2011年10月21日金曜日

「タエ」の語り内容の検証その1

ここからは、タエの語った内容について、歴史資料および、群馬県渋川市での現地調査との照合をした結果を述べていきます。
被験者里沙さんへの繰り返しの聞き取り調査の結果、現時点で判明している以下のことを最初に前提として知っておいてください。

1 情報収集に、彼女はインターネットが使えません。このことは彼女の息子にも確認しました。息子はインターネットを使えます。

2 彼女は群馬県および、浅間山周辺の旅行経験が一切ない。このことは、少なくとも結婚後についてはご主人に確認しました。また、群馬県に親戚がないこと、知人・友人もないことも確認しています。

3 天明3年7月7日の浅間山大噴火とそれにともなう吾妻川の大洪水についての知識は全くありませんでした。

4 過去に火山噴火についての人柱伝説、悲話について小説を読んだり、映画、テレビで見たり聞いたりしたことは全くありませんでした。私の知る限り、天明3年浅間山大噴火を題材にした小説、あるいは部分的に描写のある小説は、立松和平『浅間』、飯嶋和一『雷電本紀』の2冊です。

5 以上1~4のことについて、2009年8月、日本法医学鑑定センター荒砂正名氏によるポリグラフ検査によって、里沙さんがセッション中に語ったタエに関わる情報を入手した記憶は全くない、という鑑定結果が出ています。
ただし、ポリグラフ検査では、潜在記憶の有無については検査不能です。
それでは、次にタエの語り内容の検証結果を順次述べていきます。

① 語られた地名の真偽について         
タエの語った地名「上州上野国渋川村上郷」は実在し、現在は群馬県渋川市上郷として存在していました。。
なお、「上郷(かみのごう)」の地名は、江戸期以前から存在し、天明年間にも確かに存在していたことを、渋川市教育委員会小林良光氏によって確認していただきました。ただし、現在は「かみごう」になっています。
里沙さんは渋川市そのものがあることを知らないと言っています。
ちなみに、インターネットで渋川市の地図を検索し地名を探すと、「上郷」の地名が確認できました。

② 吾妻川の有無と利根川の関係について
タエが人柱となって溺死したという「吾妻川」は利根川の支流にあたり、現渋川市北部で利根川と合流していることが確認できました。里沙さんによれば、セッション後、「吾妻川」をアガツマガワと読むこともできなかったと証言しています。
にもかかわらず、タエは「アガツマガワ」と明瞭に答えています。

③ 語られたタエの年齢と年号の関係について
タエが13歳のときが「安永9年」、16歳のときが「天明3年」であると語ったことについて、年齢計算と年号計算が一致し、間違いはありませんでした。
つまり、年号「安永10年」は天明元年と重なっていることが確認できました。ちなみに、安永年間には大きな歴史的事件がなく、高校までの社会科教科書に「安永」が出てくることはありません。
ちなみに、私の同僚の社会科教師6人は「安永」という年号を知りませんでした。
したがって、里沙さんが教科書から「安永」を知り、潜在記憶として保持していた可能性は棄却できそうです。

④ 天明3年浅間山大噴火の経緯について
『渋川市史』巻二、「天明の浅間山大焼(おおやけ)」の項の記載によれば、天明3年5月9日(新暦)より浅間山が噴火し始め、断続的に爆発したのち、7月下旬以降は連日爆発を繰り返し、8月4日(新暦)深夜、大噴火とともに吾妻火砕流が発生した、とあります。
8月5日には再び大噴火によって鎌原火砕流が発生し、吾妻川を一時的に堰(せ)き止め、それが決壊して鉄砲水の大泥流となって下流の村々に大きな被害を起こしています。
これを当時「浅間焼泥押(あさまやけどろおし)」と呼んでいました。

タエのいう「7月、七夕様の日」は旧暦で語ったと考えられるので、これを新暦に直すと、8月4日に当たります。
したがって、「天明3年七月、七夕様の日、龍神様と雷神様が吾妻川を下るので」という語りは、天明3年8月4日深夜の大噴火による吾妻火砕流のことを指していると考えて間違いありません。

翌8月4日午前10時頃には再度の大噴火によって、鎌原火砕流が発生し吾妻川まで達しました。
吾妻川は一時的に堰き止められ、それが間もなく決壊し、泥流による鉄砲水を起こしています。
そのことを「水が止まって危ないので、上の村が水にやられるので・・・わたしがお供えになります」と語っていると推測していいと思われます。
そして、吾妻川の流れが一時的に止まったことから、間もなく予想される鉄砲水の被害から村を守るための人柱がタエであったと考えられます。

以上の天明3年に起きた浅間山大噴火と吾妻川大洪水についての歴史的事実について、里沙さんは全く知らない知識だと証言しています。
被験者本人が知らないことにもかかわらず、前世人格のタエは生々しく語っているのです。
こうした超常現象をどう説明できるのか、検証結果を一通り終えたところで考えてみたいと思います。
(つづく)

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